今季3敗目。負け試合を振り返ると、力の限りのプレーを出し切った末の惜しい負けがないというのは勝負強さの裏返しとも言える。しかし、この試合のようにミスや疲労で消化不良のまま敗れているイメージがある点は気がかり。じっくり反省する余裕すら与えてくれない今期の日程は恨めしくもあるが、戦うしかないので、切り替えてミッドウィーク、千葉へ乗り込む。
1.マッチレビュー
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中2日のこの試合に向け、新潟はスタメンをGKとCB以外の8人変更。清水からやってきた鄭大世は磐田戦での初先発に。シルビーニョとロメロがポジションチェンジを繰り返し、ロメロがトップ下のように構える場面もあった。
一方の磐田も8人変更。そして前節は試合を通して3-4-2-1を維持したのに対し、この日は4-4-2にも見える布陣に。ただ、攻撃時は3-4-2-1にも似ていたためマイナーチェンジと言える。途中出場も含め3人の元アルビ戦士(大井、山本(康)、大武)がビッグスワンのピッチに立つこととなった。
①磐田の対策に苦しむ新潟
両者ともにスペインの風を吹かせ、後ろから繋いでゲームをコントロールすることが信条。しかし、新潟は自陣で強くプレスをかけられると機能不全になる場合が多く、前節長崎戦に続いて今節もそれに苦しむことに。
磐田は新潟のGKがボールを待った時からマンツーマン気味にプレス。新潟のCHに対して磐田のCHが前に出てマンマークする場面も多くあり、後半になっても継続するなどかなり徹底していた。もちろん、その分最終ラインは高くなる。
磐田の連動した強い寄せに対し、新潟の選手はプレス回避技術的にも、リスク管理的にも無理はできないのでGKも含めてかなり低い位置で繋ぐことに。すると、スペースがないのでいつものようにCHの片方が下がって3バック化することはできず。すると、CBのサポートをするためにSBは低い位置を取らざるを得ず。SHも磐田の守備ブロック内で思うようにスペースを得られず使えず。結果、磐田のプレスがよりハマりやすい状況ができていた。
仕方がないので無理はせず、新潟は前線へと長いボールを入れて回避を試みる。鄭大世やシルビーニョ、ロメロら競り合いやフィジカルに強みのある選手が多く、彼らの献身によりうまく前進できる場面もあったが、クリーンな解決を得られたとは言い難く。
前進した先での狙いはSB裏のスペースとクロス。右SHのロメロとFWのシルビーニョはポジションチェンジしながら磐田左SBの背後のスペースへの飛び出しを続け、突破口を開けようとしていた。実際、新潟の得点はシルビーニョが右サイド奥へ抜けだしたところでファールを受け、FKを獲得したことから生まれており、一定の成果があった。
それ以上に狙っていたのがクロス。鄭大世、シルビーニョがいたことでいつも以上にクロスを上げる意識が高く、惜しいシーンは何度か作っていた。しかし、前半は特にビルドアップで苦労して全体を押し上げきれなかったためにSBが高い位置を取り切れず、クロスの本数自体は多くなかった。
こうして、新潟はフベロ監督による新潟対策に苦労しつつ、どうにかゴールへ迫ろうともがくような展開であった。
②ワイドvsコンパクト
磐田もボールを持った際は後ろから繋ぐ形。これに対し、新潟はコンパクトな陣形を優先しつつ上手くはめ込む場面もあった。
序盤、磐田はCHの上原がCBの間に落ちて3バック化してビルドアップ。SBが上がり、SHが絞るという新潟でもよく見る形だ。これに対し、新潟は磐田の左右CBがボールを持った際にスイッチを入れてボールを追い込み、意図的に奪う守備ができていた。
SH:SBへのコースを切りながら寄せる
FW:一人が中央へのコースを切り、一人はアンカーをマーク
CH&SB:ボールサイドのSHを連携して見る
磐田はビルドアップ時にロングボールよりも地上戦メインのため、こうなるとSHへのパスが増える。このボールに対し、新潟はSBとCHが連携して刈り取ることが何度かできていた。
しかし、上手く磐田が交わす場面もあり、新潟がこれ以外には前からプレスをかけて追い込む形がなかったことで磐田は前進が可能に。
コンパクトな陣形で守る新潟に対して、磐田はワイドな攻撃。右SB小川のみが高い位置を取る非対称な陣形で積極的にサイドチェンジを仕掛けてきた。特に右サイドを深くえぐるシーンが多かったが、これは磐田のSHやFWが新潟の左CB-SB間を抜けるランニングを見せたことで、新潟の左SB堀米は大外の磐田右SBに対応を後回しにせざるを得なかったためだ。
新潟としてはコンパクトな陣形を保ちたいが、この日もボールホルダーへの寄せが甘く、サイドチェンジを許してズルズルと下がってしまった。この日は攻撃時に前線のポジションチェンジが多かったこともあり、そこからの流れでブロックを組む際に選手の立ち位置が変わってしまい、それによる混乱もあるように見えた。
序盤は後方でのビルドアップに参加していた上原も、新潟が無理にプレッシャーをかけてこないと見るやDFラインに下りることをやめ、より前方での絡みを増やしていった。その結果生まれたのが先制点を導くクロスだった。質の高いボールだったが、新潟としてはもう一歩寄せたかった。
新潟のコンパクトな陣形を左右に揺さぶる狙いは長崎と同様で、これも新潟対策として意識的に狙っていたと考えられる。磐田は攻守に渡ってスカウティングの成果が感じられる戦いであった。
③明暗を分けた交代策
