J2第38節 vs京都サンガF.C. それぞれの立ち位置

毎回この対戦は「名古屋同窓会」と化すわけですが、この試合でも36人のメンバー入り選手中7人が元グランパス。選手が目まぐるしく入れ替わる名古屋の現状を見るに、この7人を集めた方が名古屋っぽさを感じるような気もしたりしなかったり…

まあ新潟は毎シーズンのように選手が大きく入れ替わるので、新潟っぽさってなんだ?という思いもあるわけですが、そんなこと考えていたらアルビサポは務まらないのでほっといて応援しましょう。勝つしかないので。

 

 

目次

1.試合結果

新潟 3-1 京都
得点者 新潟 31′ シルビーニョ 58′, 69′ レオナルド
京都 81′ 一美 和成

詳細なデータはJリーグ公式サイトFootball Labへ。
ハイライト動画もどうぞ。

 

 

2.マッチレビュー

スタメンはこちら。

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新潟は前節から1人の変更。高卒ルーキーの秋山が初スタメン。前節後半からの出場で能力の高さを示した18歳が上位相手にゲームメイクの役割を担うことに。

京都は変更1人。前節珍しくベンチスタートとなった庄司がスタメン復帰。前節アンカーのレナン モッタはIHに。前節横浜FCを相手に快勝したメンバーを主体に久々の連勝を狙う。

 

①わかっているなら…

中田一三監督の下、様々な優位性を保ちつつパスを繋ぎ、主導権を握るスタイルを確立してきた京都。これまでボールを支配する相手に対して前からプレスをかけずに引いてブロックを敷いてきた新潟ですが、この日は「やり方が分かっているなら」ということで前線からのプレスも敢行。GKから繋いでくる京都と真っ向から対することに。

京都はゴールキック時に両CBをペナルティエリア内に入れ、GKから繋ぎます。この時、京都が一定の布陣を敷くのに合わせて新潟もプレスをかけるための陣形に。ここでの大きなポイントは2つ。

・相手FWに対しCBを1人残す分前線は1人不足
→前線2人がポジショニング調整してCB+アンカーの3枚をケア

・4-4-2でマンツーマンだと中央が空いてしまう
→SHは相手SB・IHの中間でどちらにパスが出ても対応できる位置取り、中は簡単に使わせない

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例えば下の図は 6:30~のゴールキックのシーン。ペナルティエリア内で左CB本多が持ちますが、アンカーの庄司へのパスコースはうまく消され、パスの出しどころが少なくなっています。また、この時ボールと逆サイドのSHは中に絞り、中央を閉めるポジショニング。

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IHへパスを出しますが、新潟ボランチがついていくために後ろに下げるしかなく。アンカーに下げたものの、前方へのパスコースは阻害されており、更にFWやSHによるプレスもあるため悠長にはしていられず。結局プレスの合間を縫って左SBに下げるしかありませんでした。

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このように京都の得意なビルドアップに対し新潟は細かくポジショニングを調整していくことで、奪い切ることはできずとも簡単には前進させないような守備ができていました。

京都の中田監督も試合後にビルドアップに関してコメントを残しています。

--持ち味のビルドアップでリズムが作れなかった?
1つは新潟さんのプレッシャーの掛け方が原因としてあったと思います。こちらの次の出どころを消すような。それに対して少し躊躇して動かそうとしていたんですけど、次の味方が優位性を確保できるようなパスになっていなかったので、出すパス、出すパスにプレッシャーが掛かってしまいました。自分たちがプレッシャーを受けないようなパスの動かし方というのができずに、(相手に)狙いを定められてボールを前に進められなかったんじゃないかなと思います。

京都としてはゴールキック時にCBがペナルティエリア内に入れるメリットを生かし切れていないと感じました。また、新潟のプレッシングの影響もありますが、一人飛ばしてのパスが少なく、各駅停車になっている印象でした。これだと相手が読みやすくなってしまうため、DFのポジショニング調整、GKの関わり方等で改善すべきだと思います。多分エデルソンが来れば万事解決します()

