お盆直前、山の日決戦であります。山の日ということで何となく山形に分がありそうな予感のある試合ですが、相性がいいのは新潟。2010シーズンJ1第18節から負けておりません。当時の新潟のSBは大伍と高徳の現神戸コンビ… 隔世の感であります。あれから4勝3分と負けなしでこの試合を迎えました。でもね、何が悲しいって、この文章を試合結果が分かった上で書いていることですよ…(´;ω;`) 相性のいい試合を落とすんじゃなくて、相性最悪のヴェルディ戦でさっさと初勝利挙げてくださいよ!!!ヽ(`Д´)ノ
1.試合結果
山形 2-0 新潟
得点者 山形 43’ ジェフェルソン バイアーノ 65′ 大槻周平
新潟 なし
詳細なデータはJリーグ公式サイト、Football Labへ。
ハイライト動画もどうぞ。
2.マッチレビュー
スタメンはこちら。
山形は前節からスタメンを5人変更、前節先発の野田、松本、三鬼、柳はメンバー外というスクランブル態勢。さらに2002年生まれの半田が初スタメン。ここ7戦で5敗、連敗中の悪い流れを断ち切るための大ナタか。
一方の新潟はここまで12得点でエースのレオナルドがメンバー表から忽然と姿を消しました。夏の怖~い話でないことを祈るばかり。(追記 アルビのJ1昇格のために力を尽くすと宣言してくれました。ほっと一息…)
①どこか違うけどなんか似てる
前節同様3-4-2-1を相手にする新潟はやはり4-4のブロックを形成。しかし徳島と山形のやり方は大きく違います。徳島はWBが高い位置取りを取って仕掛けまくる攻撃的なスタイルなのに対し、山形のWBは新潟のSHと同じくらいのラインに位置取り、ビルドアップの際には下りて受けに行くこともしばしば。
これにより徳島戦同様SHにWBを見させた新潟は、SHが頑張って下がる必要がなくなり、SBはマークの受け渡しも少なく、バイタルエリアにいる山形の選手の対応に注力できます。
また、時折FWのバイアーノに向けて出されるロングボールもCBコンビでシャットアウト。この試合は將成がバイアーノをほとんど抑える頼もしさを見せました。よって、山形のボール保持時は少しラクな展開となります。
さて一方の新潟のボール保持。新潟の後方にボールが渡ると、山形は外へ押し出すように強くプレスをかけていきます。そしてサイドにボールが渡ると、サイドチェンジさせまいと中を切るようにプレッシャーをかけ、新潟のSHへとボールを誘導して囲い込んで奪い切ろうとする意図が見えました。
これに対する新潟は、SBを起点としてプレスにかかる前にサイドチェンジ。これにより逆サイドのスペースを利用して前進します。
だがしかし、ここからが難しい。山形は自陣に下がると5-4のブロックを形成(後述)。これにより前線のスペースがなくなってしまいます。さらに新潟の攻撃時の陣形はフォーメーション通りの4-2-3-1をほとんど崩すことがありません。前半は特にボランチが低い位置取りをしてしまったためにブロックの中に侵入する選手が少なく、大外からの攻撃に終始。右SB直人のオーバーラップから好機が生まれるなどしますが、ボールを握りながらも決定機はほぼなし。 山形にとってはそれほど脅威を感じなかったでしょう。
このように、フォーメーションは違えど似ている両者。
「理想はブロックを作って守り、奪ったら早めに攻めること。しかし相手の戻りも早く、後ろから組み立ててチャンスを作ろうとするも崩しがイマイチで攻めきれない…」
仕方がないから時折FWにロングボールを放り込むあたりも似てる。しかし効果的には使えず…
そんな両者の明暗を分けたのはブロックの違いでありました。
②たかが1人、されど1人
当然ですが、5-4のブロックと4-4のブロックでは人数が違います。差は1人。これがどんな違いを生むのでしょうか。
その前にサイドチェンジが守備側に与える効果について二つの点から考えましょう。
サイドチェンジによって…
・人をマークするという点(マンツーマン)
→視線が動くことによりマークする選手を見失う、誰がマークするのか曖昧に
・スペースを守るという点(ゾーン)
→守るべきスペースが変化、味方との距離感が変動
つまり、攻撃側はサイドチェンジによって相手の守備の基準点を狂わせることができるわけです。攻撃陣ならできるだけやりたいし、守備陣はされたくない。されたとしても、基準点の狂いを最小限にしたいですね。
というわけで、その狂いを少なくしようとするのが5-4のブロック(山形)です。MFのラインは4人ですが、一番狂いを生じさせたくない最終ラインを5人に守らせることで、ゴール前を簡単に明け渡しません。DFラインから一人が飛び出て対応しても4バック。丈夫です。
ただ、欠点としてはスライド回数が減ることでカバーの意識が薄くなってしまうことです。DFラインの一人(特に左右CB)をピン留めして空いたスペースやマークから外れた選手を使うのが定石ともいえます。
攻略法の詳細はこちらで…
