持てるものを詰め込んだプレビューにつき大ボリューム。決戦でありお祭りだからいいのだ!
目次
対戦成績
- 今季リーグ戦では1勝1敗(3節 1-0新潟勝利、29節 3-0名古屋勝利)
- 新潟は主要タイトル初の決勝、名古屋は4度目の決勝
→ルヴァンカップ:21年(優勝)天皇杯:95年(優勝)、99年(優勝)、09年(準優勝)
データいろいろ
新潟と名古屋にまつわる様々なデータを集めてみた。データはFootball LabとSoccer D.B.からお借りした。新潟に分が悪いものが多いのは…気のせいでしょう。
- 新潟は国立開催の公式戦では新旧合わせて1分5敗の未勝利。
- 名古屋は国立で16勝5分け9敗、新国立では1勝2敗(唯一の勝利が23年の新潟戦)
- 今季の新潟は観客2万人未満の試合で12勝8分7敗、2万人以上の試合では4勝4分10敗
- 雨の試合で新潟は2分4敗、名古屋は3勝2敗(リーグ戦)
- 新潟にとって公式戦での通算対数回数が最も多い監督は長谷川健太。
32戦戦って新潟の9勝6分17敗(勝率28.1%)
9年前のナビスコカップ(当時)準決勝で新潟を退けたのも長谷川監督率いるガンバ大阪 - 永井謙佑が最も得点を挙げている相手チームは新潟。
対新潟戦19戦 9得点(152分に1点の計算) - 優勝賞金は1億5000万円、準優勝の場合5000万円
スカッド
- 出場停止:両チームなし
- 欠場者
新潟
負傷離脱していた谷口と小野はフルメニューで合流済、特別指定選手の稲村も合流
名古屋
小野が左前十字靭帯断裂に、ホセカラバリが左内転筋肉離れにより離脱中
河面が10/13マリノスとのルヴァン準決勝第2戦、野上が10/23ガンバ戦でそれぞれ負傷交代し復帰は不明。→11/1 公式前日練習映像で両名を確認
- 得点ランキング:長倉 6 G(単独1位)、パトリック&山岸 3 G(2位タイ)
- アシストランキング:徳元 4 A(1位タイ)
予想スタメン
名古屋のスタイルおさらい
名古屋のスタイルをおさらいしていく。プレビューだけ見たいよ!という人は次の「見どころ」へ。
名古屋は長谷川監督の下でローブロックからのロングカウンターをベースに戦ってきたが、今季はよりラインを上げてマイボールの時間を増やすことに取り組んできている。この方針は昨夏に森島、冬に椎橋小野井上らボールの扱いに長けたプレイヤーを獲得したことにも現れており、今夏にも菊地徳元をチームに加えた。
こうした流れの中、気の利く選手たちの存在感が増している。マンツーマンベースの守備&3-4-2-1でピッチを幅広く使いたい攻撃という戦術により味方同士の距離が遠くなりがちなため、自分のタスクを遂行しつつ味方も助けられる人材がチョイスされている印象だ。
和泉森島永井の前線3枚はプレス隊として相手を前から捕まえる役を担いながらプレスバックや味方のカバーまでこなし、マイボールになればサイドに流れたり中盤に顔を出したりゴール前に突っ込んだり。密集で簡単にボールロストしない巧みさもあり、彼らが今のチームをけん引している。加えて野上と徳元のWBは前に出てのプレスと後方のカバーという守備タスクをこなすのはもちろん、攻撃に移れば前者は大外から飛び込むフィニッシャーに、後者は左足とスローインを駆使してチャンスメイカーにもなる。こういった攻守に気の利く選手を多くキャスティングできるようになったことで戦いが安定してきた。
逆に言えばこの戦いぶりはキャストに左右されるということでもある。上記のメンバーに山岸菊地らは絡んでくるが、中山山中パトリックユンカーらスペシャリスト的なタイプがピッチに増えるほど、彼らの個の強みと引き換えに組織としては粗さが出てくる。いつメンで90分保つ訳ではないので、交代も含めて試合をどうマネジメントしていくかというところに苦心しているように見える。