 

②両SHの献身

ビルドアップで規制をかけられつつもどうにか前進する京都。しかし新潟は前プレにこだわらず、撤退しての守備も使い分けました。京都はその先の崩しの局面でも新潟相手に苦戦することに。

 

京都は前線に5枚置き、SBを内側に入れる偽SBでボール供給&カウンター対策。さらに前節からCFに入っている仙頭はゼロトップ気味になり、何度も新潟のブロックの前に下りてきました。そのスペースに宮吉が入り込む形が見られましたが、中央には強固な新潟のブロックが鎮座。仙頭がボールを受けてもブロックのバランスは崩せず、自然とサイドから崩し方を探ることに。

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京都がサイドでボールを持った際、カギを握ったのは新潟のSH。大きく張り出す京都のWGに対し、状況に応じてSHが対応する形とSBが対応する形を使い分け、簡単にスピードアップさせず、かといって内側を空けないように気を遣っていることが読み取れました。特にこの日はSHが献身的に上下動した上にSBとの連携が良く、CBとSBの間を破られるシーンはほとんどありませんでした。

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裏やギャップをうまく使えず、レナン モッタをはじめブロックの前でボールを受けることが増加。こうなるとブロックの2ライン間にいる選手が減るため、ブロックを崩すことは難しくなります。

さらにこの日の京都はパスが繋がらない場面が多く、どこか迷いを抱えながらの戦いをしている印象でした。これが前半の京都のシュート数1(Football Labより)の原因ともなりました。

 

③今季一番のゴール

なかなか調子の上がらない京都に対し、新潟は奪ってからのショートカウンターだけでなく、ボールを握っての攻撃も仕掛けます。

 

京都は自陣では4-1-4-1の陣形を取り、前線から中程度のプレスを掛けます。しかし、この日は新潟の左SHにして至宝、本間至恩を警戒してか、右WGのジュニーニョが至恩についていって5バック化するシーンが何度も見受けられました。宮吉がDFラインに入るシーンもあったので、チームとして準備したかどうかは分かりません。

しかし、5バック化することを新潟はスカウティングで見抜いていたようで、新潟はボランチの秋山を中心として左から攻撃を組み立てます。そして空いた左サイドからスイッチを入れていくのが左SBのゴメス。5-4-1化した京都のバイタルへとパスを打ち込んでいきます。

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京都は2列目のスライドによりアンカー不在となるので、空いたバイタルエリアに打ち込まれるパスをCBが前に出て迎撃による対応をしたいところでした。しかし、レオナルドを筆頭として新潟が裏も狙ってくること、4バックの時の感覚が残っているため前に出てスペースを埋める意識が低いことにより、うまく潰しきれませんでした。

 

先制点のシーンも、プレスをかける前線と裏へのボールを警戒する最終ラインの間へのパスがマイケルからレオナルドに通ったところからスタート。左サイドへ展開した後、2度クロスを打ち込み、シルビーニョが2度目のヘッドをゴールへと流し込みました。

 

その後も的確に相手の弱点を突く新潟。京都が5バック化しない場合でも繋いで攻めていきます。この時使うのは4-1-4-1の泣き所のアンカー脇。

大武、ゴメス、秋山ら左サイド中心に繋ぎ、うまく相手選手を引きつけてプレスをかけさせ、スペースが空いたらアンカー脇にいる選手へパスを届けます。新潟のFWやSHが相手最終ラインを広げ、深さも作っているためスペースが広がっており、これを使って前進、ゴールへ迫ります。

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後半序盤でレナン モッタが庄司と入れ替わってアンカーに入りましたが、すぐには変更にアジャストしきれず、最適なポジションからズレてしまいました。これによりスペースを明け渡す結果に。

 

