2020シーズンの歩みを振り返る | アルビレックス新潟 2020シーズンレビュー Vol.2

2020シーズン

 

シーズンレビュー第2弾、今回のテーマは「2020シーズンの歩み」。シーズンレビューVol.1 「アルベルト・アルビの目指したスタイル」でおさらいしたようなサッカーを目指していきながらどのように過密日程のシーズンを戦ったのかか。そのストーリーを振り返る。

シーズンレビュー第1弾はこちらから↓

アルベルト・アルビの目指したスタイル | アルビレックス新潟 2020シーズンレビューVol.1

 

前半戦:スタイル構築は手探りの連続
1-9節   不安定な船出
10-15節 スタイル浸透を加速させた役者たち
16-21節 高まる完成度と見え始めた限界

後半戦:追撃と進化の二兎を追え!
22-32節 リスクを抱えた変更で得た手応え
33-42節 大量離脱で崩れた青写真

 

 

目次

1. 前半戦:スタイル構築は手探りの連続

2019シーズン最終節のスタメンの内移籍したのは3人。対して2020シーズン開幕戦のスタメンの内新加入は5人。これだけでもチームがガラリと変わったことがわかる。

そんな中でのウイルス禍によるリーグ中断。実戦的なトレーニングやトレーニングマッチを十分に行えず、再開後は試合の連続でトレーニングを入れる隙間がないため、連戦の中で完成度を高めていくことが求められた。

というわけで、前半戦のテーマはスタイルの浸透。できる限り結果をこぼさないようにしつつ、チームとしてのベースの構築と成長を目指した。人数的、質的に十分ではないポジションへのピンポイント補強も前半戦の内に行ったことから、後半戦のスパートへ向けた試行錯誤の時期でもあった。

 

1-9節 不安定な船出

3勝5分1敗 勝点14 得点16 失点13

  • 粗さの目立つ試合運び
  • ペナルティエリア付近への積極的な侵入
  • 5バック、ロングボールも織り交ぜる慎重な姿勢

序盤戦、特に中断明け直後はアグレッシブな姿勢を体現する一方でゲームコントロール力不足。中断明け4試合で10得点11失点とかなり不安定な戦いが続いた。

 

得点が取れていた主な要因はペナルティエリア付近に選手を送り込めていたこと。ボール保持がまだ安定せず、「ファイナルサードまでどうにか持ち込んで質で殴る」攻撃になりがちだったが、守備組織の未熟な相手に対して人数をかけて押し込むことでセットプレーやミドルシュートから脈絡なく点を奪ってしまえていた。

この時期の得点力を語る上でファビオの存在は無視できない。キープ力、スピードを兼ね備えた長身FWが相手DFの脅威となってDFラインを下げさせた結果、相手陣深くへの侵入が容易になり、ミドルシュートを打つスペースも生まれていた。この期間で自身も4ゴール2アシストと貢献度は絶大だった。

 

一方で失点が相次いだ原因はコンパクトな陣形を維持できなかったこと。例えばシーズン最初の失点である2節甲府戦の1失点目。甲府GKのスローに対して前線の切り替えが遅く、簡単にゴール前まで運ばせてしまった。ボールを失った直後から前からプレスをかけることが理想だが、このように前線の切り替えが遅い、前線のプレスに連動してDFラインを上げられない等90分の中で隙が多く見られたのがこの時期。

また失点で多かったのはミドルシュート。シューターをフリーにしてしまうシーンが何度も見られた。これはそれ以前の問題で、相手のサイド攻撃に対しチーム全体がボールサイドにスライドするも、1stDFの寄せが甘く簡単に中央に逃がしてしまう、その結果簡単に左右に揺さぶられて相手を捕まえきれないという状態だった。この悪癖は7節水戸戦以降に改善され、コンパクトな陣形を保てるようになっていった。

 

そして、この時期に見られたのが試行錯誤の姿勢。コンパクトな陣形を保ちながらの守備の練度が低いことを踏まえてか、相手に応じて5バックも採用していた(甲府戦、町田戦)。しかし、5バック時には後ろ重心になりすぎて押し込まれやすいことに加え、攻撃時に前方の受け手が少なく敵陣でボール保持できないなどの問題が発生し、いずれの試合も前半限りで4バックに戻すことになってしまった。

