J2第21節 vs大宮アルディージャ そこにJ1はあるか

またしても久々のレビューとなりました。しかも勝利試合のレビューとなると、初めてお遊びで書いてみた昨年のアウェイ京都戦以来! これからも勝利レビューを積み重ねていきたいものです。

さて、どうしてもこの2チームの対戦はJ1気分が抜けません。何度も死線(残留ライン)をくぐり抜けてきた盟友(ライバル)だけに意識せざるを得ないのは当然。仲が良いかは置いておくとしても、古巣対戦となる選手が多く、図らずとも深い関係にある二つのオレンジは再びトップリーグで戦えるのでしょうか。シーズン折り返しの一戦。

目次

1.試合結果

新潟 2-1 大宮
得点者 新潟 32′ レオナルド 59′ フランシス
甲府 17′ シモヴィッチ

詳細なデータはJリーグ公式サイトFootball Labよりへ。
ハイライト動画もどうぞ。

 

 

2.マッチレビュー紹介

久々のマッチレビューの紹介! とりさわさん、大宮のちくきさんのレビューです。ぜひ!

折り返し地点で見えた光〜J2第21節 アルビレックス新潟VS大宮アルディージャ〜

折り返し地点で見えた光〜J2第21節 アルビレックス新潟VS大宮アルディージャ〜

 

 

3.マッチレビュー

スタメンはこちら。

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新潟は前節からの変更が一人。負傷?により左SB堀米が欠場で泰基がスタメン復帰。將成は前節のJ2デビューに続いての先発。僕は彼が「越後のデ リフト」になると信じております。ちなみに「越後のフレンキー デヨング」をただいま募集しております。心当たりのある方はご一報をお願いしますm(__)m

一方試合前の時点で16戦無敗の大宮もスタメン変更は一人(シャドーの茨田→バブンスキー)。両チームのキャプテンが古巣対決で、コイントス時に「入れ替わってる~」と思った人はいたはず。ついでに言えば両監督と同じ苗字の選手が互いの相手チームにいて実況者はややこしかったことでしょう。『君の名は』対決の開幕です。

 

①配置の優位を生かした大宮ペースの立ち上がり

試合の入りから両者の立場ははっきりしたものとなります。

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監督交代直後はボール保持のこだわりを見せた新潟も、時が経つにつれ片渕時代のサッカーへと近づいてきました。前節鹿児島戦の前半でボランチが飛び出しまくってバイタルを突かれまくったことの反省を生かし、プレスをかけることよりも4-4のブロック形成を優先。こうなると全体の重心は下がるため、大宮は後方から余裕をもってビルドアップ。「押し込む大宮vs奪ってカウンター狙いの新潟」の構図に。

 

新潟が中央を閉めているため、大宮は左右のCBやレオナルドの脇に陣取るボランチを起点にボールを供給します。このとき、大宮の崩しのポイントとなるのはシャドーの二人。ライン間でボールを引き出し、WBと連携してサイドを切り込む場面がみられました。また、足元もあるハイタワーのシモヴィッチにクサビを当て、その後のボールを展開させて前進することも狙ってきました。

この攻撃に対して新潟はどう対応したか。シモヴィッチに対してはCBが出て簡単には自由を与えず、また落としたボールやトラップ際をボランチが狙うことで奪取の機会を伺っていました。

 

一方のサイドの守備ですが、左右で少し対応が異なっていました。

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右サイドはフランシスのハーフスペースを埋める意識が強く、左シャドーの奥抜がライン間でうまくボールを受ける場面はあまりありませんでした。その上左WBの吉永は水曜日の天皇杯に90分出場したこともあってあまりパワーを感じられず、自然と大宮は左サイドからの攻撃が主となります。

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新潟の左サイドは泰基と新太のワタナベコンビ。新太はフランシスに比べブロックを組んだ際も開き気味のポジションを取ります。これによりライン間に陣取るバブンスキーへのパスコースができ、彼を起点として新潟の左を崩しにかかります。新太がこのポジションを取るのが意図的なものなのかどうかは分かりませんが、大宮がここを狙っていたのは間違いありません。先制点を呼び込む攻撃もこのサイドからでした。

