順当なアップセット|オーストラリアvsトルコ 26’W杯 グループD 第1節 レビュー

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今回は企画もの、JAPAN ANALYZING FESTIVAL ’26 の記事でございます。

これはW杯全72試合を72人の書き手による様々なアプローチでアーカイブしてやろうというWEB上のフェスティバルでございます。改めて文字にしてみるとすごい企画です。

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というわけでわたくしあるけんの担当記事、グループD第1節 オーストラリアvsトルコのレビューとなります。

先日書いた予習&プレビューはこちら

 

レビュー

メンバー

図1 両者のスタメン

オーストラリアは5-4-1の布陣。スタメンで意外だったのはGKビーチとCHオコン=エングストラーという若手の抜擢。ライアンやアーバインというW杯の舞台を知るベテランをチョイスする予想スタメンが多かっただけにかなりのサプライズ。イランクンダやボスらも含めて若手のエネルギーを信じるポポヴィッチ監督の姿勢が表れる選択となった。

一方のトルコはほぼいつメンな11人による4-2-3-1。直前の親善試合で出場がなかったカドゥオール、出場時間の短かったデミラルやチャルハノールも無事先発入り。一方怪我明けのユルドゥズはコンディションが上がりきらないのかベンチスタートに。

 

前半

キックオフとともにオーストラリアがトルコ陣地にボールを蹴り込み、やや慌ただしい立ち上がり。勢いをもって攻め込むオーストラリアに対し、トルコがカウンターを仕掛けるチャンスもあった。しかしギュレルを筆頭にトルコはまずボールをキープし、自分たちのペースで進めていくことをチョイス。

その結果、5-4-1のブロックを自陣前方~後方に構えてスペースを消すオーストラリアに対し、3-1-5-1気味の陣形を取るトルコがじっくり攻め手を探すという予想通りの構図に。序盤はFIFAランクでも格上のトルコがボールも主導権も握って優位にゲームを進めていった。

 

開始15分のトルコはギュレルのいる右サイドを中心に崩しの糸口を探る。右大外を駆け上がるチェリク、組み立てから崩しからフィニッシュまで全部やるマンのギュレル、トップ下から流れてきて崩しの+1要因となるコクチュの3枚がオーストラリアのLCH-LWB-LSHの3枚に対して数的同数となり、パスワークとポジションチェンジを繰り返した(図2)。これにより2度ほどDFラインの背後に侵入しかけたほか、ペナルティエリア右手前からギュレルが左足を振りぬく場面もあり、トルコとしてはまずまずの入りとなった。

図2 トルコの右サイドアタック

オーストラリアとしては序盤は引きすぎないように自陣前方でブロックをとどめたいような意思が見えた。しかしLSHのイランクンダがCHよりやや高めのポジションをとるシーンが多く、この隙間を見つけたギュレルが頻繁にこのゲートからボールを呼び込んで前進。そのため結局自陣深くに押し下げられる時間帯が続いた。ただメトカーフとイランクンダの両SHはプレスバックの意識が高く、トルコのアタッカー陣に対してスペースと時間の余裕を与えないという点はしっかり抑えていた。

逆にボールを自陣で奪ったオーストラリアは、カウンタープレスをかわしながら大きく空いたトルコのSB背後のスペースを狙う。最前線のトゥーレが早さと強さで時間を作り、快速のSHやWBが押し上げてサイドからのクロスを狙うというシンプルなもの、ピッチ中央を極力経由しないような意図が感じられた。これは3CBのモビリティに不安があることを考慮して、被カウンターリスクを軽減するための選択だったのかもしれない。

 

悪くない手応えのトルコは飲水タイム明けでややハイプレス意識を強める。25分に相手陣地でボールを奪い、左のユルマズが仕掛けからDFライン手前にクロスを差し込むとギュレルが右足ダイレクトボレー。これはGK正面だったが、早速のチャンス創出にトルコは一息。しかしこの一瞬が仇となる。

キャッチしたビーチは素早く味方にスローし、パスを受けたオコン=エングストラーは左を駆けるイランクンダ目掛け一気にフィード。背番号17はマークのユクセクを振り切り、1タッチ目でカバーに入るデミラルを交わして2タッチ目でニアに流し込んで先制。押されていたオーストラリアが理想的なワンパンチでリードを奪った。

ここにはトルコのトランジションの弱みがそのままに映し出されていた。トルコはカウンタープレスの際にRSBチェリクが前の相手WBを見て、相手SHはCHのユクセクが下がって捕まえる。この形に移行するまでには少し時間がかかるし、その時間を稼ぐためにもボールホルダーへのプレッシャーが必須となる。しかしこの場面では直前でシュートを打ったギュレルやコクチュが切り替えの瞬間にジョグで戻り、ホルダーへのプレスが遅れた。その結果、オコン=エングストラーに前向きフリーでボールを持たれ、オープンスペースをイランクンダに走られることに。トランジションを軽く見た代償としては大きすぎるものをトルコは背負うこととなった。