また、ビルドアップ中にショートパスをカットされる→失点を序盤戦から経験したこともあり、繋げなさそうならロングボール!の割り切りも見られた。最前線のファビオはアバウトなボールでも足元や胸コントロールしてくれたため、彼に頼りきりであった。このようにスタイル浸透までは不必要にリスクを取らないような選択をしていた。

 

試行錯誤が感じられた序盤戦から徐々に落ち着いてボールを保持しながらゲームを運べるようになったアルベルト・アルビ。ただ、9節栃木戦では強烈なプレスの前に大苦戦。まだまだ道半ばであることを突き付けられた。そして5連戦の始まりとともにチームとしての成長を刻んでいく。

 

 

10-14節 スタイル浸透を加速させた役者たち 

2勝2分1敗 勝点8 得点5 失点4

  • センターラインの変更と共にショートパス多用のスタイルへ
  • ゲームコントロールの向上と得失点減

8節のファビオ負傷離脱によってお願いファビオ!のロングボールが使えなくなり、戦いを変化させる必要が生じたアルベルト・アルビ。変化を決定づけたのはGK小島の復帰だった。藤田以上にショートパスを冷静に繋げる小島が最後尾に控えることで、ロングボールに頼らない、ショートパス主体のビルドアップが可能になった。

更にこの変化に寄与したのがC大阪からレンタル加入した中島。彼がCHに定着し、キープ力とクイックなターンを駆使してパスワークのハブとなったことで、地上戦でも安定してボールを前線に供給し、ピッチを広く使ってボールを保持するスタイルの浸透に大きく貢献した。

 

ポゼッションの向上でボールを失いにくくなったこともあり、ゲームコントロール面も向上。ミドルサードでじっくりとパスを繋ぎつつ、チャンスをうかがうことができるようになった。こうして主導権を握り陣形を整えながら戦えるようになったことでバタつきも減少、失点を減らすことができた

一方で得点も減少傾向に。これは攻撃の奥行きが足りない場面が目に付くようになったことが影響している。ショートパス増につられてFWも足元でボールを受けたがるようになったことで、ファビオのように相手DFラインを下げる役割をする選手が居なくなり、その結果ゴールから離れたエリアでの相手を押し込みにくくなってしまう。ショートパス主体のボールを大事にするスタイル故のジレンマに陥っていた。

 

ただ、1試合ごとに成長を感じさせながら結果もまずまずついてきていたため、チーム状態としては上向きだった。14節終了後には監督もこのコメント。

結果、チームの成長に喜びを感じています。試合を重ねるごとにわれわれが期待するプレーをできる時間が長くなっている。チームの安定感も日に日に増している。チームは順調に成長している。1巡目が終わる頃には、チームの完成度は高いレベルに達しているでしょう。

― アルベルト監督 14節琉球戦後インタビュー

チーム力UPへ更なる補強も敢行。上昇気流に乗っていくかと思われたチームだったが、一転ここからJ2の厳しさを突き付けられることに

 

 

15-21節 高まる完成度と見え始めた限界 

2勝2分3敗 勝点8 得点8 失点9

  • メンバー固定化で完成度向上
  • 進む対策とファイナルサードでの手詰まり感
  • 上位対戦で見せつけられた差

この頃にはファビオ復帰、福田&鄭大世加入によってさらにムキムキに。役者が揃ったことでメンバーも固定化し、スタイルの完成度が上昇。ビルドアップにはさらに磨きがかかり、自分たちのミスからボールを失ってショートカウンターを食らう回数は減少。どの相手に対してもGK~ミドルサードまで持ち込むことができるようになった。

15節の勝利で4位に浮上して8月を締めくくり、9月の長崎(15節時点1位)、磐田(同5位)、北九州(同2位)、徳島(同3位)の上位対戦シリーズへ勢いそのままに臨んだ…

 

…が、結果は1分3敗。上位に対してとことんポイントを取れず。

上手くいかなかった理由として挙げられるのは、ビルドアップ対策が進んだこと。新潟はわざわざGKからショートパスで繋いでくる、ということは知れ渡っているため、プレッシングからのショートカウンター狙い!なチームが増加。特に上位チームほどチームとしてのプレッシングが整備されていた。これに対して新潟は圧力をかわしきれずにミスからボールロストしたり、プレッシャーを感じて下げざるを得なかったりと、前進に苦労する試合が増えた。

