J2第4節 vs松本山雅 我慢を次への自信に 2020レビュー

2020シーズン

 

6得点8失点のロケットスタート(?)で再開した我らがアルビレックス新潟。この日のトピックといえば、ビッグスワンにサポーターが戻ってきたこと。手拍子拍手のみの応援だと会場全体がプラスの感情だけに包まれるようで良い雰囲気だと思いつつも、その場面で拍手しかできないのか…というもどかしさも。

ただ、ここ2試合で14ゴールを披露した我が軍がこの試合では1ゴールのみ。勝利はしたものの、折角サポが戻ってきたのにどこか物足りなさが拭えません。まああれですね、ゴールが多いと観客の皆さんが声を上げてしまうから抑え気味にしたんですよね。そうですよねー

入場制限がなくなった暁には両チーム合わせて1試合で14点ぐらい入れる試合を披露してほしいですね。13-1とか。

 

目次

1.マッチレビュー

メンバーはこちら。

新潟は前節から4人変更。サポの間で待望論が出ていたマンジーがついにJ初出場。連戦も意識してか、メンバーを変化させながら戦う。

一方の松本の変更は2人。乾と鈴木が入り、右サイドのユニットが変化する形に。前節から馴染み深い3バックに戻し、再開後1得点にとどまっている攻撃を活性化させたいところ。

 

①あえて噛み合わせる

試合序盤から松本が前線からのプレスを敢行し、ボールを握りたい新潟に圧力をかける。新潟はこれまで通り最終ラインを3枚にしてのビルドアップ。ただし、今節はこれまでのボランチが下りる形ではなく、右SB新井が外に開き左SB田上を内側に絞らせる形。

しかし、この変化は松本にとって好都合。3バックに対して1トップ2シャドーがぴたりと噛み合うことで前線の選手がプレスをかける相手が明確化。迷いなく圧力をかけていく。

とはいえ新潟もそれは想定済み。あえて3バックでビルドアップしたのは「松本に前からプレスをかけさせるため」である。

松本は5バック気味ながら前からのプレッシャーが強く、最終ラインも高めのコンパクトな守備陣形。マンチェスターシティのように技術、戦術理解の高いバケモノがそろっているチームならまだしも、コンパクトな相手にショートパス主体で繋ぎ倒す力は新潟にはまだ備わっていない。というわけで、コンパクトな陣形を広げる作業が必要となる。

 

DFラインでボールを持った時、DFとボランチが松本の前線3枚を囲むようにポジショニング。この5人が主体となってパスを繋ぐことで、マンツーマン気味に対応する松本の前線+ボランチの視線を前に引き付ける。

同時に新潟のFWは3バック脇やDF裏のスペースを狙う動きを見せ、長いパスを受けてきっちりボールをキープ。これによって松本DFの意識がサイドへ、後ろへと強まると前方と後方で意識のズレが起き、スペースが生まれるようになる。そのようにして前後が分断された時にDFライン手前のスペースへSHの渡邉新太や本間至恩が入ってくる形を狙ったのだ。

とはいえとはいえ、松本のボランチもかなりポジショニングに気を使っており、DFラインがズルズル下がらなかったこともあってそう簡単にDF手前のスペースが空くことはなかった。新潟の2トップはボールの収まりが良く、前線で時間を作って全体を押し上げることに貢献していたが、松本が自陣深くでは5バックをがっちりと敷くため、アタッキングサードではひと苦労。流れの中からの決定機はカウンターを中心に数えるほどであった。

また、新潟DF陣のビルドアップは盤石とはいえず、特に危うさを感じさせる左SB田上をやはり松本は狙い打ちしており、左サイドで詰まって奪われるシーンは何度か。松本が5バック気味で重心が低めだったためにカウンターはハマらなかったものの、ひやりとするシーンであった。

 

②シンプルに前へ、ワイドへ

新潟がロングボールも多用した影響もあってそれなりにボールを持つ時間もあった松本。一旦ボールを持って前を向いても無理せず後ろへ戻すことも多いホームチームに対し、前へ前へという意識が強いのがアウェーチーム。やり方もシンプル。

松本は3バックの中央、森下がボールを持つ場面多め。新潟のFWがボランチへのパスコースを消しているため、中は経由せずダイレクトに前線へ。ターゲットとなる阪野が競って2シャドーがこぼれを回収、中央が詰まれば大外に開いたWBに展開して相手を動かしていた。小難しいことはいいから前にボールを送り込んで、サイドも広く使って守備陣の間を広げて突こうぜ!という狙い。