ここからは名古屋のやり方を見ていこう。
非保持
スタイルとしては非保持を起点に奪ったところをファストブレイク!が一丁目一番地。4バック相手では相手に嚙み合わせるように3-1-4-2風味になってマンツー意識つよつよで捕まえていく。恐らくではあるが前線2枚がプレス開始の合図をすると全体がついていく形になっており、森島が後ろに指示を出しつつ前から捕まえていく姿がよく見られる。
特徴的なのはSBに対して名古屋WBがかなり前にプッシュして捕まえていく点。なかなかリスキーではあるが、前線3枚+2CHで相手の中央を抑えてくれるという信頼があるからこそ思い切り行けるのだろう。野上の入る右サイドが高めに捕まえていく印象で、長谷川監督は対新潟戦のシステムを4-4-2とも言っていたとか。マーカーにはできるだけついていく思想で、三國は中盤ラインまでFWとデートするし、森島や和泉は相手CHを追いかけてWBの背後に回ることもある。
ミドルサード以降まで運ばれるとWBは徐々に重心を下げて最終ライン5枚で横幅をカバーする。この時はスペースを消す意識が強まるが、局面局面ではマンツー継続のためCHや左右のCBが食いつくとその背後にやや隙は生まれる。しかしここが簡単には穴にならない。和泉永井森島はCHの動いたスペースを忠実に埋めるし、椎橋稲垣は出ていったCBの穴をカバーしに下がる。この辺りのマンツーかスペースを埋めるかの判断を的確にできるかどうかがこのチームで出るためには求められる力なのだろう。
保持
マイボールになるとまずシンプルに裏に送る形が多い。椎橋や徳元はよく前を見ているし、出す先が永井ならそれだけで戦術になるのがずるい。和泉や森島も積極的に中盤の間、SB裏に呼び込みボールキープして味方に時間を作る。山岸が出れば中央の起点として多少無理も効いてくる。相手が引いた際にはボールの扱える、気の利く選手が多いためそれなりに後方でも繋ぐが、ポジショニングを整理しているわけではないので無理にポゼッションはしない。WB・CH・シャドーが絡むサイドのトライアングルないしダイヤモンドでSB奥を取る意識はありそう。
攻め込む際にはサイドが起点となるが、キーマンは徳元。外に内にとポジションを替え、ボランチのようにサポートしたかと思えば大外を駆け上がり高精度クロスを送り込んでくる。徳元が低めに引いておいて左サイド高い位置に永井を流れさせる形も多い。正直永井ってこんなにうまかった⁉︎ってくらいコントロールも仕掛けも巧いし、クロスもかなりチャンスに結びつけてくるのでほんとうに嫌すぎる。こんなに前線が色んな仕事頑張りすぎるとゴール前足りなくない?とも思うのだが、3列目から稲垣、大外から野上が突っ込んでくるのでうまいこと回っている。
時間帯ごとの得失点を見ると頭も足も動く前後半開始15分が大きくプラスだ。逆に中だるみする前半中ごろや前線の疲労が見えてくる終盤はマイナスが目立つ。交代カードにはバランス調整役は少なく、山中倍井ユンカーパトリックら強みがはっきりした選手が多い。90分か120分かさらに+αか、どうプランするかというところはハセケンの腕の見せ所になるのだろう。
見どころ
開始15分の出方
開始15分で13得点4失点の名古屋と、5得点14失点の新潟。試合の入りが好対照なだけに、まずここが勝負になるだろう。名古屋としても決勝の舞台でのっけから”攻め”のプレッシングを狙うはずだ。決勝の雰囲気に浮足立った状態でこれをまともに食らってしまったら豊スタの二の舞になりかねない。開始15分は敢えて「やり合わない」チョイスをするのが良いだろう。