スコアがイーブンになった前半30分過ぎからは磐田のプレッシャーが弱まり、新潟のDFラインがセンターライン付近でボールを持つ場面も増え、全体を押し上げて意図するような攻撃ができるように。磐田のブロック内で左SH高木が受けて後ろに下げ、そこから右へと展開してクロス、という場面も。このような落ち着いた攻撃は後半開始後も何度かできるようになっており、パス回しのテンポも上がってきたように思われた。
ここで新潟は57分にファビオ、本間を投入。後半開始から投入していた右SB新井、CH福田も含めフレッシュの力でギアを上げにかかる。
一方の磐田は62分に3枚替え。山本康裕、ルキアン、藤川を投入。すると投入直後のプレーでGKのキャッチから一気のカウンター。フレッシュな3人が絡んで一気に右サイドを切り込み新潟のオウンゴールを誘発。さらに4分後にはスローインから藤川、ルキアンが絡んで一気に攻め込み中野がこの日2点目をゲット。途中出場の選手の勢いを活かした。
3選手が攻撃に勢いをもたらしたのと同様、守備でも貢献。元気な選手たちが前線からのプレスを蘇らせ、新潟は再びプレッシャーを感じるように。しかし、この時新潟が自分たちの時間にしきれなかった要因は自らにもあった。
ギアを上げようとした矢先に2点を失った新潟は72分に渡邉を投入して4-3-3気味にし、さらにギアを上げにかかったが、前線に放り込むのか後ろから攻撃を組み立てるのかが曖昧に。特に逆三角形気味の3トップが中央に集約してしまい、磐田の守備ブロックを横に広げることが難しくなってしまった。右はSB新井が固定砲台となってクロス千本ノック状態、左は堀米、本間、渡邉が絡んで仕掛けにかかるが、意図が合わない場面も多くゴールに迫り切れず。
ちぐはぐなまま磐田にボールを握り返す時間を与えてしまい、ボールを失った瞬間に素早く守備へと切り替えられない選手も多く、まとまりがないまま長い笛。3日前の新潟に感じられた「追いついてやる」という気迫、一体感を全く感じられぬまま敗退した。
2.試合結果
新潟 1-3 磐田
得点者 新潟 28′ マウロ
得点者 磐田 23′,67′ 中野 誠也、63′ オウンゴール
詳細なデータはJリーグ公式サイト、Football Labへ。
3.雑感
個人的に今季二度目の「見ている側がしんどい試合」だった。前のしんどい試合も中二日で迎えた岡山戦だったが、その試合は体力的なキツさが画面を通して伝わってきた。翻ってこの日の試合は「気力的なキツさ」を感じた。カメラに抜かれる選手の顔は険しい表情ばかり。相手の術中にはまった面があるにせよ、「今季もっともレベルの低いプレーを表現してしまった(アルベルト監督)」との言葉通り、自分たちで手放した試合だった。
象徴的だったのはトランジションの質の差。特に後半。磐田が試合を通して素早く切り替え、戻るべき場所に戻るのに対し、新潟はクロスがGKにキャッチされた後に戻るべく走り出す選手が少なかった。これは後半の開始直後のCK然り、2失点目を生んだGKのスロー然り。GKへのバックパスに3トップ全員がGKへプレッシャーに走る場面もあった。
このようにプレーの主語が「自分」だけになっている場面が時間を追うごとに増えたと感じた。チームの一員として、11分の1としてプレーしなければいけないのに、矢印が自分自身にしか向いていなければチームプレーは難しい。自分のやりたい、得意なことだけでなく、全体を見て「自分たち」にとって最適なプレーを選択する冷静さを失わずにプレーしていきたい。
- 一握りの強引さ
この日は久々に中島と荻原がメンバー外だったが、失って初めて重みがわかるような気がした。二人とも夏加入なのに、ここまで大きな存在になっていたとは…
彼らに共通するのは「強引さ」。前に進むのが難しい状況でもグイっと力強く突破できる力がある。もちろんこれがマイナスに働く場面もあるが、この日はそれが欲しくなった。
例えば荻原ならサイドでスペースを得れば力強く前へと加速し、それを見れば相手は守備ラインを下げざるを得ない。これにより新潟のDFラインが押し上げるスペースができ、全体を押し上げた攻撃ができるようになる。また中島なら狭いスペースでも強引にターンして前を向くことができる。これを見た相手のCHが寄せを早くすれば、そのCHが動いた分のスペースが空く。そこを他の選手が使えばチャンスとなるかもしれない。こうしたプレーが欲しいと感じた。
強引さが欲しかった場面は組織としてもある。例えばビルドアップの場面で、新潟GK&CBvs磐田FWで3対2の状況が作れる。リスクを承知で新潟SBが強引に高い位置を取れば、磐田の陣形を押し下げさせることもできたかもしれない。難しいところではあるが、一度思い切ってやってみてほしいとも思った。
もちろん選手ごとに向き不向きがあるし、たらればの話やいなかった選手のことを引き合いに出してあげつらうことはアンフェアかもしれない。ただ、この日は特に各駅停車のパスや放り込むようなクロスが多く、ボールを運んで相手の出方を窺ったり敢えてテンポを落としたりするプレーが少なく見えた。全体のバランスを見て「敢えて強引に行く」というスパイスが欲しいと感じた。そのあたりはメンバー選考も含めてチームとしてバランスを取りながら進めてほしいところ。
しんどい試合があってもすぐにまた次の試合がやってくる。対策も進んで難しい戦いになってきたが、これまで新潟は「相手の出方を見つつ自分たちが主体となってゲームを進める」やり方を目指してやってきたはず。進むべき道を見誤ることのないようチーム全体で共有し、再び一体となって戦う姿を見たい。