アルビレックス新潟 2019シーズンレビュー の2 吉永アルビを考える

シーズンレビュー企画第2弾!

回のテーマは「吉永アルビを考える」です。シーズン序盤での監督交代、そこからの戦い方の紆余曲折を振り返っていきたいと思います。

 

シーズンレビュー第1弾の片渕アルビ考察はこちらから↓

アルビレックス新潟 2019シーズンレビュー の1 片渕アルビを考える

 

本記事はシーズン経過の中での戦い方の変化にフォーカスを置いています。また、シーズン終了後の吉永監督自身によるシーズン総括も踏まえた内容です。長〜い文章なので疲れると思います。時間のある時に読んでいただければ。

 

 

目次

1.交代直後の苦難(第10節~第16節、○1△2●4)

監督交代後3試合は1勝3分とまずまずのスタートを切ったものの、その後一気に4連敗。吉永アルビは早くも苦境に立たされてしまいました。

基本メンバーは下図の通り。

シルビーニョの出場が増加。またDFラインは最適なセットを探し求めるもなかなか定まらず。探りながらの戦いとなりました。

基本的な戦い方は以下の通り。

  • 守備:少し高めにブロックを形成
  • 守→攻:奪ってすぐに狙えるならタテや裏へ、ダメなら繋ぐ
  • 攻撃:CB+CH中心にビルドアップ、SBが幅を取りサイドで菱形を作ってコンビネーションで崩す
  • 攻→守:ボールホルダー付近はプレッシャーをかけ、それ以外は下がって陣形を整える

 

吉永監督はアカデミーダイレクターという役職、すなわちチームの外側からやってきたわけですが、就任1試合目から大胆に変化を加えます。

 

大きく変化したのが攻撃。前体制ではタテへのスピード重視で中盤を経由する場面は少なかったのですが、吉永アルビはここに大きく手を加え、ボールを繋いで前進するスタイルに。

ビルドアップ時の陣形は下図のとおり。後ろから繋いでGKが参加することも。特に就任初戦のヴェルディ戦は顕著で、ゴールキックでSBへパスするなど繋ぐ姿勢を強く見せました。またCHは立ち替わりでアンカーポジションを取り、CBのサポートとパスで相手を左右に揺さぶる役割に。大外のSB、ライン間のSHが三角形や菱形を形成し、パスコースを作り出します。

このようにビルドアップは準備期間が少ないながらも一定の形を作ることができ、敵陣まで入ることはできていました。しかし、選手が慣れるまでに時間がかかったのは事実。初戦の選手の動きはぎこちなかった上、ビルドアップでの致命的なミスも散見されました。

 

前進の形は見えつつも、最後にゴール前で崩す部分では苦労。カウエのタテパスをアクセントにしながらヨコとタテのパスを織り交ぜて崩しにかかりますが、この形からの得点は13節長崎戦の1点目のみ。中に人が集まってゴチャつき、整理しきれていない印象でした。サイドに流れる必要のなくなったレオナルドがこぼれ球を詰めるなどして徐々に点を取り出しますが、相方のシルビーニョは効果的に点に絡めず。

 

攻→守ではタッチライン際の高いポジションを取るSBの裏がやはりウィークポイントに。さらに繋ぐチームの宿命、後方の選手のパスミスから攻められるシーンも。繋ぐことを重視せずトランジションゲームを仕掛けた片渕アルビに比べ、カウンターを受ける数が減少する一方、カウンターが相手の好機につながる割合は増えたように感じました。

 

攻撃の変化に従い守備も変化。コンパクトな4-4-2がトレードマークだった片渕アルビでしたが、吉永監督は選手間の距離を少し長めに取り、ブロックを形成。プレスで追いこんでサイドを奪いどころとしていたこれまでと違い、パスコースを限定して中央に出されたパスを奪いどころに。このように変化したのは、攻撃時に幅を取ってピッチを広く使う狙いを生かすべく、攻守の移行段階での選手の移動を減らすためだったと考えられます。

1-守備

コンパクトさを失うためにサイドチェンジ対応が楽になった一方で、選手間のスペースを突かれ失点する場面も(14節愛媛戦など)。特にFWとトップ下の選手の守備意識が低く、FW-MF間が空いたところを使われる場面は何度かありました。

 

もちろん守→攻の狙いも変化。ボールを奪って最初に狙うのは裏のスペースですが、相手の陣形が崩れていなければ落ち着いてパス回しへと移行。忙しい展開は減少していきました。

 

