このツイートから始まった記事の後編、失点パターン分析です。
データ見てると面白いし色々調べてるとまた書きたいことが湧いてきてしまう。
とりあえずJ2全クラブの得点傾向分析のnote書くことに決めました。Football Labのデータ使ってやります。絶対楽しい。年内に出せるかなー— あるけん (@alken_alb) December 28, 2019
前編のJ2得点傾向分析2019はこちら⇩
※この記事は次のページのデータを基に書いています。
失点編
目次
3.5 再びおさらい
前編に続き簡単なおさらいとして2つのデータをご覧いただきます。前編読んだよ!という方は飛ばしても構いません。
1つ目はプレースタイル指標(いわゆる偏差値)です。各プレーをどれだけ狙い、実行できたかが分かるようになっています。緑背景が各項目上位3位まで、赤背景は下位3位までを表しています。
2つ目は攻撃回数。ここからは各チームの戦い方がよりくっきりと浮かび上がってきます。
もう一度簡単に解説。
・とにかくゴールへ早く向かおうとする(カウンター主体)
→攻守の切り替わりが多く発生する
→攻撃回数も被攻撃回数も増加・落ち着いてパスを繋いでゴールを目指す(ポゼッション主体)
→試合のテンポが落ち、攻守の切り替わりが少なくなる
→攻撃回数も被攻撃回数も減少
それでは失点分析・考察開始!
4.失点パターン
まずは失点数から。失点数は上位として扱います。緑背景がパターンごとの失点数上位3位、赤背景は下位3位までを表しています。
以降は得点編と同様にパターンごとの分析・考察です。見方は次の画像の通り。
PK
失点数の下位5チームほどはPKでの失点数が多めとなっています。守備が整備されていないチームは対応が中途半端になる場面が増え、ファールに繋がりやすくなるのでしょう。ただ、下位を除けば大半のチームが3~5失点を喫していることから、年間で多少PKによる失点があっても仕方ないと言えます。またPKを得意とするGKがいるか否かも大きなファクターとなります。
セットプレー直接
関連を見出すのが難しい項目です。PK同様ペナルティエリアの近くで安易にファウルを犯さないことが重要です。
セットプレーから
背の高いCBを複数人取り揃え、フアンマやシモビッチといったハイタワーも擁した大宮が最小に。山口はCB菊池・楠本、FW山下ら高身長選手が多く出場していることが数字の少なさに影響したのでしょう。ただ、同率2位の岐阜も含め少し気になる点があるので、クロス分析でまたこの2チームに触れます。
琉球や鹿児島は出場選手の平均身長が低めだったことが大きく影響したと考えられます。町田はセットプレーでの得点が激減した一方、失点は増加。2018年はセットプレーから6失点だったことを考えると、攻守においてセットプレーが足を引っ張る要因となっていました。
全体としては標準偏差の値が大きいことからもわかる通りばらつきが大きく、上位と下位でかなりの差ができています。また、総失点数との相関が小さく感じられる点は意外です。セットプレーを得意にしてしまえば総得点は増えやすい一方で、総失点はあまり変わらないのかもしれません。セットプレー時にマンツーマンで対応するか、ゾーンで対応するのかによって比較するとまた面白いデータとなりそうです。
クロス
クロス失点数を減少させる要因としては「クロスを上げさせない」、「クロスを上げられてもはじき返す」の2つが挙げられます。上位では横浜FCは被攻撃回数が少なく(5位)、2位徳島~5位タイの福岡までの5チームは3バックでゴール前の人数が多いため、これらの条件を満たしていると考えられます。
セットプレーからの失点が少なかった岐阜、山口はこちらでは最下位に。こうなった理由として、「クロスを弾き返せず簡単に失点→相手のCK数が減少」という可能性を考えました。相手CKの数が分かればよりはっきりと見えてくるかもしれません。町田や鹿児島はセットプレー同様弱さを見せてしまいました。
概観としてはセットプレーに次いで標準偏差が大きく、さらに総失点数が少ないほどクロス失点が少ない傾向があります。3バックのチームはこの失点が少なめであることを考えると、DFの枚数と選手の特徴を組み合わせることがクロスからの失点を減らすカギといえます。
スルーパス
水戸、金沢、岡山といったハードな守備を披露するチームと甲府、新潟など低く固いブロックを敷くチームが上位に。徳島は被攻撃回数が少なく、攻撃時からカウンターに対する備えができていることが少ない要因でしょう。
下位には鹿児島、琉球、京都といったボールを持ちたがるチームが多め。スルーパスからの失点を減らすためには「パスの出し手にプレッシャーをかける」、「DFラインの後ろのスペースをケアする意識を持つ」ことがカギとなるため、守備の規律を整えつつ、サボらずに守備をすることがこの失点を減らす上で重要です。
ショートパス
ショートパス失点数上位はリーグ順位の上位と対応しているのが面白い点です。また総失点の多い鹿児島は5位タイにランクインと意外な結果に。対戦相手が鹿児島の弱点であるクロスを重点的に狙い、ショートパスでの崩しを狙わなかったということも考えられます。
下位には琉球、岐阜、千葉、ヴェルディ、愛媛。一括りに言うことが難しいですが、相手をゴール前に侵入させてしまっていること、ゴール前で相手を捕まえきれないことがこの多さに絡んでいると思われます。
全体として総失点数との関連が見られます。得点編でも言った通りショートパスでの得点はゴール前での局面になるためプレーとしての再現性が低く、チームとしての守備意識に加えて個人のディフェンス能力も大きく影響すると考えられます。総失点数順位と並びが似ていることもあながち偶然ではないでしょう。