前進を果たした後、ゴール前に侵入する上でキーマンとなったのは右WB鈴木雄斗。川崎やガンバにも所属した彼は、多少相手に寄せられてもボールを半個分ずらし、蹴り方を変えてパスコースを作ることができる器用な選手。またドリブルでの仕掛けもでき、前線でタメを作れるチームにとってありがたい選手。よって、彼に高い位置でボールが渡ると高確率でチャンスが生まれていた。

鈴木が持った際、もう一人の攻撃の旗手、左シャドーのセルジーニョは何度も右に流れてボールを受けに来ていた。彼がバイタルエリアに顔を出し、DFの背後に飛び出すことでシュートシーンがいくつも生まれた。

まさにこの形から決定機につながったのが14分のシーン。鈴木がフリーでボールを持ち、新潟DF陣はセルジーニョ完全に見失ってしまった。GK藤田の飛び出しに助けられた…

この場面に限らず、新潟の左サイドは鈴木に対応しきれていなかった。ボランチの秋山、SHの至恩で連携して中へのコースを遮断したかったが、相手の動きに惑わされて何度も隙ができてしまった。

このように、個の力を活かすことで松本はゴール前での形を多く作れていた。得点の予感は松本の方が感じられたかもしれない。

しかし、サッカーにはよくあるもので、チャンスを作り切れていなかった新潟がCKから先制することに。

 

③リスクを減らした細かな修正

松本にはめさせてかわすつもりが、そのままはめられてしまう場面もあった新潟。前半の終わりごろから少し変化を加える。

左CBと化していた田上をビルドアップ時にサイドに固定し、マウロ、マイケルの両CBの距離も広げた。完全に4バックでのビルドアップになり、そこにボランチの秋山、島田が時には下がってサポートする形に。

こうすると松本は誰が誰にプレスをかけるのか毎度毎度はっきりさせなければいけない。新潟に左右に揺さぶられることでプレスのタイミングが遅れてしまい、新潟DFに時間を与える結果に。

特に右SB新井は余裕をもってパスを受ける場面が増加。この試合では縦への突破のフェイクを入れて中へ侵入し前線へボールを届けるなど、受け手からのバリエーションも豊富に。彼を中心に右サイドでボールを捌くことで、左サイドの田上の負担も減少。

また、前線では渡邉新太が冴え渡る。DFとMFの間のスペースで幾度となくパスを受けて軽やかにターン、力強く前進する彼の存在によって、松本は後退を余儀なくされた。帰陣が早く人数をかけて守る松本を崩し切ることは困難だったが、彼の推進力は90分を通して脅威を与え続けていた。

 

新潟は守備面でも修正。前半にやられまくりだった鈴木への対応を強化。松本DFがボールを持った際、左SHの至恩は鈴木へのパスコースを遮断するようにポジショニング。パスが渡りそうなタイミングでは前半より一歩早く寄せ、自由を与えないようかなり意識していることが感じられた。左SBの田上も同様で、鈴木へと向けられたロングボールに素早い出足で反応し、パスカットを繰り返した。

松本としてはサイドでの起点を失ったが、相手はサイドへの意識が向かっている分中は手薄ということで、ボランチが攻撃に関わる場面が増加。ボランチの藤田と塚川の位置を入れ替え、右シャドー杉本と塚川でのポジションチェンジを繰り返すことで中央にダイナミズムが生まれる。塚川に代わってボランチに入った久保田も中央をかき乱し、決定機も演出。

 

しかし、自陣深くまで侵入されても最後は凌いだ新潟。効いていたのは初先発のボランチ島田。相方の秋山に比べ少し低い位置でCBの前のスペースを埋め、こぼれ球の回収、タックルでのボール奪取など要所を締めた。セルジーニョに自身のサイドでは仕事をさせず、阪野との空中戦でも引けを取らないほどで、78分の久保田のシートシーンもCBの空けたスペースをカバーし、シュートコースを限定してチームを助けたナイスプレーだった。

矢継ぎ早に前線の選手を投入して同点を狙うも、焦りもあってか徐々にゴールに近づけなくなっていった松本。それを尻目に甲府戦でできなかった「締め」の作業に入る新潟。どうにか時間を使って寄り切り、DF2人が足をつるほどの激戦をクリーンシートでもぎ取った。

 

 

2.試合結果

新潟 1-0 松本

得点者 新潟 33′ 田上 大地
得点者 松本

詳細なデータはJリーグ公式サイトFootball Labへ。

ハイライト動画もどうぞ。

 

