苦手と向き合いながら |J2第15節 vsアビスパ福岡 2020レビュー

2020シーズン

 

昨年2タテを食らった福岡に勝利。去年のアディショナルタイムはゴール裏で決めきれ!ボールパーソン遅いぞ!と叫んでいたわけですが、今年はDAZNで守り抜く姿を見守りながらタイムアップを迎えることに。去年悲しみに暮れ、ぼやきながらもつ鍋やラーメンを食べたことは無駄ではなかった…

そうは思いつつも、やはり勝利を祝う博多メシを食べたかったと今年は別のことでぼやいているのであります。アウェイ遠征を愛する民にとって常に忍耐の求められる今シーズン、見に行けない分の手土産としてもっともっとアウェイでの勝利も欲しい、そう感じるアウェイ2勝目でありました。

 

 

目次

1.マッチレビュー

メンバーはこちら。

福岡はスタメン1人変更。左SHを菊池→石津に代え、レンタル加入の松本は2戦連続先発。前節5試合ぶりの勝利を挙げ、連勝で復調の兆しを掴みたいところ。

新潟は3人変更。ファビオがヴェルディ戦以来ちょうど1か月ぶりにピッチに戻ってきた。加入2戦目の福田は初先発。レンタル3人衆の馴染みが早すぎる。こちらも連勝で上位追撃態勢に入りたい。

 

①苦手なスタイルと背番号9の献身

平均ボール支配率がリーグ4位の新潟と18位の福岡。序盤はその数字通り新潟が持ち福岡がプレスをかける展開に。

 

今季の新潟は4-4-2で前から強くプレッシングを仕掛ける相手に苦戦(ex. 栃木、岡山)。この日の福岡も同様にボールと逆サイドのSBを捨てるような形でマンツーマン気味にコースを消し、新潟に圧をかけていく。

これに対する新潟の狙いも前の2試合同様。SBは大外に開き、SHがIHのような振る舞い。GK+DFで繋いで相手を前に引き寄せ、相手DF-MF間が空いたところに長いボールを送り込む形。あくまでベースは変えずに行く。

 

やはり苦戦はしたものの、前2試合と違うのはファビオがいること。彼に前線のターゲット役になってもらい、ボールキープで味方が上がる時間を稼ぎプレス回避&全体の押し上げを図った。

福岡のCBコンビの篠原と上島の読みと体の張った対応に阻まれるシーンもあり、ファビオも本調子とまではいかないようで、抑え込まれ気味ではあった。

 

しかし、彼が体を張ってキープし、DFの背後を狙い続けたことで福岡の陣形をコンパクトに保たせなかった点は見逃せない。シュートは1本にとどまるも、前線で時間を作って味方に繋げ、カウンターを成立させるなど貢献度はやはり高かった。頼もしい男の帰還により、チームはより前を向けるようになった。

 

 

②第3の男がもたらすアグレッシブスタイル

この日の新潟でファビオ同様存在感を放ったのが中盤のトライアングル。SHの本間と中島、そしてこの日初先発の福田を合わせた3人が新たな関係性を見せる。

 

中島、本間は攻撃時には内側に入ってIHのような働き。中島が前への推進力を活かす一方で、本間は前を向いての仕掛けだけでなく自陣でもボールを持ち、敢えて時間を使って後ろへ下げるプレーも。こうすることで無用なテンポアップを避け、チーム全体として押し上げる時間を創出。

そして福田。ビルドアップ時にはCB脇に下りてサポートすることもあるが、基本は中央にポジショニング。とはいえ秋山のように中央でコントロール役を担うのではなく、持ち前の運動量を活かし、積極的に前にも顔を出していく。

 

こうして中島、本間と同じような高さでプレーすることで福岡の2CHに対して数的優位を形成。福岡のCHが食いついた背後のスペースにもう一人が入ってボールを受けることでブロックの破壊を目論んでいた。SHの中央への絞りが甘い場面もあり、このエリアを狙い所としていたと考えられる。

この狙いが結果に結びついたのが先制点のシーン。このシーンでは福田に田邉がついていき、その背後のスペースで受けた本間がフェイクを入れつつ持ち運んで一気にFWとMFの2ラインを突破。そしてドリブルでCBを釘付けにしたところで渡邉が背後を突いた。ビルドアップからフィニッシュまで流れるような攻撃。派手さはなくとも、今季屈指の「チームで取った」ゴールであった。

https://twitter.com/J_League/status/1299693932268236805?s=20

 

福田がもたらしたダイナミズムが攻撃においてプラスに働いていたことは間違いない。ただ、その弊害も。いつもならピッチ中央にCHが構えているが、福田がペナルティエリア付近まで動き回ることでスペースが空きやすくなってしまった。福岡の出足の速さもあり、ボールを奪われてすぐにここを使われることで何度かピンチになりかけた。しかし体を張った対応で最後は守り切る。

