天皇杯も含めて今季3度目のミッドウィークマッチ。そのうち2つがこの2チームの対戦。
よって東京在住のアルビサポ、新潟在住のゼルビアサポ(いるのか?)はいじめられています。それでも1200人も駆けつけるアルビサポは狂ってる(誉め言葉)。翌日も仕事があるサポのためにも、平日の試合は勝ってほしいと画面越しにいつも思うのであります
1.試合結果
新潟 3-3 町田
得点者 新潟 39′ レオナルド 45+2′ 大武峻 84′ 矢野貴章
町田 53′ 戸高弘貴 64′ ロメロ フランク 75′ 中島裕希
詳細なデータはJリーグ公式サイト、Football Labへ。
ハイライト動画もどうぞ。
2.マッチレビュー紹介
たけぽんたんさん↓https://note.mu/takeshima1110/n/n12d4e0e4615f
町田分析の記事です。マッチレビューではないですが面白いですよ↓http://vegavv.blog.jp/archives/18603571.html
色々な人のマッチレビューを見てみたいです。夏休みに入ったそこの大学生諸君!暇じゃないですか?レッツトライ!
(他の方のマッチレビューを見つけた方がいれば、ご一報くださると嬉しいです!)
3.マッチレビュー
スタメンはこちら。タフな気候の中での連戦も、なぜか4-0で勝てた前節と変わらぬスタメンの新潟。
一方の町田は岡田優希とジョン チュングンがスタメン入り。それに加えて前節からのポジション変更も多くあり、4連敗からの脱出へ手を打ってきました。
①町田の圧縮突撃
町田はご存知の通りコンパクトに陣形を圧縮して局所的数的優位を作り出し、そこにボールを放り込んでわちゃわちゃ攻撃。ボールを奪われたら選手の密度を生かして強烈にプレスをかけて奪い返しに行く、J2屈指のストロングスタイル。試合前に相馬監督が「相手に合わせないように戦う」とコメントした通り、我が道を突き進みます。
試合開始からコンパクトに圧力をかける町田。攻撃時にポイントとなっていたのが2ボランチのポジショニング。森村がアンカー然としてディフェンスラインの前に陣取る一方、ロメロはガンガン前線へ走り込み、トップ下のように、時には3トップと見紛うばかりに積極的に上がります。
この時よく狙っていたのがペナルティエリア角。2トップの富樫とジョン チュングンは頻繁にサイドに流れながら、このスペースを狙う姿勢を見せます。また、彼らは共に体の強さを生かしてキープやターンをすることでタメを作り、味方が走り込む時間も作ることで、厚みのある攻撃を作り出していました。
これに対して新潟はワイドの選手も含めてバイタルエリアを狭めながらコンパクトなブロックを形成して対応。とはいえ町田の数的優位の前にパスコースを消しきれず、前進を許す場面もありますが、カウエがDFラインに下りるなどしてゴール前はしっかり固め、簡単にはシュートを打たせない。
②町田の弱点を突く新潟のロングボール大作戦
己の戦いを貫く町田に対し、新潟も割り切った攻撃を見せます。ポジティブトランジションに移るとすぐに前線へロングフィード。町田の局所密集を避け、ハイラインの裏を突きにかかります。特に逆サイドDF裏へのボールを出す意識が高く、右SBの直人からは何度も何度もロングフィードが繰り出されました。
この攻撃に町田は前半の間ずっと苦しむことになります。というのも、新潟ボールに変わると間髪入れずにロングボールが放り込まれるため、前線の選手のベクトルが切り替わる間もなく守備に移行し、前後が分断されるような形になるからです。新潟のロングボール攻撃は、直接前線の選手に収まる場面もありましたが、町田のDFラインが跳ね返したボールを拾って再び攻める形が多くありました。
この時、DFは下がりながらの対応となるために大きく跳ね返すことができません。このボールはアンカーに位置する森村の周辺にこぼれますが、町田のDFライン手前に広範なスペースがあるため、森村と新潟の2列目3人を中心とした争いとなるわけです。こうして町田の数的優位を無効化し、さらにウィークポイントで局地的数的優位を利用した新潟は、前線の質的優位も活かしてチャンスを作り出します。
まさにこのロングボール攻撃が結実したのが39分の1点目。下がりながらの対応でDFがミスしたところをしっかり突きました。最後はさすがのレオナルド。J3得点王は伊達じゃありません。顔の迫力がないのに点を取りまくるあたり、フィルミーノやジェズスっぽさがありますね。この3トップだと顔は怖くないけど恐ろしい… ただこの3トップが機能するかどうかは知らん。
新潟は更に前半アディショナルタイムにCKから大武がドンピシャヘッドで加点。2-0で折り返し。両者はっきりした戦いでトランジションゲームに持ち込んだものの、町田のウィークポイントを上手く突いた新潟が優勢な印象でした。
③町田の修正、それによる攻勢
