デュアルフェイス |J2第27節 vs水戸ホーリーホック 2020レビュー

2020シーズン

 

色々ありました。本当に色々あって、レビューを書くか考えました。福岡戦を見返すモチベはなくなってしまいました。

ただ、日曜日にはやっぱりDAZNで見ていました。そしていつも通りの選手たちの雄姿が、笑顔がありました。そこに嘘偽りはありませんでした。

 

「サポーターは移籍しない。」いつかどこかで見たこの言葉を、改めて噛み締めています。

 

0.前回対戦レビュー

J2第7節 vs水戸ホーリーホック やれてたかも委員会 2020レビュー

 

1.マッチレビュー

メンバーはこちら。

水戸はスタメン8人変更。チーム内得点ランクトップ2の山口、中山のコンビがスタートから揃うのは3試合ぶり。毎試合選手、ポジションを替えながら過密日程を戦っているが、勝負どころとして照準を合わせてきたか。

対する新潟は2人変更。右SH中島大本、FWファビオ鄭大世に。前半戦で攻撃の軸として戦ってきた2人が一気に抜けた最前線で35歳のストライカーにかかる期待は大きい。

 

①圧をかける水戸、穴を探る新潟

アウェイ2連戦を負けなしで終えた水戸は、ホームで久々の勝ち点3をゲットすべく開始早々からフルスロットル。ボールを保持したい新潟に対して前線からプレッシャーを強くかけ、ミスを誘ってボールを奪い素早く攻めることを狙った。

このハイプレスのスイッチ役を担ったのがSH。新潟SBへパスが出たと見るや素早く寄せ、簡単に前を向かせない。このプレスにチーム全体が呼応して圧力を強め、マンツーマン気味に寄せることで新潟の前進を阻もうとした。

 

新潟はこのプレスを受けてパスが雑になる場面もあったが、序盤から少しずつ突破口を見出していく。狙ったのはマンツーマンの隙間にできるスペース。水戸の選手は前への意識が強い分、背後は疎かになりがち。GK小島を中心に相手の背後を突くロングフィードを前線へ、逆サイドへと供給し、回避ルートを探った。

プレスを掻い潜り始めた新潟に対し、水戸は無理に追うことをやめ、徐々にプレスの開始位置を低くしてブロックを敷く形に移行。

これにより新潟は重心を高くし、押し込んで攻撃できるようになった。36分には下の図のようにDFラインから繋いでタテパスで前進。本間のクロスを島田がゴール前で合わせて惜しい場面を作った。

しかし、綺麗に繋いで崩したのはこのシーンぐらい。中央のスペースは簡単に使わせてもらえず、サイドを起点に崩しにかかったが、左SH本間の仕掛け絡み以外ではチャンスを作り切れなかった。

一方の水戸の攻撃はボールを奪った直後に速攻を最優先、できなければサイドを使っての攻撃へ。攻撃の中心を左サイドが担い、右SB前嶋やCH安東から左へ展開して左SH山口の仕掛け、左SB外山のクロスでゴールへと迫った。クロスに対しては常に3人、4人とゴール前に走り込んで厚みを持たせていたが、こちらもシュートの場面は多く作れず。

両者チャンスが少ない中、前半終了間際に先制したのは新潟。本間の仕掛けを起点に得たコーナーキックをマウロが叩き込む。「水戸を分析する中で、セットプレーでファーを狙うというのがありました」(マウロ)とのコメント通り、再三のファー狙いが実を結び、アウェイチームがリードして折り返し。

 

②前へ出る水戸、新潟

追いつきたい水戸は後半開始直後に攻勢を強める。その狙いについて試合後の秋葉監督のコメントから。

「全体をコンパクトにして、中盤から前は二度三度追って、良いプレスを掛けようと。ダブルチェイシングをかけようという話をした(中略)ボールを奪ってもしっかりボールゲームをしながら、ボールを動かして相手のウィークのところのスペースを突いていったら、選手たちは躍動し始めました。」

新潟がボールを持った際には試合開始直後以上に激しくプレッシング。相手陣でボールを奪われた直後にも素早くボールホルダーに寄せ、簡単には繋がせないという意志が感じられた。

ひとたびボールを持てば前半ほど急がず繋ぐ体制に。この時狙ったのは新潟のブロックの間のスペース。

SHの森は内気味に下がって新潟OH高木の脇のスペースを利用。そしてFWとして投入された奥田が新潟のDF-MF間に現れてボールを呼び込み起点を作っていた。ここにボールが収まるとSHCHSBが近い距離で絡みサイド深くへ侵攻。左サイドアタックを前半以上に仕掛けていた。