大宮が右サイドでパスを回し、新潟のコンパクトなブロックがスライドしたところでボランチ経由の逆展開。左CBの河面が上げた速いクロスにシモヴィッチがどんぴしゃり。サイドを広く使える3-4-2-1の利点をコンパクトな4-4-2にぶつけ、左利きの河面が逆足で鋭く精度の高いクロス、CBの前に入ったシモヴィッチの動き出しとヘッド。サイドチェンジをさせてしまった時点でお手上げです。プレーの質が高い。なんか長崎戦でも見たような光景ですけどね…

 

さて、新潟にも少ないながら後方から繋ごうとする場面はありました。しかし大宮からプレスを受けたため、スムーズに前進できる場面はなかなかありません。大宮はディフェンス時に5バック+五角形の陣形を取り、プレスをかけつつも中央を閉めます。SBにボールが出た際にはシャドーやWBが対応。困った新潟はカウエや善朗が下りて受けようとしますが、カウエが下りれば中央の枚数が少なくなり、善朗は厳しくマークされていたためうまく展開できませんでした。

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前線ではレオナルドが体を張ってキープするなど奮闘する一方、サイドの孤立が目立ちました。特に右サイドの2人はともに大きく開き、善朗がサポートにあまりいけなかったこともあってクロスを放り込むしかない状況でした。

 

②流れを変えた交代

しかし思わぬ転機が訪れます。22分に大宮のキャプテン三門が負傷交代。代わって大山がボランチの一角に入ります。大山はパスセンスを生かして攻撃に積極的に関わる一方、守備時には三門よりも高い位置取りをします。これによりバイタルエリアが広がり、新潟は徐々にこのスペースを使えるようになりました。得点後に大宮が少しトーンダウンしたこともあいまって、新潟は徐々に盛り返します。

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新潟は全体を押し上げる際にSHが内に入り、SBを高めの位置に置きます。これによりサイドの孤立問題は解消。バイタルエリアに入る人数が増えたので、大宮はバイタルエリアを狭めようとして重心を下げる。それに加えてこの時間から新潟の出足が良くなり、セカンドボール回収率が上がったため、新潟は連続して攻撃を仕掛けられるようになります。

そしてその中で生まれたレオナルドの同点弾。もちろんこのゴールは善朗の素晴らしいクロス、レオナルドのDFの間に入る見事な動き出しの賜物ではありますが、注目したいのはクロスの前の展開。ボールを奪った後に右、後ろ、中央とボールを回して相手を見ながら何度も攻撃をやり直し、相手のスライドが遅れた隙に大外からのクロスでゲット。ポジションのズレを突いた見事な攻撃でした。遅行から奪いきったこの得点は、この試合だけでなく、カウンター攻撃しかないようにも見えたこのチームの今後に大きな意味を持つようにも思えました。

 

同点後もボールを持つ展開が増えた新潟に対し、追いつかれた大宮は前線からのプレス強度を強めます。大宮の両ボランチが新潟のボランチを見る形が頻発。しかし、守備時も高い位置取りをするボランチに対し、DFラインは上げきることができません。その結果どうなるかはお分かりですね。そう、バイタルエリア拡張です。

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このスペースを使う役者が善朗、新太そして將成です。將成が相手をひきつけてから縦パスを入れていくことで、新潟ボランチについていった大宮の2ボランチをすっ飛ばして善朗や新太がボールを受けることができます。ここから大きなチャンスは生まれなかったものの、大宮の意識が統一されていないところをうまく突けました。序盤に握られたペースを握り返して後半へ。

 

後半に入り、大宮はボランチのポジション修正がなされた模様で、ボランチにボランチがついていく場面は減りました。どちらのペースともつかない印象で、大宮が高い位置取りをした新潟のSB裏を狙ってカウンターを仕掛ける場面も。しかし、前半から更に出足が良くなり、球際の強さを感じられる新潟が徐々に試合を支配。

そして逆転弾が生まれます。このゴールについても、カウエのスルーパス、フランシスの動き出しとゴール前での落ち着きが見事なのは言うまでもありませんが、相手の守備陣形をうまく利用した点も見逃せません。