 

3.まとめ

両者ともに構造ががっちりとしており、バランスを崩してでも攻める展開がなかったために堅い印象の試合となった。両者とも組織として欠陥が少ない、あるいはうまく隠しており、個人の頑張りも随所に見られた。筆者はクリーンシートの勝利で浮かれたツイートばかりしていたものの、CKからの得点がなければスコアレスドローでもおかしくなかったのではないだろうか。両者にとって楽な試合でなかったのは間違いない。

新潟は愚直に「蹴る」ことを選んだ。ただ、あくまで狙いを持ったロングボールであり、繋げるときは繋ぐというのがこのチームのベースであることに揺らぎはない。ベースをしっかり持ちながらも相手に応じて狙いを変化させていく今期のスタイルがくっきりと浮き出てきたように感じる。

 

  • 選手起用

まずは監督インタビューから。

--前節から4人を入れ替えた意図。

(略)チームの改善点を探し求めるための交代もあるが、この過密日程の中、良い形でローテーションをして、良い状態を維持する方法を探らなければならない。今季スタートから言っているとおり、力のきっ抗した選手をそろえている。素晴らしい選手たちと戦えて幸せであり、誰が試合に出てもふさわしい選手たちです。

― アルベルト監督 ―

今季は毎節ベストメンバーで戦えないことはほぼ確。ということで今後もちょくちょくメンバーが変わっていくだろう。初先発のマンジー、島田も随所で良さが出ていただけに監督としては嬉しい悩みとなるはず。

一つ気になるのが前線4枚の組み合わせ。前線ではファビオ、新太が別格の存在感を見せ続けているが、あと2人がハマりきらない印象。この試合では至恩が先発だったが、外に張ってボールを受ければいつもの輝きを見せるものの、中央でのプレーやマンジーをサポートする動きはもう少し欲しかった。この試合は流れの中から決定機を作り切れなかったことを考えれば、前線ユニットの連動が今後の得点力のさらなる向上のカギを握るのではないだろうか。

 

  • 守備の連動

2戦8失点を経てようやくのクリーンシート。守備陣の踏ん張りに助けられたが、先にも述べた通り試合の中で崩しの形を作られてしまった。修正によってうまくその形を封じたものの、金沢戦に続いてバイタルエリアが気になる。守備ブロックをセットした際にボランチとSHが連動しきれておらず、穴が生じる場面が見られる。ボランチがSBと連携しながらSHに指示を出して動かし、中を締めることができるとよいのではないかと感じる。ビルドアップ時の連動は良くなっているが、守備面でも連動して隙のない組織を構築していきたい。

 

  • 田上&藤田

最後に頑張ったで賞。ここ2戦で失点に絡み、ビルドアップにおっかなびっくり感のあった田上だがしっかり完封に貢献。対人守備、空中戦など強みを生かし、ロングスローに雰囲気を感じさせるFK、果てはCKからFWばりのボレーと多才な面を見せた。いいところが見せられていなかっただけに、この1戦はかなり自信になったのではないか。ただ、ここで調子に乗られすぎると嫌な予感がしてしまうので、ほどほどにして気を引き締めて頑張ってもらいたい。

 

もう一人の頑張った人、藤田和輝。散々だった前節から切り替え、見事なクリーンシート。両足でのフィードの安定感に加え、光ったのは飛び出しの判断。前節のプレーの上に、最初の飛び出しでボールをペナルティエリア外にこぼすなど委縮してもおかしくない状況だった。

しかし、14分のセルジーニョのシュートシーン。臆せず飛び出し、コースを消してシュートを ’外させた’ 。その後も何度もゴールマウスから飛び出してシュートを打たせず。あの飛び出しっぷりには感服させられた。GKというポジション柄、今後も地獄のような状況を経験することはあるはず。でもそれを自ら打ち破れる、そんな強さを持った選手なら、今後何度でもチームを救ってくれるだろう。そう確信した。

 

彼らを信じて起用した監督。それに応えた選手たち。月並みな言葉だが、プロの凄みを感じた試合だった。

 

 

再開後やっとの勝利とか感動ストーリーとか諸々ないまぜになったが、内容としてはまだ向上が必要。我慢も強いられる戦いの中でもぎ取った勝ち点3を自信にしつつ、更なるレベルアップに期待したい。

 

 

マッチレビュー紹介

今季も勝手にマッチレビュー紹介のコーナー。いぬねこ山雅さんによる松本視点のお話です。

【2020松本山雅】vs新潟(7/11)A レビュー 

 

 

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