このように以前とは真逆ともいえる方向へ一気に移行したのでありました。吉永監督がシーズン総括で語ったように初戦のヴェルディ戦、特に前半は良い流れだったため、ここで勝ち点3をつかみきれなかったことは後に響いたと言えます。4連敗中は攻撃の狙いがぼやけたり、チームが1つになり切れず失点を重ねたりと苦しい状況でした。そんな中、転機が訪れます。

 

 

2.カウンタースタイルの確立(第17節~第26節,○6△2●2)

一気に調子を落としてしまった吉永アルビに待っていたのは大きな方針転換。しかし、ここから浮上のきっかけをつかむこととなります。

基本メンバーは下図の通り。

スタメン-2

これまでとメンバーが大きく変更。きっかけとなったのは4連敗直後の練習試合松本山雅戦でした。練習試合ながらJ1のチームに5-0で勝利し、吉永監督自ら「ターニングポイントになった」と語ったこの試合でアピールした選手が早速次の岐阜戦でスタメンに。その後ルーキーの至恩や將成も台頭してきました。

基本的な戦い方は以下の通り。

  • 守備:プレスはあまりかけない、4-4のブロックを低めの位置に形成し中央で奪う
  • 守→攻:FW、SHへ素早く繋ぎスピード感を持ったカウンター
  • 攻撃:SHを生かしたサイドからの攻め、SBも加わってクロスを狙う
  • 攻→守:ボールホルダー付近はプレッシャーをかけ、それ以外は下がって中央を固める

 

大きく変化したのはまたも攻撃。SHにスピード、推進力に長けた選手を起用することで、カウンターの意識を強化。CHらが相手DFライン裏に長いボールを蹴り込み、一気に前進する狙いがありました。20節鹿児島戦はこれがハマりにハマって逆転勝利を収めました。

 

相手の陣形が整っている際にはサイドを起点に攻撃。トップ下に入る善朗がSHのサポートに入り、SHの仕掛けを生かしつつSBも攻撃に加わります。特に左SBで出場が増えたゴメスは大きくサイドに開く左SHの開けた内側のスペースへインナーラップ。19節栃木戦ではゴール前に飛び込んでPKを誘発しました。

また、サイドからのクロスも多用。右SHのフランシスが内へ入り、善朗が右サイドに流れてクロスを入れる狙いは何度か見られました。真価を発揮し始めたレオナルドへとボールを送り込み、好機を何度も演出。21節大宮戦や26節徳島戦の1点目はまさに狙い通り。

 

攻→守においては被カウンターでのピンチが減少。後述の通り守備ブロックが少し下がったこと、また攻守での陣形変化が小さくなり、攻→守の切り替えの際に穴ができにくくなったためと考えられます。

 

守備のベースは以前から継続してブロックを敷くことですが、全体として下がり気味になることが多くなりました。これは、攻め込む相手を引き込んで奪った後のカウンターを狙ったことが大きな理由として挙げられます。

また、定まりきらなかった大武の相方となる右CBに上背のある將成が定着したことで、ブロックをゴール近くまで下げても相手のクロスを中央で弾き返せる安心感が得られたことも大きかったのではないかと考えます。

2-守備

一方、CHがカウエとサチローという食いつきがちなタイプの人選となったことで、中央のスペースが空いてピンチとなる場面も。20節鹿児島戦では前半にこのスペースを突かれ失点。後半に修正が入った様子で、この問題は改善されていました。

 

守→攻の狙いは前述の通りカウンター。SHが相手SB裏を突く形が主ですが、26節徳島戦では全体が押し込まれ下げられてしまうため、FWやトップ下が3バックの脇でボールを収めカウンターに移行。対戦相手によって狙いを少しずつ変えていました。(↓徳島戦レビューより)

新潟収めポイント

このように、連敗時のボール保持を狙う形から変化することで一気に状況は好転。10戦6勝勝ち点20得点24と大暴れし、上昇気流に乗ることに成功。特に26節徳島戦は、これまで苦手としてきた相手に対してプラン通りに辛抱強く闘っての完勝。1つの完成形が出来上がりました。

 

しかし諸行無常とはよく言ったもので、好調は唐突に終わりを告げます。ただ、これもある程度は予期できたことだったことなのかもしれません。それについては次の項で…

 

 

3.大ブレーキの3連敗(第27節~第29節,●3)