左SB泰基がボールを受けたのは低めの位置でした。このとき、高い位置で受けていれば大宮は右WBを押し出して対応できたのですが、それができずに右シャドーの奥抜が泰基にアプローチ。こうするとシャドーとFWの間が空くわけですが、シモヴィッチはあまり下がらないため、新潟は泰基、新太、カウエのトライアングルで奥抜を振り回します。そしてカウエにボールが渡った際に奥抜のプレッシャーが一瞬弱まり、フリーとなったカウエがフランシスにばっちり合わせました。相手がカバーしきれないスペースを利用できていました

この場面以外でも大宮は5バックの腰が重い場面が目につきました。さらにこの場面ではDFラインがそろっておらず、オフサイドトラップもかけそびれてしまいました。大宮が受け身になったところをチームで、そして個人の力でうまく突いた得点でした。

③4-4-2への変更

逆転された大宮は、後半開始から15分経過後もシュートが打てていない状況を打破すべく64分に吉永→大前の交代で4-4-2に変更。その結果、両者同じようなフォーメーションになったことでマンツーマンのような形になります。

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もちろんマンツーマンになれば個の質の勝負となってくるわけですが、疲れてきた時にマーカーがはっきりするとラクになります。大宮が3-4-2-1の時にできていたDFの間を取るポジショニングもあまりできなくなり、新潟としてはやりやすくなったように感じました。

78分のカウンターから奥井のシュート、80分過ぎのセットプレーの連続など危ない場面もあり、76分~試合終了までに8本ものシュートを打たれましたが、体を張った守備で守り切ります。最終盤は貴章を入れて締め。勝ち切りました。

4.まとめ

前節鹿児島戦はカウンターしか攻め手がなく内容が良かったとは言えないのでモヤモヤする気分でした。天皇杯金沢戦は現地観戦し、内容のなさに悲しくなりました。翻ってこの試合は、力のある相手に対してうまく戦えていたと思います。序盤はうまく進められないながらも、丁寧にスペースを突き、ペースを握り返し、カウンター以外の形で得点を奪う。最後は体を張って守り切り、逆転勝利を掴んだ。前節とは異なる価値を持つ勝利だったと思います。

そしてこの勝利を語る上で、レオナルドと將成を外すことはできません。レオナルドはこれでシーズン8ゴール。そしてこぼれ球やPKが多かった彼にとって、きれいな形でのゴールはこの試合のゴールが初。最近は相手を背負ってのプレーや味方を生かすプレーも増え、貢献度が高まっているように感じます。まだまだ伸び盛りの21歳の成長は、夏以降の飛躍を狙う新潟に欠かせないでしょう。

同じく伸び盛りの19歳、將成は最終ラインでもシモヴィッチをドリブルでかわす余裕があり、カバーリングも秀逸。一気に主力になる勢いをみせ、僕の来季購入するユニフォーム候補にも名乗りを上げました(笑)今季はCBの安定感が今一つだったこのチームにとって、上昇気流に乗るためのラストピースなのかもしれません。

さて、最後に取り上げたいのがこの試合のゴールについて。全ゴールに質の高さを感じました。ゴールにつながるまでの展開、アシストのボール、得点者の動き。どれも見事でした。そして、その質の高さにそこはかとなくJ1を感じました。

確かにJ1とJ2は区切られているとはいえ、J2のチームは昇格すれば急にJ1のチームに変わるわけではありません。J1レベルの質を発揮できずに昇格即降格するクラブは数多ありました。だから、J1に昇格・定着を目指すのであれば、J2にいる内からJ1レベルの質を出せることが重要になると思うのです。それは個人としても、チームとしてもです。個人昇格で忙しない時期ですが、コンスタントにJ1レベルを発揮することで、個人として、そしてチームとしてJ1への道につながるはずです。

ともにJ1への返り咲きを狙う両者の2度目の対戦は11月16日。その時の両者の立場は予測不可能ですが、両チームがさらにJ1レベルに近い戦いを見せてくれたら面白いだろうなぁと思います。(そんなことをしみじみ思う余裕があるかは知りません)

今回はここまで。後半戦にさらなる期待をしましょう!

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