その意味でまずは遠いところを狙っていきたい。町田との1stレグでは後ろから一気にWBの背後に送り込み、中盤を捕まえにくる相手の矢印を外すような選択ができていた。今の新潟はただ繋ぐだけでなく、相手の嫌なところを突く選択ができることであり、それを可能とする技術があることなのだ。豊スタでできなかったことのリベンジをするべく、阿部や稲村といったフィードの光る選手たちの良さを活かしたい。
コンパクトさを保ってセカンドボールを制せよ
無理に繋がないチョイスをすることで、ある程度持たれる時間帯もあるだろう。ここでポイントになるのはコンパクトさ。磐田が名古屋との対戦で見せたように、DFラインに無理にプレスをかけずに中央を締めたブロックで対抗すれば、名古屋の中盤にはボールが入りづらくなる。また前回対戦では自陣でのセカンドボールを拾われ、後手を踏み続けた。これを防ぐためにも、前から後ろまでがコンパクトに助け合える関係性を保ちたい。
コンパクトにすることはWBを抑える上でも重要になる。4-4-2のブロックだと対処が難しいWBだが、前回対戦ではコンパクトさが失われて簡単に新潟陣地をボールが横断していたため、フリーで何度もボールを触らせてしまった。コンパクトな陣形を保てば簡単には中は通せないし、大きなサイドチェンジをされても踏ん張ってスライドすれば対応可能だ。永井の裏抜けも気にしながらという難しさはあるが、ラインを上げる勇気と労を厭わない献身性を求めたい。
プレス回避のキーマン
時間と共にボールは徐々に持てるようになるはず。この時のポイントは相手に基準点を掴ませないことだ。豊スタではCH2枚がガッチリと捕まり、SBも名古屋WBのプッシュアップに遭ったため受け手がほとんど抑えられ窒息してしまった。この修正として、CHが2列目とともにファジーな立ち位置を取り、マークを受け渡すかどうかで迷わせていきたい。その点でふわりふわりと動きながら味方を繋ぐポジションニングができる星はキーマンとなりそうだ。星のチャントのリズムはルヴァンアンセムと同じだし、この大舞台でもいつもの如くやってのけるはずだ。
またSBがCBの真横まで下りてみて、名古屋のWBはどこまで着いてこられるかな?と試すのはアリだろう。最近のリーグ戦では後ろで繋ぐ際に幅を作ることができず、無理にタテパスを出して引っかけられカウンターを食らう場面が多かった(神戸戦、鹿島戦)。橋本や堀米に早い時間からこれをカマしてもらい、駆け引きするぐらいの余裕を見せつけてほしい。
マンツーマンにはグループで対抗
前回対戦では長倉が捕まり続けて苦労した。この試合では稲垣がずっと長倉を追いかけて最終ラインまで下がり、ボールを受けに行った瞬間やコントロールした直後を潰してはカウンターの起点としていた。試合を通してこの狙いを外すことができず、状況を好転させることができなかった。
ではどうするべきか。この試合ではパスコースがはっきり空いている状態でパスを出す場面が多く、簡単に捕まえられてしまっていた。ならば狙いにくいタイミングで出していきたい。具体的に言えば、下がって受けに来た小野がいたスペースに太田が突っこんでいくような。背後に抜ける長倉を追って背を向けた DF の手前に小見が潜り込むような形だ。マンツーマンで来る相手だからこそ、グループで連動して先手先手を取れれば優位に立てる。元々一つ奥の味方まで見通してパスを繋いでいく力はある選手たちだ。味方同士が攻守に繋がり続け、ゴール前をこじ開けたい。
最後にオカルト的なところをあげるとすれば、松橋アルビは強者に対してのここぞの勝負に強い印象がある。今季の広島戦や町田戦を思い起こすと、勝負どころの試合での鋭さやトランジション意識の高さはいつもと段違いだ。(いつもやれるようになって欲しいんですが)
この試合だって気持ちが高まらないはずはない。これほど「目の前の敵が最強の敵」に相応しい舞台もないのだから。並々ならぬ闘志を胸に、いつもの我々のスタイルを貫こう。その先に栄冠はあるはずだ。