急激に調子を上げた先に待っていたのは3連敗。吉永アルビに何が起きたのでしょうか。

この3試合のメンバーは下図の通り。

画像9

山形戦はレオナルドが体調不良?により欠場、岡山戦からは川崎からカムバックしたマイケルが加わり、金沢戦では善朗が累積警告で欠場と核となるメンバーの入れ替わりが毎節ありました。特にマイケルは加入直後にDFラインに加わったため、連携面などでアジャストしきれていない場面が散見されました。これは結果の出なかった1つの要因です。

 

より大きな要因として考えられるのは対戦相手のスタイルです。どのチームも規律を保って守り、闘える選手が多いチームで、ボールを手放すことも厭わない戦い方をしてきます。今季の新潟はシーズンを通して「ボール支配率が高い試合ほど勝てない」チームで、この3連戦の相手も同じ傾向にあるのです。

新潟は「似た者対決」での戦績が悪く、前半戦の山形、岡山、金沢との対戦成績は2分け1敗。しかし引き分けの2試合ともアディショナルタイムでの同点劇と、何とか勝ち点を拾った形で、負けは目前でした。ボールを保持しない方が強いチームの対戦でカギを握るのは先制点。しかしいずれの試合でも前半のうちに先制され、ボールを持たされて苦しくなってしまいました。

画像16

先ほど「ある程度は予期できた」というのはまさにここ。26節徳島戦までの好調だった10試合のうち、鹿児島、琉球、徳島といったボール保持型のチームに対してはうまく戦えていましたが、金沢、横浜FC、町田といったボール保持にこだわらないチームにはやはり苦戦。そんな中でこだわらないチーム3連戦がやってきて、さらにチームの中心ポジションが入れ替わるとなると、良い結果が出ずとも致し方ない面はありました。

 

ただ、これまでの戦い方をベースとしながらもボール保持を改善するための策は準備されていたようで、金沢戦では下図のようにボランチを縦気味に配置して崩しに行く姿勢を見せました(詳しくは29節金沢戦レビューで…)

タテパス

しかし、集中を欠いたプレーや同じ形から何度も失点するなど勿体ないミスが多く、決定機も相手GKの鬼神のごとき活躍に阻まれるなど、空回りし続けた3連戦でした…

 

 

4.最終手段:カウエ外し(第30節~第34節,○2△3●0)

苦しい3連敗の後に待っていたのは毎年おなじみの光景。しかしここからまた好転します。

基本メンバーは下図の通り。

スタメン-3

大きなトピックはカウエがスタメンから外れたこと。累積警告で31節千葉戦を欠場し、それ以降はベンチを温めることに。ここ数シーズン新潟で見られる「キャプテンの先発落ち」がまたも現実となってしまいました。トップ下だった善朗がボランチにスライド、トップ下には29節金沢戦以降シルビーニョが定着。DFラインの右側もようやく安定しました。

基本的な戦い方は以下の通り。

  • 守備:無理にプレスはかけない、4-4のブロックを低めの位置に形成し中央で奪う
  • 守→攻:まずはFWやSHを起点とするカウンター、ダメなら繋いで落ち着ける
  • 攻撃:DFライン+アンカー位でビルドアップ、SHが幅を取って守備陣を広げて内側を突く
  • 攻→守:ボールホルダー付近はプレッシャーをかけ、それ以外は下がって陣形を整える

 

この人選の変化に大きく影響を与えたのがマイケルの復帰です。背が高くCBとしてのディフェンス能力が高いことに加え、川崎に在籍していたこともありボール扱いも巧み。ゴール前の門番にもボールの落ち着きどころにもパスの出所にもなるという、新潟にとってはスーパーな存在でした。

攻撃の際には、彼が加わったことでDFラインでもボールを持ちやすくなりました。加えてCHの善朗がビルドアップ時にアンカー位置に入ることで後方での繋ぎを安定化。これにより後ろでパスを回しながら前進することが可能に。両CHの役割も整理されました。

4-ビルド

これにより恩恵を受けるのは前線の選手たち。後ろの選手が前の選手に幅広くタイミングよくボールを届けられるので、組み立てに無理に参加する必要がなく、個々のタスク遂行や個々の特徴を活かすことに専念できます。その結果、これまで強みだったカウンターだけでなく、ボールを握っての攻めも効果的になりました。事実、この5試合ではカウンターからの得点はなく、崩した形が多くありました。

 

ゴール前の崩しの局面ではSBやSHがサイドに大きく開き、その内側を埋めるようにFWやトップ下がポジショニング。相手の守備ブロックを広げ、内側に生じた守備網の穴を突く狙いがありました。