後半頭から町田は2枚替え。戸高と、不動のイケメンかつエースの中島を投入しました。これにより攻撃時の陣形に少し変化が生まれます。
戸高は岡田に比べ中央へ入る意識が強く、SBが捕まえにくいポジション取りをします。この時空いたスペースに中島が入ってきたり、右SBの佐野がオーバーラップを仕掛けたりします。中島には大武がマンマーク気味でついていくため、CBのところにカウエが落ち、その結果新潟のバイタルにはサチローただ一人。こぼれ球回収率が下がってしまいます。
これにより、町田は前半よりも左サイド中心に押し込むことに成功し、グイグイ圧をかけていきます。これより、新潟はボール奪取地点が前半よりも後退。さらに密度上昇により町田のファーストプレスのタイミングが早くなり、前半のように大きく蹴り出すことができない状況が続きます。さらにはボランチが下がり気味となったことで前線4枚のサポートができなくなり、前線に蹴れども攻撃につながらない時間帯が続きます。
町田が反撃の狼煙を上げた1点目は、まさにバイタルに空いたスペースに落ちたこぼれ球から生まれました。戸高のゴラッソでさらに町田は勢いを増し、新潟はそれをまともに受けることに。そして64分に同点弾。狙い続けたペナ角に侵入したロメロがニアにぶち込みました。
そして逆転の3点目は、後半にギアを上げた右SB佐野から生まれます。戸高が中途半端なポジションを取ることで新潟の左サイドのマークに迷いを生じさせ、フリーとなった佐野のクロスからわちゃわちゃして最後は中島。大武がコケてしまったことも一因ではありますが、同じ形で攻められていたのに対応を改善できなかった左サイドの責任は大きいでしょう。左サイドからの攻撃を修正し、狙った形から3点を奪った町田は素晴らしかったです。
愛媛戦よろしく2-0から逆転された新潟ですが、逆転後に少しだけ圧力の下がった町田を前にようやく敵陣へ入れるようになりました。 ここで少し違いを見せたのは、新太に代わって左ワイドに入った至恩。相手のDFとMFの間、第3レイヤーに入ってボールを受け、タメを作って全体の押し上げに貢献。そして町田のコンパクトな陣形を大武のロングフィードによって揺さぶりにかかります。
ようやく息を吹き返した新潟は84分にまたもコーナーから貴章のドンピシャヘッド。この試合を通して町田はCKで先にさわられていて、またしても注意しなくてはいけない選手にやられてしまいました。
その後は両者勝ち点3への思いを見せるもののドローで終了。無風で蒸し暑い中でのトランジションゲームに決着はつきませんでした。
最後にちょこっとデータで振り返り。
ご覧の通りのパス成功率の低さ。前半の新潟のパス成功率は48%と、かなり割り切った戦いをしていたことが分かります。Football Labのデータによれば、アクチュアルプレーイングタイム(ピッチ内で実際にプレーされた時間)は43分1秒と、この試合の展開を如実に表していました。
4.まとめ
町田は自分たちのやり方を貫いている分、この試合で得た改善点は明確でしょう。追いつかれたとはいえ、後半の修正とそこからの得点は見事で、ポジティブな要素が多いように思います。
翻っての新潟。これまでの試合での反省点を生かせていないように見えても仕方ありません。2-0から逆転された点では愛媛戦と同じ。リードしているときに主導権を相手に渡してゴールチャンスを何度も作られてしまう点では前節琉球戦と同じ。ゲーム運びがなかなか向上していかないことが不安定な成績につながっているのは間違いありません。
試合後のコメントで吉永監督はコンディション面の影響を挙げていましたが、トランジション勝負を仕掛けてくる町田に対し、90分間こちらも応戦するつもりだったなら疑問を持たざるを得ません。泰基の負傷交代によりプラン変更を余儀なくされたのは事実ですが、後半の早い段階に一度全体を押し上げる展開を入れられるとよかったのではないかと思います。簡単に蹴るのではなく、繋ぐ姿勢も見せることで、さらに裏へのボールが活きてくるので、3失点後のような展開をもっと早く出せていたら…と思ってしまいます。自分たちの強みを活かすべく最初のプランを貫くのも重要ですが、状況を見て変化を加えることも大事だと、町田を見ていて感じました。
もう一言。日本、というかJリーグではよく「2-0は危険なスコア」と言われますが、これは危険なスコアなのではなく、単に追い付かれるチームが強くないからであり、日本のチームが2-0でリードしているのにオープンな展開にしがちだからだと思っています。サッカーの試合における2点差はとても大きなものですから、もっと大事にしていかなければなりません。
まだまだ力強さもしたたかさも足りないこのチームではありますが、最後にもぎ取った勝ち点1を糧に、8月の上位対戦シリーズで昇格レースに食らいつく姿勢を見せ続けてくれると期待しています。