J2第7節 vs水戸ホーリーホック やれてたかも委員会 2020レビュー

2020シーズン

 

試合を見返す、という行為は不思議なもので、リアルタイムで見た時と印象が違って見える場合が多い。

もちろんリアルタイム観戦は結末が最後まで分からない演繹的な見方であるのに対し、見返す際には結果を知った上での帰納的な見方になるのだから当然といえば当然。良い内容の中での悪い部分を、悪い中での良かったポイントを見つけることこそ「見返す」ことの面白さであり、マッチレビューの存在意義でもある。

大抵の場合、負け試合では慰めるように良かった点を挙げ、勝ち試合ではバッドポイントを挙げて気を引き締めるような論調になりがち。引き分けの場合はお好みで。

 

翻ってこの試合、筆者の目には最初「微妙」に映った。勝ったけどモヤっとした気分。レビューをどうしようかと思いつつもなんとなくやる気が出ず、すぐには見返さず電脳空間へダイブした…

ところがどっこい見返してみたところ悪くないぞと、思ったよりやれていたんじゃないかと感じられた。いつもの逆パターンだ。折角なので、そう感じた理由を局面ごとに丁寧に追っていきたいと思う。

 

というわけで、やれてたかも委員会スタート。

 

 

目次

1.マッチレビュー

スタメンはこちら。

新潟は前節から6人変更。この間まで別メニュー調整だったらしいシルビーニョが久々復帰。そしてこれまで時間限定での起用はあった新井の左SBがスタートから。イメージとしては松本戦に近い。

対する水戸は4-0勝利の町田戦を踏襲したメンバーから右SBを岸田→前嶋に変更。新潟のレジェンドAKB監督の凱旋試合であったが、新潟ユース出身の奥田はメンバー外で残念無念。

 

case 001 ハイラインハイプレス攻略

新潟の相手となる水戸は前節の山形同様、コンパクトな陣形を保ったままプレッシングをかけてくるチーム。地上戦にこだわらない新潟は序盤から長いボールを使う場面が多くなる。

新潟のビルドアップ時の陣形はおなじみの3バック変形。

  • 左SB新井→中に絞ってCBのように振る舞う
  • 右SB大本、左SH本間→大外の高い位置を取りSBの背後から抜け出しを狙う
  • 2トップ+右SHシルビーニョ→DFの裏を突く、DFラインの手前でパスを受ける

 

水戸は最終ラインをハーフウェーライン近くまで上げて積極的にプレスをかけるが、新潟のDFラインから放たれるパスはプレス網の頭上を悠々と越えていき、序盤から手を焼くことに。5分にはビッグスワンにエデルソンが降臨したが、あれはただの幻覚なので他クラブのスカウトの方はお引き取りください。

また、この試合ではボランチの秋山に対する監視が緩く、水戸FWのプレスバックサボりも散見されたため、彼が前向きで広く展開しチャンスとなるシーンも何度か見られた。

水戸としてはプレスがハマる場面以上にプレスをいなされる場面、ボールホルダーへのプレスがかからずふわっとする瞬間があり、そこから背後を突かれることとなった。しかし、CB細川のラインコントロール等でどうにか後ろで帳尻を合わせ、簡単に崩れはしなかった。

 

裏狙いを続けた新潟だが、背後を狙われ続けると相手は後ろに意識が向かってしまうもの。されば手前が空いてくる、ということで前半の半ばごろからDF裏だけでなく手前で受ける動きも増加。左SHの本間がDFラインの手前でボールを受けると、ペナルティエリア付近まで縦に運んでそこから得意の仕掛け。更にはボランチの秋山が前に出張する場面も増え、水戸守備陣を惑わす。

 

確かに雑なパスもあった(特に後半)。しかし狙う形から前進、相手の様子を見て変化を加えるなどで優位に進めていたのではないかと感じる。

というわけでこの局面については「やれてた」認定で。

 

case 002 孤立しちゃう問題

長いボールをメインに相手陣に侵入した新潟。しかし最近の試合同様アタッキングサードまで押し込むとうまくいかない。この試合でも同様に。

 

新潟が高い位置でボールを持つ際、水戸は中央を締めるためにサイドで持つ機会が多くなる。基本的に新潟がボールを持つ時、タッチライン際に2人以上が立つことはない。サイドに人数をかけすぎるとボールを奪われた際に中央の大きなスペースを与えやすくなり、これによるカウンターを恐れているからと考えられる。

しかし、これが攻撃の単調化にも繋がっている。

  • 前線のポジショニング

サイドの選手がボールを持った時、FWやSHはゴール前に早めに入る傾向が強い。しかし、ゴール前のスペースがなくなってしまうためにボールを届け、シュートを打つことの難易度が上がってしまっている。

また、これによりサイドの選手の選択肢がドリブル突破orクロスのみになってしまうのも問題。大本、本間ともにドリブルで抜くことのできる選手だが、孤立させすぎ感はある。少し手前に下りてきてパスコースを作ってやれば選択肢が広がるはずなのだが…

 

  • ボランチのサポート

今季の新潟はリスク管理の意識高め。ということでボランチはあまりペナルティエリア付近まで上がってこない。しかし、そのせいでパスの選択肢が減り、攻撃がどうしても単調な印象になってしまう。人数バランス的にもう少し上がってきてほしい気もするのだが、どうやらこれはチームの意図らしい。

 

ここで上げた問題については、これまでの試合でも見られた傾向であるため「あえて」このままにしているようにも感じられる。実際、現状でもそこそこチャンスは作れている。しかし、今後より強固な守備を誇るチームと対戦する際にはこの局面での工夫が必要となるはず。継続して見ていきたい。