一方4-4のブロック(新潟)はどうか。DF、MFともに4人で担当するため、コンパクトなブロックとなります。後ろの枚数が先ほどのものより減るため、重心が少し高くなります。前線に二枚残せるので、前からプレスをかけたり、町田のように横幅圧縮して選手の密度を上げたりなどの応用ができます。
しかし先ほどのブロックよりも横幅担当が減ります。必然的にスライドが多くなります。この時に狙われがちなのが大外。視点の移動によりマークが捕まえづらくなるため、「わかっていても止められない」が頻発します。ナポリのカジェボンなんかはよくここを狙ってきますし、今年の新潟のホーム町田戦の得点もそう。サイドチェンジ→逆サイド大外の凌磨と繋いでゲットしました。いわゆる泣き所です。
そのスライドが不十分だったことで、山形に先制点が生まれます。
43分、南からのパスを受けた本田は一旦左へ持ち出します。これにより新潟守備陣はスライドするも、ゴメスが南をマークしてついていき、新太はスライドしきれず。本田が右に持ち替えた時にはゴール右側に大きなスペースが。ここへ半田が新太の裏からオフサイドラインギリギリで飛び出したところに本田がピンズドのパス。バイアーノがゴール前で一歩早く動き出してパスを受けて勝負あり。(下図はgifです)
新太が絞り切れなかったことが一因ではありますが、DFラインがこのスペースをケアすることができれば防げたかもしれません。人を見るのか、スペースを見るのかはっきりさせることが今後も大事になってきます。
山形の2点目も大外使い。相手陣中央左でボールを受けた本田が右サイドへ展開。大外にオーバーラップした右CB加賀の対角クロスに走りこんだ大槻が直人の前に入り込んで頭で合わせました。スライドによる泣き所の大外を突きました。
③ストライカーの重要性
2失点目の少し前に二枚替えを敢行した新潟。なんと貴章、新太を下げて至恩、シルビーニョinのゼロトップ気味に。さらに70分にはフランシス→凌磨でMFだらけに。前がかりになる新潟は、前線が中に入りたいマンばかりなこともあってボール保持時には両SBが高い位置を取り始めます。
これによるポジティブな効果も。前線4枚がバイタルでボールを引き出すことで、この試合通じてなかなか侵入できなかったバイタルに少しずつ侵入できるように。うまくワンタッチで繋いで突破しようとする場面もありましたが、そこには青き山が鎮座。ゴール前を固く閉ざします。中が難しいなら外、となりますが、トライアングルでの崩しなどは仕込まれていないためか、大外のSBからのクロスか至恩のドリブルしか活路はなく。
また、ここで大きく響いたのがFW不在。裏を狙う動きがないことで、DFは裏を警戒する必要がなく、前にいる相手をつぶせばいいだけとなり、よりブロックがコンパクトになってラクになります。ストライカーのようなオフザボールの動きからクロスに合わせる選手もおらず、得点の匂いは薄いまま… 貴章か新太を残してもよかったように思います。クロスが2度バーに当たり、そのうちの1つの跳ね返りを善朗がボレーするもバー。運にも見放されたまま試合終了でした。
3.まとめ
山形の土俵に引き込まれてしまいました。それはデータも如実に表しています。(Football Labより)
ボール支配率は全ての時間で新潟が上回りました。相手を引き込んでからのカウンターに活路を見出していた新潟ですが、ボールを持たされた時にどうするかが大きな課題となります。幸いにも、後方でのビルドアップに関しての問題は少ないと思います。山形のハイプレスをうまくいなして逆展開できていました。
問題はその後、ゴール前を固められた時です。前半はボランチの位置が低すぎたためにライン間に入る人が少なく、ブロックの外で回すほかありませんでした。これではゴール前の人数も少なく、脅威とはなりません。70分以降の様に、リスクをかけてでも人数をかけることが求められると思います。また、人数をかけたその先、サイドでの崩しやライン間の選手の立ち位置についてより追求していかなければならないと思います。
レオナルド不在の叫ばれる試合でしたが、この試合については彼がいようと大きく変わらなかったのではと思います。彼の仕事は前線でのボールキープ、フィニッシュとそのひとつ前でチャンスに絡むところです。そこまでボールをうまく運べていたわけではないので、彼一人でどうにかできたわけではありません。彼もスーパーマンではないので、彼の力を最大限に引き出せるよう、チームとしてどう戦うかの意思統一が肝要です。前節徳島戦で見せた一体感を、ボールを持つ展開が多い中でも見せられるかが昇格戦線に残り続けるために求められます。
移籍市場は閉まりました。財政を考えれば、監督を変えるということもないでしょう。つまり、ここからチームに急激な変化というのは起きないということです。だからこそ、今の戦い方から課題を一つ一つ改善させ、勝ち点を一つでも多く拾い、積み上げていくしかないのです。残り15節。一歩ずつ、また一歩ずつ丁寧に、しかし勢いを持って進んでいきましょう。