 

上位相手に結果が出なかったことについてはゴール前での質の高さが求められるスタイルだったことが大きく影響していたと考えられる。順を追って説明していく。

ボールを握ってパスを繋いで時間をかけて前進。全体をミドルサードまで押し上げてからゴールへと向かう。無闇にカウンターを狙って前後分断しないように。このスタイルの完成度が高まれば、基本的にどんな相手に対してもボールもゲームも支配することができる。

しかし、ゆっくりと前進するということは守備陣形を整える時間を相手に与えるということ。カウンターのようにゴール前が乱れた状態ならともかく、相手が整った状態からゴールを陥れるのは容易ではない。よってゴール前、そしてそこに至るまでの過程にチームとして、個人としての質の高さが求められるということになる。

これに加え、アルベルト・アルビはニアゾーンへの侵入が極端に少ないために攻撃陣が中央に密集。それに合わせて相手守備陣も中央を固めるため、前線4人の使えるスペースは限られてしまった。パターン的な崩しも採用していないため、崩しの局面では選手の発想や個人の質に依存。中を固められると突破しきれず、大外からアーリークロス放り込み!が増えて徐々に単調になりがちだった。

 

というわけで、得点できるか否かは「新潟の選手の質」と「相手選手の質」の差分次第になっていた。8月までの中位~下位対戦では質で上回れていたために結果を出せていた一方、質で互角かそれ以上の上位相手にはポイントを稼げず。逆に相手に決定機をしっかりとモノにされ、質の高さを見せつけられる展開に。スタイルの完成度が高まり、ゲームコントロール力が上がったことで結果の上振れも下振れも少なくなったことが、皮肉にも順位表通りの結果を覆しきれない状況を招いてしまっていた。

 

ある意味、この時点での限界でもあった。ビルドアップの向上など組織として向上させることは優れた監督なら短期間でできるが、個人の質を急激に上げることはできない。

シーズンは残り半分。昇格を本気で狙うためには上位対戦で勝ち点を積まなければならない。しかし補強は十分に行った上、選手個人の伸びしろに期待するのは時間的に間に合わない…恐らくこのような思考があったはず。

 

そしてチームは戦術変更へと舵を切る。とはいってもベースはそのまま、よりアグレッシブに…

 

 

2. 後半戦:追撃と進化の二兎を追え!

22節甲府戦。リーグ折り返しの後半戦初戦でアルベルト監督はいつもの4-4-2から突如4-2-3-1へ変更。更に攻撃時にSBとSHの役割を入れ替え。SHを大外へ張らせ、SBがその内側をインナーラップする戦いを披露した。初めこそ5バックの相手(甲府、京都)への対抗策として採用していたが、27節水戸戦以降は例の一件で急にFWが減ったこともあり、4-2-3-1が基本フォーメーションになっていった。

この変更でポイントとなったのはプレッシング幅の取り方

 

22-32節 リスクを抱えた変更で得た手応え 

6勝4分1敗 勝点22 得点18 失点9

  • プレッシングの強化
  • ポジショニング変化でより押し込む形に
  • 得点力、勝点ペースの上昇

この戦術変更の狙い、それは相手陣でのプレー時間をより長くすること。アルベルト監督は就任当初から攻守にわたって相手陣でプレーすることを求めてきた。そうすることで相手の得点機会を減らし、自分たちの得点機会を増やすことに繋がるからだ。個人の質で互角かそれ以上の相手であっても、自陣に入れさせなければ勝率は上がる、というわけだ。

 

これを実現するためのポイントが2つ。

1つはプレッシングの強化。前半戦では自分たちのボール保持に重きを置いているせいか、無理にプレスを掛けずブロックを敷く場面が多くあった。しかし、後半戦からは敵陣深くでもプレスをかけるように。

この時の特徴が、外側のコースを切りながらボールホルダーに寄せること。SHが外側のコースを遮断しながら中央へ誘導するようにプレッシャーをかける。これをプレスのスイッチとして、連動して後ろの選手がスライド、マンツーマン気味にパスコースを封じていく。

外に逃げられたらSBがレシーバーに寄せる、誘導のまま中央にボールが出ればCHコンビがインターセプトやタックルで奪ってマイボールに。DFラインも臆せず高く設定しコンパクトな陣形をキープ。できるだけ前で奪いきるという強い気持ちを感じさせた。