 

中島の交代で62分にこのトライアングルは解散となったが、京都戦の秋山-本間-中島のトライアングルとは異なる関係性が一つのオプションとして目途が立ったことは間違いなく収穫だった。

 

③福岡の広い攻めと手詰まり感

後半になるにつれ攻め込む場面の増えていった福岡。アタッキングサードへ侵入する場面は何度となく作っていった。

 

福岡はボールを奪うとまずはダイレクトに前進。GKセランテスも無理には繋がず、FWのフアンマへ長いボールを送る。188cmのフアンマは173cmの新潟右SB新井を狙って競ることでミスマッチを起こし、ここを前進の糸口としていた。スピーディーに攻めきれる場面では遠野、石津、増山の仕掛けからフィニッシュへ。素早く攻められない際は大きく幅を使った攻撃に移行する。

 

新潟はピッチ中央でコンパクトな陣形を保ち、プレスでサイドに誘導しつつ相手の選択肢を消すことでボールを奪う守備がベース。これに対して福岡は前線4枚が新潟のDF-MF間に入ることで新潟にコンパクトな陣形を取らせつつ、空いた大外にSBを上がらせる。このSBに対して松本、田辺の両ボランチに加えCB上島がボールを供給した。

新潟SHが福岡SBをケアしようとサイド寄りにポジショニングすると、松本や上島は中を通す。中をやすやすと使われたくない新潟はコンパクトなブロックを重視して下がらざるを得ず。というわけでこの日は新潟の奪う守備は不発に。

 

敵陣に侵入した福岡はSBを起点に攻めにかかる。SBからのアーリークロス、ライン間のSHとのワンツーでの侵入、SBとSHのポジションチェンジなど手を替え品を替えペナルティエリアへと向かう。しかし、新潟のコンパクトなブロックはゴール前でも集中力高く対応。福岡のシュートはなかなか枠に飛ばず。

福岡は失点直後〜60分過ぎまで新潟以上にボールを握るが、攻めきれぬまま。そして新潟の一手によって流れが変わる。

 

新潟は61分に右SHを中島に代えてロメロを投入。ファビオが担っていたターゲット役を分散させた上で、ファビオが競った後のセカンドボール回収役に。更には相手を背負いながら、シャツを掴まれながらの強引な前進により全体を押し上げる時間を作り、自陣に籠りきりになることを防いだ。前節琉球戦の反省が生かされていることが伺える采配であった。

 

最終盤には再び福岡が攻める展開が続くも、ロメロの投入で一旦落ち着く時間を得たことで体力をセーブし、最後までハードワークを続けた新潟。今季4度目のウノゼロで初の連勝を掴んだ。

 

 

2.試合結果

福岡 0-1 新潟

得点者 福岡 
得点者 新潟 50′ 渡邉 新太

詳細なデータはJリーグ公式サイトFootball Labへ。

 

 

3.まとめ

連勝という点だけでなく、前からのプレスをかけてくる苦手なやり方に対して辛抱強く戦えた点でも大きな一勝だった。途中相手に主導権を握られながらも、交代によって一度ペースを取り戻した点も大きかった。様々な点で次への弾みとなる試合となった。

 

  • ターゲットの存在と鄭大世

栃木、岡山との戦いよりも間違いなくチャンスを多く作ることができていた。これは福岡のプレス強度が2チームよりは低いことも影響しているが、やはりファビオの存在は欠かせない。監督の試合後コメントから。

--ファビオが復活したことで、攻撃の幅は広がったか。

当然、攻撃の奥行きが加わりました。そしてファビオが攻撃に奥行きを提供することによって、ギャップのスペースが空きます。それで至恩や中島 元彦のような才能あふれる選手がプレーしやすくなったと思います。今後は鄭 大世が加わり、また前線に良い風が吹き、攻撃はより良くなることが期待されます。

―アルベルト監督―

今季の新潟は前から強くプレスをかけられた際、無理にショートパスを繋ぐことはなく、前線のターゲットに長いボールを蹴る場面が多い。就任1年目、過密日程ということもあり、徳島ほどに洗練されたビルドアップはできないと割り切っていると考えられる。だからこそファビオのようなターゲット役が重要となっているが、同じ役割を務めあげられる選手がいない状態だった。

そこへ鄭大世の加入。彼にはゴール前での仕事はもちろん、ターゲットとしての役割も期待されていると考えられる。フィットすればチームの大きな助けになること間違いなし。更なる連戦へ向け、今後非常に楽しみなポイントだ。

 

次は首位長崎との一戦。9月はこのほかに北九州、徳島、磐田と上位陣との6ポイントマッチばかり。1戦1戦が決戦となるわけだが、まずは首位叩きで弾みをつけていきたい。

 

 

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