ロングパス
ロングパスの定義は「30m以上のパス」。それだけに全体として数は多くなく、分析するのが難しい項目です。ただ、下位チームは守備の規律ができていない印象のチームが多く感じられます。ボールと逆サイドの守備が曖昧になったポイントを突かれることが多いということかもしれません。
ドリブル
得点編ではドリブルを仕掛けられる選手がいること、そしてそれをチームとして活かすことをポイントとして挙げました。守備におけるポイントとしてはドリブラーに対してのディフェンス能力、そして抜かれた場合にカバーリングをする意識といったところでしょうか。
よって、個人ディフェンスの能力に長けた選手が多いチーム、守備時に個々の役割設定が明確になっているチームほど少なくなっていると考えられます。その意味で、総失点順位およびリーグ順位と似た並びになっているのは妥当であるように感じられます。
こぼれ球
得点編では分析が難しかった項目ですが、守備面から語る方が分かりやすいと思います。例えば、マンツーマンディフェンスとゾーンディフェンスの違いとして次のようなことがよく言われます。
・マンツーマンディフェンス
守備側の選手が攻撃側の選手についていく傾向が強い
→ゴール前でもスペースが空きやすい上、攻撃側も守備側もこぼれ球までの距離は同じ
→反応速度の勝負となり、得点される可能性が高まる・ゾーンディフェンス
守備側の選手はゴール前の危険なスペースを先回りして潰す意識が強い
→ゴール前に穴をなくし、バランスよく守れる陣形に
→どんなこぼれ球に対しても素早く反応できるため、得点されにくい
もちろんゾーンにもデメリットはあって、守備陣の間を突いて飛び込んできた選手には勢いで負けてしまいます。どちらのやり方にも良し悪しがあるので、選手の特性とチームの狙いを加味してバランスを取りながら使われています。
1位の新潟はゴール前ではゾーンの意識が強いチームでした。クロスに対して予めDFの配置を決めておき、危険なスペースを抑えるやり方です。この形が奏功してこぼれ球を押し込まれる場面は少なかったのですが、一方で先に配置したDFとDFの間にクロスを送り込まれて失点する場面は何度も見られました。まさにトレードオフの関係となっているのです。
一方最下位の金沢はゴール前でマンツーマン意識が強いチームの1つ。DFが相手選手にくっついて対応するためクロスから簡単に失点することはありませんが、その分こぼれ球への対応が不十分になってしまったと考えられます。
このように、こぼれ球からの失点はディフェンス面の特徴が表れやすい項目といえるでしょう。
その他
オウンゴール等上記以外の失点をまとめたもので、参考値として扱います。得点編と同様に分析不能です。
5.全体振り返り -失点編-
改めて全体を振り返りましょう。
緑と赤の分布で見てみると上位ほど緑が、下位ほど赤が多く見られ、上位はどの項目でも失点数を抑えられていることが分かります。得点に比べて総失点数と各パターンの失点数は比例しているように感じられます。
考えてみると、どのチームにも得点を決める「型」というものがあります。攻撃の場合は毎試合その型をベースに得点を狙いますが、守備では毎回異なる型を持つ相手に対応しなければなりません。つまり、失点は相手に依存するので、得点よりもチームごとの特徴が表れにくいのです。言い換えると、失点を減らすためには毎回変わる相手に対応できるような総合的なディフェンス能力の高さが求められるのです。
また、この順位表はリーグ順位とも重なって見えます。リーグ内でのチームの力を測るうえで失点数は1つの指標になると言えるでしょう。
6.まとめ
得失点順位をまとめたデータがこちら。
これを見ていただけるとわかる通り、得点を増やし、失点を減らすことは順位アップに直結します。「良い攻撃は良い守備を、良い守備は良い攻撃を生む」と言われる通り、どちらか一方だけ良いということはあまりないのです。
そんな中で特異点と言えるチームがいくつか。栃木は総得点21位ながら総失点11位でなんとか残留。琉球は総失点22位ながら総得点11位で14位。ともにリーグの中では総合力で劣る2チームですが、前者は失点を減らすこと、後者は得点を増やすことで生き残りました。
また新潟は総得点2位ながら総失点10位。レオナルドを中心とした戦いのハマった秋以降は爆発的な得点力と守備の安定が両立出来ましたが、それまでは手探りをしながらの戦いが多く、夏場は特に失点がかさんで順位も伸び悩みました。
残留をする上ではどちらか一方を磨くだけでも十分と言えますが、優勝、昇格戦線に生き残る上では得失点共に高いレベルを維持することが求められるというわけです。
最後に取り上げたいのは選手について。これまでパターンごとの得点を増やす、又は失点を減らす上で重要な役割を果たした選手を何人も挙げてきましたが、その多くが個人昇格を果たしているのです。チームの得点増、失点減に関わるほどの貢献をした選手はもれなくJ1に見つかってしまうのです。
新シーズンは彼ら個人昇格を果たした選手の活躍と、彼らを失ったチームがどのように選手を組み替えて得点を狙い、失点を減らすかという視点で見ると一層面白くなるはずです。
これにて2019シーズン得失点傾向分析終了です。2020シーズンはどのような結果が見られるでしょうか。正解は1年後!
おまけ
今回の分析で使ったエクセルデータです。使いたいという方のために置いておきます。