図3 オーストラリア先制のカウンター

こうなると一層ひきこもるオーストラリア。リード後は割り切って自陣後方でバスを停める。トルコとしてはユルマズの仕掛けを中心に左からの攻めも増やすが、スペースがない状況も相まって相手を動かせない単調なパス回しが増加。それでもギュレル、コクチュ、チャルハノールらのコンビネーションでサイドから中央から強引に隙間を見出してシュートを放つが、GKビーチの好守に阻まれる。

ならば攻めれるうちにさっさと攻めよう、ということで序盤では見せなかった自陣からのロングカウンターを仕掛けるも、オーストラリアの戻りが速くシュートは打ち切れず。オーストラリアの望んだ展開で前半を折り返した。

 

後半

後半開始からユルマズ→ユルドゥズに交代してギアアップを図るトルコ。ユルドゥズにボールを託すと、さっそくストライドのある加速での縦と細かいタッチでのカットインでWBのイタリアーノを振り回していく。LSBのカドゥオールも早めにインサイドに潜るようになり、トルコは左攻めにシフトしていく。

しかしクリティカルなチャンスは作り切れず。ユルドゥズ単身でも切れ込めてしまうため、それを頼みにして丁寧に崩す形が減少。彼の仕掛けに相手も味方も目を取られてしまった結果オフザボールの動きもなくなり、ユルドゥズが突破して顔を上げたのにゴール前の味方は棒立ち、というシーンが繰り返された。そもそも2m近い壁がそびえたつゴール前ではひと工夫が必要なのだが、アクションはなかなか見られず。結局ボックス外からのシュートに終始し、それもビーチが次々弾いていった。

ただ、トルコは前半の反省を生かしてカウンタープレスの意識を強化。ボールを失った直後の寄せの鋭さは上がり、オーストラリアの苦し紛れのクリアを拾っては一方的に攻め続ける展開となった。

 

攻撃の手を増やしたいトルコは60分以降。CHのユクセクが下りる代わりにCBのデミラルをゴール前に送り込み、クロスに対する空中戦要員を追加。また62分にコクチュと交代したアクギュンがRSHに入ると右から積極的に仕掛けた。イランクンダに代わって入ったヴォルピレイの守備対応が甘さもあり、何度か突破のチャンスが訪れる。

飲水タイムを挟んで再びテンションを上げたトルコは71分にアクギュンの仕掛けをきっかけとした攻撃。チャルハノールのタイミングをずらしたスルーパスからチェリクが完全に裏を取ったが、中の味方が準備不足でシュートには至らず。崩しのための手は尽くしているもののあと一歩が遠い。

 

こういう展開が長く続くほど守勢のチームにチャンスが訪れる、というのはサッカーでよくあるオカルト。74分にビーチが大きく蹴ったゴールキックは、途中出場のイェンギが競ったのちにオニールが拾ってチルカーティへ。ゲリアへのパスが相手に当たってメトカーフの元にこぼれると、背番号8は空いたバイタルエリアへ自分で持ち運んでペナ外から左足一閃。これがニアサイドに突き刺さってサッカルーズに追加点。

この場面でのトルコは逆にプレスに行き過ぎてしまっていた。2CHのチャルハノールとユクセクがルーズボール奪取にすべての意識を持っていかれ、2人して前に出た結果ぽっかりとシャドーのメトカーフが空き、不幸にもここにボールがにこぼれしまった。運の悪さもあるが、舵取りを行うべきCHがバランスを崩すほどに焦っていた時点で、このゲームは既に困難な状況ものになっていたといえるだろう。

 

76分にはチャルハノールのアーリー気味のクロスにデミラルがファーで折り返し、ボックス内でアクトゥルコールがボレーを放つもビーチの正面。85分にはチャルハノールがFKをファーポストに蹴り込むもビーチの横っ飛び。支配率63%、パス722本、シュート30本、xG1.66(FIFA公式スタッツ)を計上したトルコだったが、最後までビーチの牙城を崩せず。抑えるべきところをきっちり抑えて戦い切ったオーストラリアが会心の勝利を手に入れた。

 

試合結果

2026/06/14 UTC 04:00 K.O. @ BC Place Vancouver

オーストラリア 2-0 トルコ

27’   オーストラリア  17 イランクンダ
75’   オーストラリア  8 メトカーフ

試合スタッツ・データ
Australia 2 – 0 Türkiye POST MATCH SUMMARY REPORT (FIFA Training centre.com)
Australia vs Turkiye | FOTMOB

 

あとがき

プレビューでは以下の3つを注目ポイントして挙げた。

・トルコはオーストラリアのブロックをこじ開けられるのか
・トルコSBをめぐる攻防
・ オーストラリアは選手の最適解を見つけられるか

結果的にはすべてオーストラリアに軍配が上がった。
これはオーストラリアが割り切った戦い方を貫いたのに対し、トルコの想定が甘かったためと言えるだろう。両者の直前の親善試合の内容と照らし合わせることでその点が見えてくる。

