ようやく最終回のシーズンレビュー第3弾。前回まででチームスタイル、シーズンの流れを見てきたが、今回は2020シーズンの選手編成がテーマ。出場時間などを中心に見ながら振り返り。
編成振り返り
早速2020シーズン全選手の出場時間を見ていく。出場時間はJリーグ公式サイトの公式記録から計算したため、シーズン合計4189分、1試合当たり95~100分とまちまち。
いくつかポイントを挙げてみる。
・CBコンビへの依存と主軸不在のFW陣
・少数編成
→ポリバレントな選手を揃える、コンバートで対応・途中加入選手の貢献度の大きさ
→開幕時点での戦力の見通しの甘さ、的確な補強
ここからはポジションごとに振り返り。
GK
スタイル転換でショート/ロングのパスを駆使して繋ぐことが求められるようになったGK。ショートパスも落ち着いて繋げる小島がファーストチョイスだったが、シーズンの半分は負傷離脱。代わりは急成長した藤田が務め、ショートパスでの繋ぎにも徐々に安定感が出てきた。
だが、ビルドアップの安定感、出場試合あたりの失点数などを見ると小島に分があり。彼が不在の際にはゲームコントロールで少々苦労していた。ただ、それでも実績十分の大谷に頼らずシーズンを戦いきったところにスタイルへの強いこだわりが感じられるため、このまま強気に編成していってほしい。
DF
CB
J2トップクラスの強度を誇るマウロ–マイケルコンビでほとんどを戦いきった。前線から積極的にプレスをかけることで最終ラインが手薄になるリスクを2人の守備力でカバーする形になっており、実際これで抑え込めてしまうことが多かった。一方でスタイル上ビルドアップでの貢献も求められたが、マウロはボール扱いに長けていないためマイケルに負担が集中しがち。アンバランスなところを狙われ、しばしば危ういシーンも見られた。
また、過密日程でも2人に頼り続けた代償として疲労も蓄積。試合終盤に踏ん張り切れない、ビルドアップを狙われる場面が増えてしまった。2人の欠場時には新井、早川がカバーしていたものの、新井の再離脱で控えが不在に。
新井が離脱しなければ問題はなかったはずだが、欲を言えばもう1人ほしかった。岡本をレンタル移籍させる、そしてすぐに呼び戻さないという判断は結果的には正解だったが、最悪の場合19-20シティや20-21リヴァプールのようにボランチCBになりかねなかったわけで。ピッチだけでなく編成でもCBがリスクを背負うのは御免被りたい…
SB
よく言えばポリバレント、悪く言えば帯に短し襷に長しな選手が多かったため、いろいろと試されがちだった。前半戦は大外幅取り&クロスがメイン仕事だったため新井–荻原コンビが最適解になった一方、他の選手はうまくハマらなかった。この問題は後半戦に偽SB&ゴール前侵入と要求が一変したことで解決。前半戦出場の少なかった田上、早川、堀米が主軸となり、適性の見極め、やりくりの妙が光っていた。
ただ、器用にこなしていた選手は多かったものの、強みと呼べるほどには高められなかった。特に周囲の選手と合わない場面が多く、大外でボールを持った際にはサポートが受けられずパスの出しどころがない、インナーラップで駆け上がった際にはSHと上手く絡めないなど選手も探りながらプレーしているようだった。逆に上がりがちなSBの背後を狙われることも増え、匙加減の難しいポジションになってしまった。
それほど補強はしなかったものの、多彩な選手を揃えられたことで様々な化学反応の見られた実験室のようなポジションだった。2021シーズンこそはストロングポイントと呼べるようなヒット作を生み出したい。
MF
CH
最も入れ替わりの激しかったポジション。開幕時点では本職が3人だったが、中島&福田の補強で補充どころかパワーUP。序盤こそ秋山–ゴンサロが中心だったが、中盤戦以降島田–福田が鉄板コンビに。しかし福田の離脱後は島田の相棒探しで苦しむことに。
後半戦にかけて島田-福田コンビのカバー力を活かす形にシフトすることで結果が安定、上位追撃に邁進するチームを支えていた。だが、福田が抜けてからは中盤が間延びして前線までボールを届けづらくなる、中盤のスペースを埋め切れないなどチームとしてバランスをとりきれず。中盤のコントロールはチーム戦術以上に個人に依存する形であったことが浮き彫りになってしまっていた。
開幕時の層の薄さはかなり不安だったが、補強でストロングに変えたのは強化部GJ。ただ、やはりチームの中心となるポジションをシーズン通して安定させられなかったことは成績に大きく響いたはず。CB同様安心して戦えるだけの陣容を揃えたい。
