ありったけの手を尽くせ |J2第29節 vs徳島ヴォルティス 2020レビュー

2020シーズン

前書きはしばらくなしにします。私も過密日程の中で膨大な集中力と体力と電気代を使っているので考えるだけでも大変なのです…

目次

0.前回対戦レビュー

年季の差、手札の差|J2第20節 vs徳島ヴォルティス 2020レビュー

 

 

1.マッチレビュー

メンバーはこちら。

徳島はスタメン2人変更。石井、杉森がともに2試合ぶりにスタートから。前回恩返し弾を決めた河田がスーパーサブとして出場機会を虎視眈々と狙う。

対する新潟は前節と同じスタメン。しかしベンチには4試合ぶりメンバー入りの矢村と今季2度目のメンバー入りの森。少し前までスタメンで出ていた顔ぶれがメンバー表から姿を消しているのが嫌な予感…

 

①徳島の敷いた”新潟シフト”

共にボールを”愛する”スペイン人指揮官による2度目の対戦で、先に動いたのは新潟。開始早々前線からプレスをかけて敵陣でボールを奪いに行き、1分にFKをゲット。そのままの勢いで攻勢に出た。

しかし、展開が落ち着いてくると流れは次第に徳島へ。そのきっかけとなったのは徳島の用意した対新潟仕様のプレスだった。

 

新潟はいつも通りGKから繋いでいく姿勢を見せる。これに対し徳島FWは新潟左サイドへのパスを出させないよう牽制。右CBマウロにパスが出ると見るやプレスの準備体制に入る。

対新潟シフト -誘導プレス-

・右SH西谷 → 左CBマイケルをマーク
・FW垣田    → 横から寄せてCB間のパスコース遮断
・FW渡井    → CHへのパスコース遮断
・左SH杉森 → 右SB田上には敢えて寄せない

こうして出しどころに困ったマウロは右SB田上にパスを出す。これを待ってましたとばかりに左SH杉森は一気に田上との距離を詰め、プレスをかける。それに呼応して徳島は全体をコンパクトにしてボールを逃さないよう網を張る。このようにボールを新潟の右サイドに誘導するのが徳島の狙いだった。

右サイドのマウロ-田上は左サイドのマイケル-早川コンビに比べるとボールの持ち方、パスの出しどころが正直になりがち。困った田上は浮き球で前へのパスを選択するも、前と合わずに徳島が難なく回収。こうして新潟は簡単に自分たちのターンを失ってしまった。

ただ、新潟とて伊達に4ヶ月ポゼッションにトライしているわけではない。というわけで抜け穴を見つけるべく試行錯誤。次のようにポジションチェンジでマークのズレを生み出し、突破口を探した。

こうして繋いで上手くプレスをかわすシーンを作ることもできた。

 

しかし、プレス外しにパワーを割きすぎてしまい、前線に人がいない、押し上げる時間がない問題が発生してしまう。特に最近の新潟はSBがゴール前まで攻め上がる厚みのある攻撃を仕掛けていたが、この日はその回数も少なく。

SH中島、本間がサイドでキープし、OH高木がライン間でパスを受けてファールを誘うなど個人の奮闘は見られたものの、その先がなかなか繋がらなかった。

 

②年季の差リバイバル

プレスから流れを掴んだ徳島はボールを持ってペースを握る。ボールを持てないならばとこちらもプレスを仕掛ける新潟は真っ向からぶつかっていく。

 

徳島はボールを保持した際に非対称な可変システムを採用。右SB岸本は大外に、左SBジエゴは前線に上げてしまい、後方での繋ぎはGK+CB+CHの5人がメイン。新潟が中央を警戒したこともあり、CH小西が右に下がって3バック化する場面が多かった。

 

これに対し新潟はある程度CBに持たせ、横パスやCHへのパスをスイッチとしてプレッシャーをかける。SHが大外へのパスコースを遮断し、中央では岩尾や小西への引き締めを強めた。

特にOH高木のプレスがこの日は効いており、2度追いも厭わず敢行。開始1分ペナルティエリア前でのFK奪取にも繋がった。

しかし、それでハメられる徳島ではない。岩尾&小西はフェイクを入れてプレスをかわし、DF-MF間の僅かな隙間にバシバシタテパスを通す。また、CBがドリブルで持ち上がることで消えていたパスコースを復活させる老練さも見せた。

 

敵陣に入っても岩尾&小西はタテパスを刺し続け、渡井、杉森、西谷らアタッカー陣が仕掛ける。徳島は左サイドからの攻撃が多かったが、これは左SBジエゴが前線に上がってカオス的存在となりマークを乱し、その分左SH杉森が大外でボールを持つ場面が多かったため。

守備ブロックを完全に崩す場面を作るも、新潟が辛抱強くブロックを維持し、瀬戸際での粘りを見せたためにフィニッシュは上手くいかず。しかしスペイン流の年季の差を見せ、ホームチームが着実に試合をコントロールしていた。

 

③割り切ったからこその互角

ボールを持てず奪えずで全体がズルズルと下がってしまった新潟。前半の給水タイム後に少し修正。

給水前はOH高木の担当はCH監視だったが、給水後はCHを飛ばしてCBにもプレスをかける場面が増加。二度追いによって前からの圧力を強めた。高木が前に出る分空いてしまう中央のエリアはCHの一人が前に出てケアし、重心を前にしてビルドアップ阻害を試みた。

