今回は書き上げるのに時間がかかってしまったので、温めておいた前置きはシュレッダーにかけておきました。前置きファンの皆さんすみません!(いないはず) 次回に乞うご期待(しないでJ2)!
今回、いつもは使わない用語も使います。「カバーシャドウ」というやつです。簡単に言えば「パスコース上に立つことで相手のパスの選択肢を削る手法」です。こちらを読めば詳しくわかるかと⇩
愛媛が3バックなのでHV(ハルプフェアタイディガー)も今回使えるんですが、自分はHVが好みでないので呼びません。「左右のCB」で。
目次
1.試合結果
愛媛 0-1 新潟
得点者 愛媛
新潟 42′ 本間 至恩
詳細なデータはJリーグ公式サイト、Football Labへ。
ハイライト動画もどうぞ。
2.マッチレビュー
スタメンはこちら。
愛媛は山瀬に代わり川村がJ初出場にして初先発。さらに出場停止等で2試合メンバー外だった長沼が復帰。前野、有田、河原となにかと新潟に縁のある選手の多いオレンジ同盟軍です。
一方の新潟は鹿児島戦と同じスタメン。史哉が先発でも違和感がなくなっていくのが嬉しいのであります。高卒ルーキーの秋山は初のベンチ入り。
①3バックとサイドを巡る攻防
新潟は代々3バックの相手を苦手としてきたわけですが、最近は対戦成績が良くなってきた気がします。たぶん気のせいじゃないです。そしてその理由はたぶん4-4ブロック亀の子作戦な気がしなくもないです。まあ勝てるなら良いや(思考放棄)
(Football Labより)
愛媛はGKも含めてバックラインから繋いでいくチームです。そして新潟は4-2-3-1でFW脇にスペースがあるため、左右のCBがビルドアップにおいて大きな役割を担います。
新潟は左右のCBがボールを持った際に左右で異なるアプローチを採用し、特に試合序盤はミドルサードからプレスをかけてボールを奪い、カウンターを仕掛ける狙いがはっきりと見られました。
まずは新潟の左サイドの守備。愛媛の右CB茂木がボールを持った際、左SHの至恩は少し外に膨らみつつ間合いを詰めます。愛媛の右WB長沼への大外のパスコースをカバーシャドウでうまく消しながらボールホルダーに圧力をかけるのです。
この時、新潟の各選手の動きの意図は以下の通り。
・FWがCBへのパスコース切る
・トップ下がボランチをケア
・ボランチはシャドーを気にしつつブロックの中へのボールを遮断
・左SBは右WB、右シャドーどちらにも対応できる位置
このように、外を切りながらプレスをかけ、他の選手も連動してパスコースを消すことで相手が困るような状況を作り出せていました。左サイドからの前進は容易に許さず、うまくハマっていたと言えます。
そうすると愛媛は左CBを中心とした攻撃で活路を見出そうとします。それに対する新潟の右サイドの守備は次の通り。右SH新太は内寄りに立ち、中へのパスコースを切って外へ誘導しようとする狙いがはっきり見られました。しかし、左サイドに比べうまくいっている印象はありませんでした。なぜ?
この場合の新潟の各選手の動きは以下の通り。
・CFがCBへのパスコース切る(左と同じ)
・トップ下がボランチをケア(左と同じ)
・ボランチはシャドーor上がってくるボランチを見る
・右SBは左WBと左シャドーの中間ポジションでどちらを見るか判断
大外へのパスコースが開通している。しかし右SBが左WBに寄りすぎるとCBとの間のチャンネルをシャドーに走り込まれるという嫌な状況です。また、左シャドーが動いてパスコースを生み出せたので、パスコースを消せたとは言い難いところでした。
この状況から大外の左WBにパスが渡った場合が次の図。
この時2つの問題が発生。
◯SBの裏やチャンネルへの動きに誰がついていく?
◯誰が左WBに寄せるべき?