オーストラリアは直前のスイス戦では自陣前方にブロックを維持し、できるだけ重心を下げないような戦いを見せた。しかし前半のうちにDFの背後を1本のパスで突かれてあっさりと失点を許す結果に。これにより重心を上げるメリットよりもデメリットの方を再認識し、よりラインを下げてセーフティな戦いを選択したと考えられる。またこの試合ではメトカーフ&イランクンダのSHコンビが守備ではプレスバックを、攻撃では前方への飛び出しを精力的に行っていた。この運動量と献身性を買ってこの大事な初戦に起用したのだろう。

一方のトルコは親善試合ベネズエラ戦で勝利したものの、攻め上がるSBの背中をカウンターで突かれてピンチを招いていた。可変システムが抱える構造的危うさではあるが、自分たちが気を緩めて隙を見せてしまえば尚更クリティカルに響くのは当然であるし、その欠点を見逃してくれるほどW杯の舞台は甘くない。また直前の親善試合では、ミドルブロックを敷いて前からプレスをかける/ビルドアップで後ろから繋ぐ、というタイプの2チームと戦っていた。これらの相手に対しては自陣から繋いで相手を外していけばゴール前にスペースがあるし、ハイプレスでミスを誘ってショートカウンターも仕掛けられた。連勝して良いムードで本大会を迎えたものの、本来向き合うべきオーストラリアの戦いを想定できていたか、疑問が残る戦いぶりだった。

ただ、これらの背景があるにせよ結果を出したオーストラリアの面々が見事だったことは間違いない。特にビーチ、オコン=エングストラー、イランクンダ、ボスら若手が各々の自分の強みを発揮して戦いきった点は、今大会はもちろんこの先のサッカルーズにとっても大きな財産となるだろう。いずれのポジションにも経験豊富なベテランが居る中で、彼ら若手に託して送り出したポポヴィッチ監督の胆力は凄いというほかない。監督の力量差も結果に表れていた、といえるのかもしれない。

 

ラスト30mで足りなかったアクション

相手陣でのワンサイドゲームに持ち込み、トランジションも鋭く摘み取って何度も攻撃のターンに持ち込みながら、最後の30mで相手を動かせずにカウンターの一発に沈む。この日解説を務めていた小泉佳穂(柏)はトルコ代表の姿に「心が痛む」とコメントしていたが、当の自分も2021シーズンの6月以降のアルベルト・アルビを思い出していていたし、心当たりのあるサポーターは世界中にいたことだろう。

ただ、この日のトルコが人事を尽くしていたか、というとNOではないかと思うのである。相手のブロックが崩れないから崩せない、でいいのだろうか。NBAでは得点効率の点から3Pシュート重視という戦術革命が起きたといわれているが、サッカーにおいてミドルシュート革命は当分起きないだろう。ならば、押し込んで攻めようとするチームは得点の確率を高めるやり方を突き詰める必要がある。

この日特に目立ったのは、ボックス内でDFと駆け引きしているアタッカーがいないこと。せっかくユルドゥズが仕掛けて数人引き付けても、チェリクがきれいに背後を取っても、そのタイミングでDFのマークを外すアクションができていなければクロスの成功率は上がってこない。セットプレーですら細かいズレをどう作るかのに苦心している現代フットボールにおいて、オープンプレーでそこに無頓着でいいはずがない。

サイドで味方が持ったならCBの背中側に回り、相手の死角を取る。ファーをフェイクにしてニアに飛び込んでDFの先手を取る。ニアとファーで味方とスイッチし、マーク受け渡しの一瞬のズレを作る。へそをボールではなくゴール方向に向けて半身でボールを呼び込み、いつボールが来てもゴールに蹴り込める体勢を作る。

細かいアクションなれど、そのわずかな差がゴールを生む。今の日本代表が得点を重ねているのは、こうしたアクションを繰り返せる上田や小川がいるからこそだろう。この試合でこのアクションが実践できていた選手というと、85分から出場した長身FWのギュルと終盤に攻め上がってきたCBデミラルくらい。これではどれだけ丁寧にサイドを崩してもフィニッシュには繋げられないだろう。モンテッラはFWの動きを教えられないんですか……???

ギュレル、ユルドゥズ、ウズンという最高のヤングアタッカーズを揃えたはいいものの、軸となるストライカーが現れるまでしばらくの間は ”期待値だけが高いチーム” 止まりになってしまいそうなトルコ代表でありました。

 

この日のジェイソンのコーナー

  • 74分にイタリアーノに代わって出場(イェンギと同時投入)、RWBに入る
  • 7400 オニール→チルカーティへパスをする間にするりと前目にポジションを取り、サイドでボールを呼び込む。チルカーティからジェイソンに向けて出されたパスが相手に当たり、メトカーフの元にこぼれたことで追加点のきっかけを作る
  • 7818 相手陣でルーズボールを拾ったが、攻め急がずに対面のSBの動きを確認し、その背後にボールを送り込んでメトカーフに繋げる
  • お得意の間合いを詰める対応で冷静にユルドゥズの縦を切り、メトカーフと協力して見せ場を減らすことに成功

逃げ切りの交代策として、着実に冷静なプレーぶりを見せてくれた我らがジェイソン。彼が入ってからはユルドゥズがやや仕掛けにくそうにしていた気がするので、ユルドゥズを止めたといっても過言ではないのではないでしょうか。さらなる活躍に期待!

 

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