積み上げの再確認 |J2第17節 vsジェフユナイテッド千葉 2020レビュー

2020シーズン

 

9月。新潟の対戦カードを見ると長崎、磐田、千葉、北九州、徳島、愛媛、甲府、琉球…強敵難敵との対戦ばかり。それも西日本チームが多いせいで移動が半端ではない。

特にこの連戦は水曜どうでしょうかと見紛うような移動距離。この日程で毎試合11km走るのだから恐ろしい…

5ビッグスワン→9フクアリ(千葉)→13ミクスタ(北九州)
19ビッグスワン→23ニンスタ(愛媛)→26ビッグスワン→30タピスタ(沖縄)→10/4ビッグスワン

そんな日程なので、次節の北九州や町田のようにメンバーを変えずに挑むチームもあれば、今節の千葉のようにターンオーバーをするチームもある。新潟はどちらかというと前者寄りになりつつあるが、その影響は日増しに濃くなっていくはず。最後に笑うのはどちらか、という視点で見るのも面白いかもしれない。

 

目次

1.マッチレビュー

メンバーはこちら。

千葉はほぼ完全ターンオーバー制。ということでこのセットは2試合ぶり。5戦勝ちなしだが、手拍子解禁となったホームで久々に勝利を掴みたいところ。

一方の新潟は7人変更。前節磐田戦でターンオーバー気味にしたが、この試合では戻してきた。久々の敗戦の後、悪い流れをしっかり切りたい。

 

①スタイルの体現

ここ数試合はハイプレスに苦しみ、思うように繋げないことの多かった新潟。しかし、この試合では千葉が初めから構えるようにブロックをセット。久々にDFラインが息つく暇を得られた。

 

新潟はビルドアップでCHが下がって3バック化し、SBが上がってSHが内側に絞る。千葉はこれに付き合わずにきれいな4-4-2の形を保つため、新潟の選手は千葉の陣形のちょうど間に立つ格好に。このズレを使いながら新潟は繋ぐ。

この日新潟がパスを繋げた大きな要因は千葉の寄せの甘さ。陣形をセットしてプレッシャーをかけに行くが、連動して新潟を一方のサイドに押し込めることはせず。かといってブロックの中、ライン間にいる選手への警戒が薄くなる場面も多く、新潟としては陣形のズレを使って苦もなく前進。アンカー経由で揺さぶり、きれいに崩すシーンを何度も作った。

最近はあまり見られなかったチームとしての滑らかな前進。千葉のプレスバックやスライドが最近の相手と比べて遅かったことを考慮する必要はあるが、まさに狙いとする形を体現し、ボールもゲームも支配。

 

守→攻の切り替えのスピードでも千葉を上回り、プレッシャーをかけて簡単に逆サイドに展開させず、サイドに押し込めてボールを奪い取る。この形から敵陣でボールを奪った新潟が仕掛け、渡邉新太のミドルで先制点ゲット。主導権を掌握した中で給水タイム直前に先制できたことは非常に大きかった。

 

②千葉の修正1:前プレの枚数合わせ

なかなかボールの奪いどころの定まらない千葉は給水タイムを挟んでやり方を修正。新潟のビルドアップ時に左CBの選手が持った瞬間、右SHの堀米が前に出てプレッシャーをかけに行く。こうして3トップのようになり数的同数で前からプレスをかけ、ビルドアップの余裕を奪いミスを誘おうとしたと考えられる。

 

しかし、この修正で新潟はピンチになるどころかチャンスに。まず新潟はパススピードを速めてプレスをいなし、また千葉の選手の動きの逆を取ってプレスの的を絞らせない。

そして狙いどころを右サイドに。千葉の右SBゲリアは相手選手への寄せが早い一方、自身の背後のスペースのケアを怠りがち。右SH堀米が荻原への外のパスコースを遮断しなかったこともあり、左大外でスペースを得た左SB荻原にボールが渡ると、ゲリアが食いつき前へ出る。この背後、脇へと新潟の選手がランニングし、スペースを活用して攻めていく。

こうして新潟は千葉の右サイドを何度も狙う。荻原とファビオがワンツーを繰り返して二人でサイドを切り裂きシュートに至るシーンもあり、かなり圧倒していた。こうして千葉は修正が裏目に出たまま前半を終えることに。

 

③千葉の修正2:ハイプレス&ワイドな攻め

盛り返したい千葉は後半開始から再びのテコ入れ。攻守に手を加えてきた。

 

千葉の攻撃はシンプルな2通り。

  1. ボールを奪った後、ボランチから早めに前線にボールを入れて素早く攻める
  2. サイドを広く使い、クレーベや山下らFWへのクロス

後半は前半よりもSBの位置を高く設定。新潟の守備陣形がコンパクトなこともあり、空いた大外のスペースへボランチ経由でワイドに展開。深くに侵入してのクロスやアーリークロスを狙った。こうして押し込む場面を後半開始直後から作った。

そして、攻撃で高い位置を取るようにしたことに合わせ、守備ではハイプレスを解禁。相手陣ペナルティエリア付近までFWがプレッシャーをかけるように全体を押し上げてプレスし、新潟のビルドアップを自由にさせないように変更してきた。