水戸の人数をかけた攻めを新潟は食い止めきれず、前半とは打って変わって押し込まれる展開が続いた。しかし最終ラインを中心に集中は切らさず、シュートは簡単に打たせない。

 

水戸の2度、3度追いプレスの前に雑なタテパスが増え、ボールを簡単に失うようになった新潟。流れをを変えるべく53分に大本&高木に代えて中島&堀米を投入。

しかし、この交代は攻撃よりもむしろ守備で効力を発揮。高木よりも守備で幅広く気を利かせられる堀米がOHに入ったことでピッチ中央のスペース管理を強化。更に選手交代とポジションチェンジで中島がFWに入り、水戸のビルドアップに対するプレッシャーを強める。

これにより水戸は繋ぎでのミスが増加。そして75分、前線のプレスからミスを誘い、ボールを拾った中島が切り返しからミドルを突き刺し追加点。アディショナルタイムには再び相手陣でのプレスからミスを誘い、ボールを奪ってPKを獲得。「攻撃的守備」で試合を決めた。

 

ゴールから遠ざかりつつあった水戸は得点源の中山、山口を代えて勝負に出たが、90分に1点を返すのが精一杯。新潟が強かに戦いきってサポーターと勝利の喜びを分かち合った。

 

 

2.試合結果

水戸1-3新潟

得点者水戸90′ 奥田 晃也
得点者新潟40′ マウロ、75′, 90+4′ 中島 元彦

詳細なデータはJリーグ公式サイトFootball Labへ。

 

 

3.雑感

得点の形、時間帯を振り返れば新潟が盤石に進めたゲームだった。ただ、内容を見れば水戸を圧倒したとは言えず。水戸が持てる力を尽くしたものの、新潟の守備陣を穿ちきれぬままリソース不足で終戦という展開で、試合後の秋葉監督の表情には清々しささえ感じられた。

新潟はこの試合で二つの顔を見せた。いつもの「ボールを保持して押し込むスタイル」、そして「相手に持たせて奪いに行くスタイル」。おそらく後半もボールを保持した戦いをしたかったと思われるが、水戸が繋ぐ意志を見せると選手交代も使って「持たせる」戦いへ方針変更。相手の得意でないことを強いて半ば自滅へと導いた。

このあたりの強かさにバルサの宿敵っぽさを感じるのが面白いところ。勝者のメンタリティーを着々と装備しているような気がする。

 

  • 守備的なボール保持、攻撃的なプレッシング

「終了間際の15分ほど、ボールを支配する良い形での守備ができた。」(アルベルト監督) 試合後コメントにあったこの言葉。一見すると矛盾した表現で、実況・解説の方も意図を図りかねているようであったが、ここにこそアルベルト監督の哲学が表れている。

 

今季、新潟は一貫してパスを繋ぎ、ボールを保持する戦いを磨いてきた。試合序盤の水戸のプレスに対しても自陣でボールを奪われることはほぼなかったのがその証。今ではJ2のどのチームを相手にしても一歩もボールを触らせずに相手陣へ侵入できると言っていい。

安定したボール保持。一般的な見方ではこれは「攻撃」だが、自分たちでボールを持ち続ける限り相手ボールにはならない。つまり、ボールを保持し続けることで相手の攻撃機会を削る=「守備」となるのだ。

実際、2点目を取った新潟はボールを相手に渡して引き籠るのではなく、DFライン中心に繋いで時間を浪費した。無理に前に攻め込まず、繋いでボール保持し続けることを狙いとした「守備的パスワーク」だった。これが水戸の反撃の勢いを削いだのは間違いない。

 

逆に、この試合の新潟は本来「守備」とされるプレッシングを「攻撃」にも転換していた。相手陣でプレスをかけてミスを誘い、ボールを奪えばゴールへ素早く迫ることができる。2点目、3点目の呼び水となったのはまさにこの形。相手がボールを持ちたがるならば敢えてボールを持たせ、自分たちにとって都合の良いところにボールを運んでもらってから奪えばいいのだ。

攻撃と守備は表裏一体。ボールを持つ、持たないに関わらず主導権を握る戦いができるようになってきた。これを上位対戦でも発揮し、勝者のメンタリティーをさらに染み込ませていきたい。

 

 

ピッチ外ではこれからも問題が尾を引くはず。ただ、試合が続く以上は一戦一戦戦うのみ。ピッチで、トレーニングで積み上げてきたものは揺るがないはず。ブレずにチーム一丸となって更なる高みを目指したい。

 

 

 

 

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