ここでの判断がこの試合のキーポイントとも言えました。実際に愛媛は何度か左サイド深くまで侵入してからのクロスで決定機を2度ほど迎えました。新潟の右サイドには史哉、サチロー、マイケルと守備時の判断に良さがある選手が揃っているわけですが、それでも毎回完璧な判断を下すのは難しいでしょう。
新潟の右サイドの守備の意図はおそらくビルドアップの中心となる左CB前野のタテパスを警戒し、中は使わせたくなかったからだと考えられます。大外に通されてもゴールから離れるので許容範囲だったのでしょうが、それでもチャンスを作られてしまったので、右サイドの守備はうまくいかなかったと言えるでしょう。
このように左右で異なるやり方を採用したわけですが、愛媛の繋ぎも上手く、狙い通り奪い切れたとは言い切れず。前線のプレスに後方が連動せず、疑似カウンター気味になった場面もあってひやりとしました。前半は愛媛がボールを持つ時間が多いまま経過。
②シンプルに、的確に
対して新潟の攻撃のターン。いつもなら善朗が中心となるのですが、この日の攻撃の中心はCBコンビでした。新潟の攻撃時の陣形は以下の通り。
・至恩と史哉が高い位置を取って幅取り
→両WB押し上げられず
→CBもラインを上げられない・前方5枚が前への意識強め
→間延びして5バック前にスペース・FWがボランチを見る
→CBがフリー
こうして得たスペース等を有効活用していく新潟。CBからロングフィードで裏を狙い、こぼれ球を回収するというシンプルな戦法に。しかし愛媛にとっては効果てきめん。この形を何度も狙ってチャンスを作り出していました。
その中で光っていたのは大武のフィード。少し低めのスーッと伸びるようなボールで、右へ左へ展開しまくり、精度も上々でした。元々の良さではあるのですが、この試合では愛媛が自由を与えてくれたことにより、いきいきと前線にボールを供給していました。これは愛媛にとっては予想外だったんですかね。知りたいところです。
そしてもう一人の役者が至恩。大武からのフィードをピタリとトラップし、左からガンガン切り込んでいきました。新潟の選手は至恩がボールを持つとあまり近くでサポートはせず、1対1の状況を意図的に作り出しているように見えました。こうして何度も仕掛けた結果がこのゴラッソにつながります。
https://twitter.com/J_League/status/1183363473255751681?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1183363473255751681&ref_url=https%3A%2F%2Fnote.com%2Falkene_alb%2Fn%2Fn103417c1d441
大武のフィード、至恩のトラップ、仕掛け、シュートまでの流れ、シュートの弾道。ビューティフル。これで完全に見つかってしまいましたね。見つかるのは時間の問題だったわけですが。
というわけで互いに狙いを出した前半をリードして終えた新潟。しかし前回対戦時に後半3得点で試合をひっくり返したのが愛媛。黙っているわけはありませんでした。
③収束させる
後半から愛媛はCBにもプレッシャーをかけるように。これによりCB固定砲台作戦は終わりを告げます。もちろんCBからのフィードは引き続き狙っていましたが、やはり本数は減少。これにより新潟が押し上げる場面が減っていきます。
こうなれば愛媛のターンが増加。愛媛は左右のCBが外に大きく張り出してボールを持つようになります。特に右CB茂木のオーバーラップが増加。外からクロスを上げたり、時にはペナルティエリアに侵入したりしてゴールも狙いました。
これに対して新潟は先制したこともあり、少しラインを下げて対応。これにより裏のスペースを消し、前半で問題となっていた部分の負担を軽くします。また、左WB下川に対して右SHの新太が対応する場面を増やすことで、右SB史哉がチャンネルランを狙うシャドーの対応によりパワーを割けるように。
ブロックが堅くなったことでチャンスの作りにくくなった愛媛。ブロックの外での繋ぎに終始し、たまらず神谷が下がって受ける場面もちらほら。山瀬、丹羽、有田と攻撃的な選手を投入するもなかなか状況を変えられず。
ボールを奪えば手薄になった愛媛守備陣にカウンターを仕掛ける新潟。この試合でシルビーニョや後ろ向きのボールめっちゃトラップするレオナルドとともに個の力を見せたのが新太。ボールを持つと力強く前進し、カウンターの旗手となりました。守備の献身性も高く、この試合は珍しくフル出場。成長を感じられました。
ゴール付近まで持ち込まれても最後ははじき返すいつもの形に収束させた新潟がこのまま勝利を収めました。
3.おわりに
この試合で目を見張る活躍を見せた大武の試合後コメントから。
結果的には勝てたけど、ゲームプランとしてはもっと自分たちの時間を作りたかった。ウチの前からの守備があまりハマっていなかったのでこういう展開になってしまった。それはそれでしっかり割り切って耐えるというところをチームとして共有でき、90分間やり抜けたことは良かった。
--前半はあまり守備がハマっていなかったが、どう修正した?
大きく変えることはなかったけど、個人の対応やパスコースの切り方などを意識していた。後半になって深い位置からクロスを上げられなくなった。
右サイドのところでうまくいっていなかった部分を修正できた点はやはり良かったと思います。そして今のチームには下がって守り切るという割り切りができる。これは間違いなく強みです。
だからこそ先制点が重要となるわけです。早い時間でリードすることで自分たちの形に持ち込みやすくなる。逆にリードされて前に出なければいけない状況になると怖いですね… ただ、今のチームはいい状態ですし、それを跳ね返す強さもあるのではないかと思います。
次節の福岡もおそらく3バック。この戦いで得た収穫と課題を次なるアウェイの地で生かすことができれば、再び3を積み上げられるでしょう。いざ4連勝へ!