こうして、ワイドに使ってクロス爆撃→ボールを奪われたらハイブレスで素早く奪い返す→クロス爆撃→ハイプレスで素早く奪取… という「ずっと俺のターン」状態を作りたかったと考えられる。

 

しかし、またもや新潟は修正を上回る。守備では2トップが縦関係になることでボランチへ寄せやすくし、プレッシャーをかけて簡単には展開させない。コンパクトな陣形は継続したためサイドを広く使われた際にはクロス爆撃を受けたものの、簡単にシュートまではいかせない。

そして課題の対ハイプレス。これに対しては真っ向勝負で繋ぎにかかる。プレッシャーをかけられても冷静にコントロールし、前線の動きを見て判断、丁寧に地上戦で繋いでいった。

 

そしてこの繋ぎから53分の追加点。もちろん本間のフィニッシュも素晴らしいが、GK→CB→CH→SH→FWと流れるように繋いでゴール前まで持ち込んだ過程が天晴れ。まさに今期のスタイルを体現したシーンだった。

千葉としては反転攻勢に出ようとしたところで出鼻を挫かれるような形になり、その後もハイプレスがハマるシーンは少なく、地上戦で繋がせてしまった。前半よりは寄せの鋭さが増したように感じたものの、新潟のボールタッチはそれを寄せ付けず。奪いどころが定まらないまま苦しくなり、FWを投入して強引に得点をもぎ取る作戦に移行。

 

対する新潟も前線に鄭大世、ロメロを投入して千葉の守備陣の体力ゲージを更に削りにかかる。こうして80分にロメロが右サイド奥を突いたところから田上が抜け出しクロス、中で合わせた本間がドッピエッタを記録し勝負あり。終盤のパワープレーで1点を失ったものの、新潟としては久々の快勝となった。

 

 

2.試合結果

千葉 1-3 新潟

得点者 千葉 90+2′ クレーベ
得点者 新潟 23′ 渡邉 新太、53′, 80′ 本間 至恩

詳細なデータはJリーグ公式サイトFootball Labへ。

 

 

3.雑感

この試合の評価については相手の守備強度を差っ引いて考えなければならない。ここ最近の長崎、磐田といった上位チームと比べれば余裕を感じたのは間違いない。しかし、内容、結果共に良いゲームであったことも間違いない。

特に、相手がプレスのかけ方を変更してきた中でも繋ぐことにこだわった点、そしてそれを自分たちのチャンスに繋げた点は非常に良かった。相手の立てた壁をひょいひょいと飛び越えていく様は痛快にすら感じた。磐田戦後半の悪い流れをきっちり断つだけでなく、これまで積み上げてきたものを再確認し自分たちのスタイルへの自信を深める、そんな一戦にできたのではないだろうか。

 

  • 黒子のボランチコンビ

この日活躍した選手といえば全得点をたたき出した渡邉新太・本間至恩の「あらしお」コンビで異論はないだろう。今季の主人公ともいえるこのコンビの躍動ぶりは十二分に伝えられているはずなので、ここでは陰の立役者ともいえるボランチコンビをピックアップ。

今季の新潟ではボランチの役割が重要になっている。簡単に上げると次の4つ。

前と後ろとを繋ぎ、ボールを安定して保持できるようポジショニング&左右にパスで展開
後方からの繋ぎでミスからカウンターを食らってもすぐに対応できるようにバランスを取る
守備時にCB前のスペースをケアする
相手ボランチにもプレッシャーをかけ、全体をズルズルと下げない「前向きの守備」

この日のコンビは島田&福田島田はボールホルダーへの寄せの鋭さ、要所を抑えたポジショニングで中盤を締めた。ビルドアップ時にCB脇に下りてサポートしたかと思えば、2点目ではパスを出した後も前に走り続け、ペナルティエリア横で持った新太の前を駆け抜けるランニング。これでDFを引き付け、至恩はスペースを得られた。

相方の福田は島田より少し前にポジショニング。ビルドアップ時にはアンカーに入り、派手さはなくとも堅実にサイドに散らすことで千葉の守備ブロックを揺さぶった加入直後は前に急ぐようなパスも見られたが、慌てずリズムを作る意識も見え、新潟スタイルに馴染んできたように感じる。守っても運動量を活かして相手の攻撃の芽を摘み、1点目の起点となる相手陣でのボール奪取は彼だった。

 

こうしてボランチが攻守に効いていたことがこの試合を安定して戦える要因となっていた。中盤を制すれば制するほど試合を支配できる。試合を支配すれば前線の選手が輝ける。ボランチコンビが目立たずとも黒子として暗躍することが、チームの調子のバロメータとなるのかもしれない。目まぐるしくコンビが変わる状況ではあるが、彼らの黒子としての働きに今後も目が離せない。

 

 

結果から見ればこの試合でターンオーバーしたかったが、それを言っても後の祭りなので。次節は遂に首位に立った北九州。この日とは比べ物にならないほどにハイプレスを受けるはず。ハイプレスを受けた中でもどれだけ繋げるか。積み上げてきたものを披露し、さらに自信を深める一戦にしたい。

 

 

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