アクセントになったのが左SBゴメスのインナーラップ。左SHが開くことで相手が釣られてできるスペースにドリブルで、または走り込んでボールを受けて侵入。

4-インナー

相手守備陣は突然攻撃側の枚数が増えてマークがずれ、てんやわんやに。これでうまく穴を作り出し、ゴールチャンスを作っていました。この5試合で生まれた8ゴールのうち、実に4ゴールにゴメスの攻撃参加が絡んでいるのです。31節千葉戦の1点目はマリノスもびっくりの偽SB的ムーヴ。某松原選手にも勝るほどの大胆な攻撃参加が1つの武器となりました。

一方、開くSHと中央の選手とを繋ぐサポート的役割も求められるシルビーニョは時折気まぐれポジショニングを見せ、攻撃が停滞する場面もありました。序盤戦に比べポジショニングは改善されていましたが、もう少し頑張ってほしかった…

 

攻→守、守備、守→攻の狙いは大きな変更なしでしたが、ここでもマイケル効果が。彼がDFラインに入ることで中央の守備強度がアップ。よって、前線の守備意識にムラがあっても、ラインを下げて後ろで何とか守りきれる自信が生まれました。吉永監督も試合後に「われわれの守り方に対してそんなに崩されると思っていなかった」とコメントすることが増え、手ごたえを感じていたのは明らかでした。

ただ、全体を下げるためにカウンターが打ち出しづらくなったのも事実。特に32節ヴェルディ戦では相手のカウンター予防のポジショニングも影響し、前半は有効なカウンターを繰り出せず。(⇩ヴェルディ戦レビューより)

新潟カウンター

しかし、後ろで繋いで前進できるようになったため、守→攻で無理にカウンターを仕掛ける必要はなくなりました。よって、多少ラインを下げても問題なくなったと言えます。

 

この時期の1つの課題として、前半をプラン通りに進めるも、後半に相手の修正に対し後手に回るという点がありました。しかし、耐える時間、仕掛ける時間をチームとして共有できつつあり、ギリギリのところで守り切るしぶとさやチームとしてのまとまりが強まってきた印象でした。

 

このように、マイケルがコンディション面含めフィットしたことで、小柄でパス回しに長けた善朗をCHで起用しても守備の強度を落とさずに済み、むしろ攻撃面を強化することが出来ました。5戦6発のレオナルドの力によるところも大きいですが、カウンターに頼らずとも得点を重ねられるようになり、着実な結果、成長を見せた時期でした。

しかし、ここからもう一変化が待っていました。

 

 

5.最後にはまったピース(第35節~第42節,○5△1●2)

9月の試合を無敗で終えた吉永アルビ。そんな上向きのチーム状態の中、監督はセオリーに反してメンバーを替える決断をします。

この時の基本メンバーは以下の通り。

スタメン-4

これまでジョーカー起用だった至恩と白血病からのカムバックを果たした早川史哉がこの8試合全てに先発出場。さらに37節福岡戦からは高卒ルーキーの秋山裕紀も出場、力強く主力へのし上がりました。

基本的な戦い方は下のまとめの通り。

  • 守備:無理にプレスはかけない、4-4のブロックを低めの位置に形成し中央で奪う
  • 守→攻:まずはFWやSHを起点とするカウンター、ダメなら繋いで落ち着ける
  • 攻撃:SBとアンカー位を中心にビルドアップ、SHが幅を取って守備陣を広げて内側を突く
  • 攻→守:ボールホルダー付近はプレッシャーをかけ、それ以外は下がって陣形を整える

 

これぞ吉永アルビ最終形態。ベースは34節水戸戦までと大きく変わりませんが、選手の特性が噛み合ってパワーアップしました。

 

攻撃における新たな武器として加わったのが至恩の仕掛け。彼の能力に疑いの余地はありませんが、左SHとして先発することで試合開始から相手の右サイドを恐怖に陥れます。

そしてこの効果を倍増させたのが左CB大武のロングフィード。これまでも鋭いロングフィードを狙ってきた彼ですが、サイドで1対1の状況を作った至恩に後ろから素早くボールを届けることで、至恩が1対1で仕掛ける時間とスペースを与えていました。(↓愛媛戦レビューより)

新潟攻撃2

 

そしてもうひとつのパワーアップ要因は右サイドの史哉・新太コンビ。メンバー変更で史哉がカムバックし、新太は左SH→右SHになったのですが、これにより互いの良さが引き出されます。

新太は元々FWのマインドの持ち主。大外に張って仕掛けるよりもゴールを狙えるポジションの方が持ち味を発揮できます。そして史哉は状況を見て外からも中からも攻撃参加可能。バランスを取ることにも長けています。この組み合わせにより、新太が中へ、史哉が外に位置して互いに活きる形ができました。