 

2つ目のポイントは攻撃時の幅の取り方。前半戦ではSHが内側に絞り、SBが大外で幅を取る形が基本だったが、後半戦からはSHが大外で幅を取り、SBが内側へ絞ってインナーラップする場面が増加。こうすると相手陣の深い位置で幅を取りやすくなり、より相手を押し込んで攻めることが可能になった。

加えて前線4枚が中央に集まりタスクが重なりがちだった以前に比べ、SH、OH、FWそれぞれの役割を明確化。こうして鄭大世のスコアラーとしての能力に最大限期待しつつ、ゴール前に足りない迫力はSBをゴール前まで上げさせて補った。こうしてサイドのより深い位置を使いながらゴール前に人数をかける形が確立したことで、クロスからの得点を増加させることができた。

 

この変更は意外にもスムーズに進んだが、その理由はプレースタイルのベースは変わらなかったから。「ボールや相手の位置を見ながらボールを支配し続けられるようポジショニングを怠らない」「ボールを奪われたら即時奪回」はあくまで不変。それを相手陣で長い時間繰り広げるべく、より前重心になるように微調整したのだった。前線からの積極的なプレスやインナーラップは以前から時折見られていたことから、選手もそれほど違和感なく移行できたと考えられる。

この変更が功を奏し、この期間では試合平均勝点が2.0に上昇。狙い通りに成果を出すことができた。

 

しかし、この変更はリスクも含んでいた。前線からのプレッシングについては、相手のパス回しでプレスがかわされて一気にDFライン背後を突かれるリスクと常に隣り合わせだった。また、プレスのスイッチ役のSH、中央を広く管理するCHなど個人の能力に頼るポジションも多く、選手の離脱やポジション変更があるとプレッシングのハマり具合もまちまちになってしまった。

また、攻撃時にSHがワイドなポジションを取ることでピッチ中央が空きがちになり、被カウンター局面で中央を使われて容易に前進されるリスクもあった。SBがインナーラップして空けたポジションも相手の標的となるため、CBやCHは以前より広いスペースを管理しながらカウンターを警戒するという難題を受け持つことになってしまった。

 

こうして、変更後の戦術はかなり属人的で、危ういバランスの下に成り立っていた。怪我人が増え選手層が薄くなる中で上位追撃のために無理をせざるを得ず、センターラインはほぼ代えが効かなくなっていた。痛かったのは、連勝が伸ばせなかったこと。得点力が上がったとはいえ、あと一歩勝ちきれない試合があるのは変わらなかった。上位陣が着実に勝利を積む中、なんとか勝点差を離されないように踏ん張っていたが、無理をしたツケが後々回ってくることとなる…

 

 

33-42節 大量離脱で崩れた青写真

1勝2分7敗 勝点5 得点8 失点20

  • キーとなる選手の離脱でバランス悪化
  • 試合のコントロールを失いがちに
  • パターン失点急増

後半戦半ばまで良い成績をキープできていたアルベルト・アルビだったが、ここにきて立て続けに中核を担う選手が離脱。GK小島の穴は藤田が埋めたものの、CHは福田&ゴンサロが抜けて人数不足、CBは非常時に代役を任されていた新井が抜けたためマウロ、マイケルコンビが出ずっぱりに。こうしてもともと負荷の高かったCB、CHがさらにきつくなってしまった。

 

特に痛かったのは福田の離脱。広範なスペースをカバーしタフなディフェンスでピッチ中央を締めていた彼が抜けると、プレスで中央に追い込み「ここで奪いきりたい!」という場面で奪えなかったり、捕まえきれずに前進を許したりと苦労した。最後の数試合ではチームとして連動してプレスを掛けられず、個人個人の単発なプレスが見られるようにさえなってしまった。

福田不在の影響は攻撃面でも。彼の代わりにCHに入った高木はボールを受けるために下がりがちで、前線との距離が離れてしまったためにボールの供給が滞ることが多々あった。また中島がCHに入った際には、アタッカー気質が強いせいか前へ前への意識が強くなってしまい、CBがボールを持った際にサポートが十分でなく、相手のプレスを食らいやすくなってしまうシーンが見られた。