SH・OH
様々な選手が輝いたポジション。中心となったのは本間至恩。徐々にピッチ中央にもプレーの幅を広げ、ゴールやアシストを重ねていった。ロメロも力強さを活かして前半戦のチームを牽引。後半戦になると2列目が3枚に変更、ゴールやアシストに加えてプレスのスタート役も求められ、攻守に重要度が上昇した。高木はトップ下で水を得た魚のように輝き、中島は得点感覚を遂に発揮、堀米もコンバートにすんなり馴染むなど、変更の恩恵を受けて真価を発揮した選手たちが印象的だった。
人数も豊富で困りごとの少ないポジションではあったが、ゲームの流れを変える役割を担ったロメロと大本は負傷がち。流れを変えたいのに変えられない試合は少なくなかった。また、このポジションの選手が足元でパスを受けたがってしまい、攻撃の奥行きを作り出せず相手を崩しきれないシーンも目立った。そもそも相手の背後に飛び出すようなタイプの選手が少なかったため、編成面でも戦術面でも積み残しの課題と言える。
FW
最も苦労したポジション。序盤戦の新太–ファビオコンビは攻守に90分貢献度が高くチームを牽引。しかしファビオの負傷離脱で逃げのロングボールが使えなくなりショートパス増加、強引ながらもスタイル浸透が進んだ。しかしファビオ復帰後に新た離脱。FWが減ったことを踏まえ1トップに。更に某案件でファビオ&マンジーがチームを離れ、最終的には鄭大世が軸に。チームが振り回される形になってしまった。
監督は決定力不足を慢性的な課題として挙げ、FWの質が足りなかったと語っていたたが、FWの軸となる選手が次々入れ替わった影響は大きい。攻撃は選手に任されている部分が大きかったため、FWが代わる度にチームとしてアジャストする必要があり、それに振り回されたような印象だった。
「監督では解決しづらいポイントです。選手の補強が重要になってきます。フィニッシュのところで質の 高いプレーをしてくれる選手を補強しなければなりません。」
FWの軸となる決定力のある選手を連れてくることができるか、これが来季を占う最大のポイントになる。
2021シーズンの展望
2020シーズンを踏まえて、2021シーズンのアルベルト・アルビはどのように進化していくのか、気になるポイントを3つ挙げた。
- 勝者のメンタリティー
第2弾でも触れたとおり、2020年は先制されて追いつく試合が多かった。中でも印象としては序盤にアルビが流れを掴むもチャンスを決めきれずにいるうちに先制を許し、どうにか追いついて勝ち点を拾う、という展開が多かった。
ここには通年の課題となった決定力も絡んでくるが、序盤に掴んだ流れをきっちりモノにすることができれば結果も安定してくるはず。そして、好機を逃さず強かに戦えるようになれば、アルベルト監督が常々言う「勝者のメンタリティー」も自然と備わってくる。そのためにも1戦1戦をCL決勝のつもりで、集中を高め強い気持ちで戦う姿を期待したい。
- 試合中の変更、オプション導入はあるか?
今季は試合中にフォーメーションを変えて大幅な修正をする場面は少なく、主に選手同士でのポジション入れ替えと選手交代が流れを変えるための手段だった。ただ、悪い流れを断ち切れずにズルズルと時間が過ぎてしまう試合もあり、選手交代まで待たなければいけなくなってしまっていた。
来季には過密日程が緩和され、トレーニング時間もとれるようになることから、戦術理解が進みやすく、試合中のシステム変更にも選手が対応しやすくなるのではないかと考えられる。昨季は3バックに3試合ほど挑戦しながら結果は芳しくなかったが、来季には磨きをかけた3バックが見られるようになるかもしれない。試合中の監督による指し合いにも期待したい。
- センターライン強化
最後に編成面について。2020年あと一歩上位戦線についていけなかったのは、センターラインが安定しなかった影響が大きい。CH、FWが入れ替わるたびに最適解を探っているような印象だった一方、センターラインが固定できた時期は調子が上向きだった。やはりセンターラインは幹となるわけで、不安はできるだけ取り除いておきたい。負担軽減のための控えCB、福田が復帰を焦らなくて済むような層の厚いCH、そして決定力という課題克服のためのFW。これらをどう解決していくかが編成のポイントになる。
ひじょーに時間がかかりましたが、これにて2020シーズンレビューを締めさせていただきます。2021シーズン、アルベルト体制2年目。積み上げを感じられるようなシーズンになることを期待して…