5-右仕留め

今シーズンは守備での貢献が多く、あまりゴールに絡めなかった新太でしたが、この変更により最後の8試合で3ゴール3アシストの輝き。35節鹿児島戦の2点目は左で仕掛け右で仕留めるという形で、1つの得点の形ができていきました。

https://twitter.com/J_League/status/1180456896752308225?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1180456896752308225&ref_url=https%3A%2F%2Fnote.com%2Falkene_alb%2Fn%2Fn3df20ed60fc1

 

もう1人の先発定着組、秋山は善朗が負傷離脱した代わりにCHに入り、ルーキーとは思えないほどすんなりと試合に入りました。本職ボランチらしくパス回しの面では善朗と同じかそれ以上の貢献度。守備面では体の強さやポジショニングなどまだまだ向上する面はありますが、安定感のあるCBコンビに後ろを支えられ、伸びのびとプレーできている印象でした。

 

37節福岡戦や39節栃木戦のように極端な戦いをされると苦戦しましたが、カウンターだけでなく押し込んだ状況でも得点を取れる、総合力の高いチームが最後の最後で完成しました。最後のピースがルーキーや病を克服して帰ってきたヒーローだったというのはドラマとしていささか完璧すぎるような気もするんですけどね。

 

 

雑感 吉永アルビが目指したもの、残したもの

吉永アルビのデータまとめについてはシーズンレビュー第3弾で扱うことにします。ここからは私自身の考察が大いに含まれるので参考程度にサラッと読んでください。

 

吉永監督が目指した形は一貫していたと考えています。それは…

幅を取って相手守備陣を広げ、ボールを握って攻める
守備ではブロックを敷いて奪えるタイミングで奪い、うまくいけば速攻、ダメなら繋いでいく

というものです。就任初期と最終盤では幅を取る選手が変化(SB→SH)しましたが、大きな狙いとしては変わりません。大枠を変えない中で選手の特性に合わせ微調整していったのでしょう。

 

片渕アルビの形から大きく変えた理由として、点を取る形を作りたかった、もっと言えばレオナルドのフィニッシャーとしての能力を最大限に生かしたかったのではないかと考えます。片渕監督時代はサイドに流れる動きも要求され、なかなかゴール前でプレーできませんでしたが、監督交代後は中央でのプレーが増加。それとともにゴール数も伸びていきました。

就任当初にどれほどレオナルド、シルビーニョのコンビの得点力を買っていたのかは分かりませんが、少なくとも夏前、カウンターベースになってからはレオナルドの活かし方を主に考えていたと思われます。

 

レオナルドの活かし方も含めてですが、吉永監督はリアリストな面が強かったと感じます。最初のやり方でうまくいかないと見るや、選手を変えてカウンタースタイルにしてまずは結果を出し、選手の加入や離脱、そして戦術の浸透に合わせて徐々に繋ぐスタイルへと変貌させました。SHの変遷にそれが現れています。

理想としては最初のやり方を貫き、最終形態のように「カウンターも崩しもなんでもござれ」にしたかったのでしょう。しかし、それを阻んだのは監督交代の理由ともなった「昇格」という目標であり、そのためにリアリストにならざるを得なかったことは否めません(本人はもっとドラスティックになってもよかったとコメントしていますが)。

 

この7カ月を見てきて、吉永監督は選手の良さを活かすことに長けているという印象を持ちました。本人が「チームはキャンプ中に出来上がっていないといけない」と話すように、選手をよく見てチームを作り上げていくやり方のため、初の途中就任での難しさがあったのでしょう。しかし、最終的には指導の成果もあって成長した選手も多く、期待の若手も多く出場。「もう1年見たいチーム」になっていました。

吉永監督は就任時から常に「結果」が背中につきまとう中で紆余曲折を経ながら、なかなか点が取れず守備的だったチームをリーグ2位の得点力を誇る攻撃的なチームに作り変えました。最終結果は芳しいものではなかったですが、狙いの分かる面白いチームになったことに間違いはありません。吉永監督がクラブのために粉骨砕身してくれた事、そして監督を退いた後もユース監督としてクラブに残ってくれたことに対する感謝の思いは絶えません。

 

 

2020シーズンから新たな大冒険が始まるアルビですが、個人的には吉永アルビがその第0章に当たるのではないかと予想しています。だからこそ、この33試合の戦いを胸に刻みつけておくべきだと、私は思います。

 

この予想の答え合わせは来シーズン開幕後に。

 

 

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