こうして中盤のバランスが崩れてしまったため、それまでのようにゲームをコントロールできず、ボールは持てど…な試合が増えてしまった。

 

これに加えて相手の対策が進み、弱点が明確化。SBの背後のスペースを突かれる→ブロックを下げる→マイナスに繋がれクロッサーがフリーに→アーリークロスで手薄なファーを突かれる、というパターンの失点を繰り返してしまった。終盤7戦勝ちなしの時期には全試合でクロスから失点。弱みが明確になりながらも修正できなかった。

 

また、栃木戦、群馬戦とホームラスト2試合連続で後半開始5分以内に逆転を許してしまうなど、相手の勢いをもろに食らうように。かといってその流れを押し戻すこともなかなかできず。最後の数試合では開始直後からポジショニングをさぼるような、頭を働かせられていないように見受けられるシーンもあり、シーズン序盤の「拮抗した展開の中辛抱しながらセットプレーや個人の一発で結果をもぎ取る」頃のような緊張感、力強さは感じられなくなってしまった。

この終盤の 5 試合ほどは、自分の記憶から削除したい気持ちでいっぱいです。

―アルベルト監督 2020シーズン総括会見

アルビに関わる人の総意に違いない。

 

 

3. シーズン通しての成果と課題

そんなわけでかなり後味は悪くなったが、上手くいかない時期を経験して2シーズン目を迎えられると思えば救いがある、と思う。思いたい。

上で示した区切りごとの得失点、勝点をまとめたものがこちら。良かった時期、悪かった時期が可視化されている。後半戦の後ろ半分は見たくない…

「全試合平均勝ち点2=年間勝ち点84=2020シーズン2位の最終勝点」であることを踏まえると、後半戦途中までのペースを年間で続けないと自動昇格できないということになる。あの時期は精一杯戦ってようやく平均勝ち点2だったわけで、それを続けなければいけないと考えると気が遠くなってしまいそう。

 

成果という意味では大きく2点。

  • ボールを保持するスタイルの浸透、それに伴うゲームコントロール力の向上
  • プレッシングスタイルへの変更で得た手応え

1つ目に関しては監督本人の言葉からも自信が窺える。

―今季を終えてみて、チームづくりの完成度は 100%で表すとどれくらいか。

今シーズン最後の 5 試合を除いた場合には、チームは 60%ほどの完成度にたどり着けていると思います。 ・・・50%を超えているのは、なぜならばチーム全体に、おおよそのプレースタイルが浸透したからです。こ のクラブにとって、新しいプレースタイルへの取り組みでした。そういう意味では、プレースタイルの変 更はとても難しい中、チームはいいかたちで新しいプレースタイルに適応してくれたと思います。「ボー ルを大切にする」というポイントを、選手たちも時間をかけて理解するようになりました。 ただ、より高いレベルでそのプレースタイルを表現することが、当然、より良い試合結果を生み出すため には重要なわけですが、それができていたかというと、決してそうではありませんでした。 今、チームは 60%ほどの完成度の状態です。そして来シーズン、このポイントが 90%、それ以上の高い完成度にいくためにも、より良い補強が重要になってきます。

―アルベルト監督 2020シーズン総括会見

アグレッシブすぎて自らゲームをコントロールできなかった序盤から、5連戦開始の頃には格段に落ち着いてプレーできるようになり、後半戦にはどの相手に対してもミドルサードまでは安定してボールを運べるまでに成長した。

これが可能になったのは1人1人がポジショニングに常に気を配りながらのプレーが浸透し、チームとして同じイメージを共有できるようになったから。プレスを受けても慌てないだけの技術、自信がついたことも大きい。これをさらに安定して出力できるようになれば、もっとボールもゲームも自分たちのものにできるはず。

 

2つ目の「プレッシングスタイルへの変更とその手応え」については後半戦の戦術変更の意図についての説明で書いた通り。より相手陣のプレーを増やすことこそがアルベルト監督の理想であり、その方向に舵を切った後半戦で一時は昇格圏ペースの平均勝ち点2を達成した。この成功体験は間違いなく2年目に活きてくる。

 

勿論課題もいくつか挙げられる。

  • 決定力不足
  • 逆転勝利なし、流れを変える力のなさ
  • 要所における属人性の高さ

 