結論、「やれてたとは言えない」

 

case 003 広いビルドアップに対するプレッシング

水戸は新潟と同様後ろからの繋ぎ、広く幅を取ってのビルドアップがベース。SBが大きく開き、CBやボランチからサイドの選手へ広く展開して新潟のコンパクトな陣形を揺さぶるというもの。AKB監督が大きな声で「シンプルに!」と何度も言っていたように、細々と繋ぐのではなくサイドに早く展開することが狙いだった模様。

これに対する新潟はコンパクトな4-4-2の陣形を保ちつつ、後ろの選手の状況が整えばプレスをかけていくスタイルで対抗。前節はポジショニングがごちゃごちゃになって簡単に前進を許す場面もあったが、今節はコンパクトさを保ち続けた。特にSHが中へ絞り、ボランチ経由でのサイドチェンジをさせない意識が高いと感じた。

ただ、サイドの選手がコンパクトに絞りすぎるあまり逆サイドが大きく空く場面はちらほら。特に新潟の右サイドは攻撃時にSBの大本が上がりSHのシルビーニョが中へ入るため、水戸の左SB外山が大きなスペースを得て、ドリブルで持ち上がることができていた。水戸は大本の攻め上がった背後を狙いどころとしてチャンスを作っていたが、新潟も最後は簡単にはやらせず。

新潟としてもう一つ厄介だったのが水戸のボランチコンビ。平野、山田の二人ともDFのプレッシャーを外し、サイドへ前へと繋ぐことのできる選手。新潟のボランチが対応する場面が多かったが、うかつに飛び込むと交わされる、少し自由を与えるとパスを通してくるという嫌らしい存在だった。

 

というわけで、水戸の意図するものがおおよそ表現されていたので「やれてたとは言えない」認定で。とはいえ主にシステム上生じてしまうスペースを使われてしまっただけなのでさほど問題ではない。本題は次のケース。

 

case 004 自陣守備

自陣守備が問題となってきた新潟。この試合では改善できたのか?について振り返る。

 

再三言われてきたのはバイタルエリアやボランチ前のスペースを使われがちなこと。ボランチが下がってDFラインに吸収されるようになる場面はこれまで何度も見られていた。しかし、この試合ではその回数が減ったように感じた。

そのカギを握ったのはやはりボランチのポジショニング。以前の試合に増して、この試合ではボランチがSHと同じくらいの高さを保てていた。ボランチが少し高めの位置取りをすることのメリット、デメリットは次の通り。

メリット

・中央のスペースを空けずに済む
・相手ボランチとの距離が近く、ボールが渡ってもすぐに寄せられる
・SHが抜かれた際もカバーしやすい

デメリット

・CBとの距離が離れ、CBのカバーをすることが難しくなる
・ポジショニングをこまめに調整しないとCBとの間のスペースが広がり、簡単に使われてしまう


ボランチが位置を下げた場合(これまでの試合)、中央のスペースが大きく空いて押し込まれやすくなってしまう(下図)。この試合では水戸にこの傾向が強かった。


実際、水戸はこのスペースを使われてミドルシュートを打たれている(再生直後のシーン)。

パスの直前の時点で見ると、ボランチがDFラインに完全に吸収されてしまっていることがわかる。

ボランチはこのポジションにいるのががどんな状況・戦術でも絶対良い、というわけではない。

しかし、ボランチが下がる意識の強すぎた新潟にとってはうまく働いた。実際、この試合の水戸のシュート数は6だが、枠内シュートは0、ブロックしたシュートは3。ゴールに簡単に近づけさせず、シュートの場面でも体を張れていたことがわかる。コンパクトに、ラインを上げて守る強気の姿勢がクリーンシートに繋がった。

 

というわけで、自陣守備については堂々の「やれてた」認定としたい。この守備を染み込ませていけば、不用意に失点を重ねることはなくなるはずだ。

 

 

2.試合結果

新潟 1-0 水戸

得点者 新潟 71′ 本間 至恩
得点者 水戸 

詳細なデータはJリーグ公式サイトFootball Labへ。

 

 

3.まとめ

結果、「やれてた」×2、「やれてたとは言えない」×2の引き分け。

ただ、これまでの大きな課題が解決されそう、という点でどちらかというとポジティブ寄り。監督もこの日の守備は高評価。試合後コメントから。

--チームの守備で、今日良かったと感じたのは?

ディフェンスラインを上げて、コンパクトにブロックを作って守備をし続けることが(今までできなかった課題だったので)改善された。1対1の局面でも勝つ場面が多く、その部分でも改善が見られた。

―アルベルト監督―

今まではズルズル下がる場面も多かったが、強気で前に出る姿勢が効いていたと感じる。松本戦もクリーンシートだったが、次の町田戦で3失点してしまった。これを継続することこそ大事だ。

 

最後にゲームコントロールについて。まずは島田のコメントから。

--今日、失点ゼロで終えられたことについて。

苦しいゲームでしたが、勝つことで自信もつく。本当は最後の10分、15分もゲームコントロールしてボールを握れたら一番良いけれど、勝ちながら自信をつけていけたら、もっとできることが増える。いまは苦しみながらも、みんなで勝ち続けていくことが大事だと思う。

― 20 島田 譲―

正直なところ、ゲームコントロールはまだまだ。松本戦はうまく締めたが、この試合は終盤に雑になって相手のペースに合わせてしまった。終了間際のFKも簡単に相手に渡してしまい、危うくシュートを打たれそうに。強かに勝ち点3を掴めるようにしていきたい。

 

次節はヴェルディ戦。今節の「やれてた」を自信とし、今年こそ鬼門撃破へ。

 

 

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