まさにこのスペースを突いて奪いきった2点目。この攻撃はGKのスローから始まっているのです。最初から撮った動画があれば最高なんですが…

https://twitter.com/J_League/status/1188426869332500480?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1188426869332500480&ref_url=https%3A%2F%2Fnote.com%2Falkene_alb%2Fn%2Fn103417c1d441

要約するとこんな感じです。

ハーフラインを一度超えながらも一度下げて、相手のプレスを誘い込んでから逆を取って一気にスピードアップ。その後は動画の通り。

得点したレオナルドもこのコメント。

(2点目は)後ろからスタートして、ビルドアップして決めたもの。チームとして、後ろからボールを繋いでフィニッシュまで持っていった。最後はシルビーニョが落としてくれたボールを、僕がゴールに決めた。チームとして戦術的にやっていこうとしていることが、非常によく出たゴール。だから、今年一番のゴールだと思います。

狙い通りに奪いきった、今シーズン屈指のゴール。攻守ともにチーム一体となって戦っている姿がまぶしいほどです。

 

④最後まで、抜かりなく

2点ビハインドとなった京都はチーム得点王の一美を投入。さらに両SBはこれまでよりも高い位置取りで攻撃の圧力が増してゆきます。疲労もあってか新潟も無理に前線からプレスをかけないようになり、京都が押し込む展開に。しかし、ただ押し込まれるだけで終わらない新潟。最後の最後まで掌中の刃は手放しません。

 

庄司に代わりレナン モッタがアンカーに入り縦パスが増加。SBも上がり、時にはペナルティエリア付近に6,7人いるほどの積極性を見せた京都ですが、引くと簡単には破られない強固な新潟のブロックを前に苦戦。逆に新潟が奪ってロングカウンターに移行します。

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この時輝いたのがSH。しっかり中へと絞ってブロック形成、京都のミスを突いてボール奪取、前線やSBへボールを繋いでカウンターの開始点となる面目躍如。

前線に残るレオナルドは常にSB裏を狙っており、ボールが渡ればついてきたCBと勝負。CBが動いた後のスペースも使いながらゴールへ迫りました。終盤のロングカウンターだけで3、4点分のチャンスを作り出し、最後まで仕事をしてくれました。

 

途中交代の一美の積極性が功を奏し1点をもぎ取った京都でしたが、その後3バックにして攻め立てるも追加点はなし。ビッグスワンに詰めかけた17000人がハロウィンらしく勝ち点3の収穫を祝いました。

 

 

3.まとめ

吉永監督の試合後コメントから。

京都さんは非常に攻撃的で、ある程度、特徴もハッキリしているチームでしたので、ポイントを押さえられれば失点することはないだろうと考えていました。それよりも、われわれがしっかり攻撃することがポイントだったので、そういうシーンを多く出せたと思っています。結果として、勝つことができて良かったと思います。

まさにこの話の通り、相手のポイントを抑え、自分たちのやりたいことをすることができた試合でした。今シーズンベストゲームとの呼び声も高いですが、これには納得です。ゲーム運び、得点の形、チーム全体のプレー強度。どれをとっても高評価です。

この日の両SHの貢献度は凄まじかったです。いくつもタスクが課されながら、それをこなし、ゲームの流れを引き寄せたと言えます。両翼の成長が頼もしい限りです。

 

実はこの試合、個人的にかなり注目していました。開幕戦を現地観戦し、両チームがどのように成長していくのか、再び相まみえた際にどんな戦いを繰り広げるのかと楽しみに待っていました。ただ、夏の時点ではチーム完成度に明らかな差があり、相当厳しい戦いになるとしか考えられませんでした。

しかし、いざ本番。これだけの内容で勝ちました。京都のミスにも助けられたとはいえ、順位の差を感じさせぬ好ゲームでした。このことが本当に嬉しく感じます。

 

残り4戦。難敵が続きますが、この試合のようにヤケドさせてくれるゲームを期待しています!

 

 

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