1つ目の「決定力不足」については監督がシーズン中から強調していたこと。

…いい時期も含めて、今シーズン継続的にチームが課題として抱えていのは、フィニッシュの部分だと思います。決定的なチャンスにおける決定力は、シーズンを通じてとても低かったと思います。そ こはワンシーズンずっと引きずっていた課題だと思います。

 

―シーズンを通じて、決定力を克服できなかったとのことだが、来季以降はどういう部分を変えて、どう いう部分を調整して克服するか。

監督では解決しづらいポイントです。選手の補強が重要になってきます。フィニッシュのところで質の 高いプレーをしてくれる選手を補強しなければなりません。…昨シーズンは、リーグでも得点王になる選手(レオナルド/2019 シーズン 28 得点/現・J1 浦和)がい て、高い決定力をチームに提供してくれていました。今シーズンはそのような選手が不在の中、チーム全 体の決定力が欠けていたと思います。

―アルベルト監督 2020シーズン総括会見

引き分け数はリーグ2位タイの15、1点差勝利が14勝中10勝とシーズンを通して僅差になりがちだった。ドローになった5試合を勝利に持ち込む、1点差を2点差3点差にすることができればもう少し上を見ながら戦えたはず。内容は悪くないけど勝ちきれない、連勝が続かないのは決定力が原因だったと言っても過言ではない。

 

先述した通りアルベルト・アルビはボールを前進させるのに手間を惜しまないため、さあゴールへ!という段階で相手が陣形を整えてしまっている場合が多い。そうなると単純にシュートを打つまでの難易度は高まるし、シュートを枠に収めるのも難しくなる。そこをどう打ち破るか、を選手に任せがちな印象はあった。
(決定力が物足りないなら、決定力の欠ける選手でもゴールを決めやすいように崩しの型を仕込むとか手はあるのでは…?と考えてしまうのは素人考えなのかどうなのか…)

結局2020シーズンはフィニッシュまでの型のようなものは見られなかったが、ビルドアップなど他のことに注力したせいで時間を割けなかったのか、そもそも型を仕込む気がないのかはっきりとは分からない。課題解決のためにはある程度手を加える必要もある気がするが、「攻撃は自由、アイデアを尊重している」というのが基本スタンスなので、2021もそれほど変わらないと予想している。がんばれFW。

 

2つ目の「流れを変える力のなさ」ついて。2020シーズン中逆転勝利はゼロ、一時は逆転した試合が1つ(A甲府)だけ。2点差を追いついたのも2試合(A町田、H長崎)のみ。先制されると追いつくのが精一杯だった。

ロメロや大本ら途中投入のゲームチェンジャーとして出場する選手もいたが、彼らの離脱が相次いだことで試合の中でカラーを変えられなくなったことは少なからず響いていた。

また、ゲームをコントロールしようとするスタイルのためにそうなりやすい、という側面もある。ビハインド時でも雑に前線にボールを蹴ることは避け、後ろから繋いでスタイルを貫徹するため、カウンターを食らうリスクも構わずオープンに攻め立てることはほとんどなかった。かといってビハインドでも恐ろしいほど冷静に繋ぎ倒し、相手を絞め殺していくほどのレベルには至っていないため、逆転勝利向きのチームではなかったとも言える。

 

一方で視点を変えてみると、追いついた引き分け数9に対し、追いつかれた引き分けは3、逆転負けも2試合のみ。先制するとかなりの確率で勝ち点に結び付けられるチームだったことがわかる。

逆転できないことが嘆かれがちだったが、このスタイルの特性を踏まえると課題は「逆転できない」ことではなく、「序盤のチャンスを逃して相手に先制され、追いつくので精一杯」な試合が多すぎたことなのかもしれない。すなわち決定力が(以下略

先制した試合を確実にモノにし、+αで数試合逆転勝利に持ち込む。これこそがアルベルト・アルビ2年目に目指す道ではないかと考えている。

 

3つ目「要所における属人性の高さ」については…この記事は長くなりすぎたのでここでおしまい。ぶった切ってごめんなさい。これについては第3弾にてチーム編成にガッツリ触れていくのでそちらで手厚く触れていきます…

 

シーズンレビュー第3弾ではチーム編成の振り返り、データを基にした振り返りを中心にお届け。今しばらくお待ちを。

 

 

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