しかし、この修正は一長一短に終わる。徳島の繋ぐ位置を下げさせ、ミスを誘ってボールを奪い速攻を仕掛けることに度々成功した一方、CH脇にできたスペースを使われる場面も増加。渡井や西谷らがDF-MF間に顔を出したタイミングで岩尾&小西による鋭いタテパス。これが通ると徳島の攻撃は加速していった。

 

 

何とかスコアレスで凌いだ新潟はハーフタイムで更に修正。試合後コメントから。

--アルベルト監督が後半から改善したと言っていたが。

後ろが重かったので、全体的に強く前に行けるように、ラインを押し上げたと思います。後半は前から(守備に)行ってチャンスができていたので、感触的に良かったんじゃないかなと思います。

― 10 本間 至恩―

前半はプレス時にも最終ラインをセンターサークル手前から5~10mの高さをキープ。無理に上げることはしなかったが、後半はセンターサークル手前と同じ高さかそれ以上に押し上げることも。前半以上に全体を高い位置でキープし、コンパクトにプレスをかけた。

この策が奏功。徳島は自陣に多くの人数を割かざるを得なくなり、なかなか敵陣侵入できず。ジエゴが前線に上がる場面も減少した。DF-MF間で渡井や西谷が受けようとするとマウロ、マイケルの両CBが前進して芽を摘みに来るため、前線にうまく繋がらない。次第に動き出しが減少し、パスを繋ぐことに固執してしまったような印象もあった。

 

プレッシャーをかけて奪ってからのスピーディーな攻撃を増やし、流れを掴んだ新潟。しかしチャンスを活かしきれずにいると、切り替えの早い展開が続く中で体力を消費し、間延びが目立つように。

ここを好機と見た徳島は給水タイムを挟んだ4枚替えで主導権回復。CHに入った鈴木がピッチ中央をコントロールし、最前線の河田が脅威となった。新潟に雑なプレーが増えたこともあり、70分台には徳島がチャンス量産。小島のビッグセーブ連発がなければスコアは動いていた。

 

新潟もロメロ、シルビーニョを投入して前線にパワーを注入。相手陣に押し込む場面を作るがゴールには迫り切れずにタイムアップ。内容の濃いスコアレスドローとなった。

 

 

2.試合結果

徳島 0-0 新潟

得点者 徳島
得点者 新潟

詳細なデータはJリーグ公式サイトFootball Labへ。

 

 

3.雑感

前回対戦同様の「密な」試合だった。両者ともに決定機はあったものの、公平に見るとやはり徳島の方に分があったように感じる。小島様様。

タイムアップ時の印象で言えば、徳島の方は多少余力があるようにも見えた一方で、新潟は息も絶え絶え。今の新潟は今季出場数の少ない田中達也、森俊介がベンチ入りしている通り、けが人が多いのか層が薄い状態。そこに某案件も絡んで選手が抜け、有り駒でやれる策をひねり出している状態。その中での結果と思えば、ありったけの力で徳島相手に渡り合ったと褒めてもいいのかもしれない。

だが、もう結果と向き合わざるを得ない時期になってしまった。これ以上欠場者が出ないことを祈りつつ、また次の5連戦へ向かうしかない。強い気持ち。

 

  • 割り切りの中で求めたいこだわり

前回の後半に引き続き、徳島がプレスを強めると新潟はなかなか綺麗に前進できなかった。しかし、この日は割り切りがあった。

--攻撃のビルドアップの狙いと感触は。

自分はあまり関われなかったのでなんともいえない。相手が右にボールを出そうとして、つなぎがうまくいっていなかったので、割り切って後半は蹴ったほうが相手はイヤそうだった。テセさん(鄭 大世)も競ってくれたので、割り切ってやれたという意味では良かった。

― 5 舞行蹴ジェームズ―

この日の徳島はDFの背後への飛び出しは少なく、スペースを上手く見つけながら徐々に前進する狙い。ならばリスクを承知で全体を押し上げ、DF手前のスペースを狭くしてボールを奪いやすくする。ボールを持ってもプレスを正直に食らうことは避け、前線のフィジカルの強みを生かす。「自分たちのやりたいこと」よりも「相手の嫌がること」にシフトしたことでペースを引き寄せた。

惜しむらくは、素早い展開の中で雑なプレーが増えたこと。ボールを持っても前、横にしかプレーの可能性を持たず、後ろに繋いでやり直す等これまでやってきたことを忘れたかのようなプレーが何度も見られた。素早くプレーすることと精度を粗末にすることは別物。素早い攻めが増えたとしても、これまで通り判断の精度にはこだわっていきたい。

 

 

またしても上位対戦で勝てず、上との差は縮まらなかった。それでも選手たちは前を向く。

「もう結果は変わらないので、切り替えて全部勝つために臨みます」(本間至恩)
「これでも望みはあると思う。こういう試合でも失点ゼロに抑えてチャンスを作れることは、ポジティブに捉えられると思います。」(舞行蹴ジェームズ)

苦しい状況の中でもやれることは増えているし、この日のように割り切ることもできる。残り約3分の1。最後までありったけの力を尽くして望みを手繰り寄せたい。

 

 

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