大胆策と勝利へのこだわり |J2第23節 vsFC琉球 2020レビュー

2020シーズン

 

~8月 6勝7分2敗 勝点25 平均勝点1.667
9月 2勝3分3敗 勝点9   平均勝点1.125

苦しかった9月。上位対戦が多かったというエクスキューズはあれど、きわどい試合をモノにしきれなかった代償は大きかった… もともと8月までの試合も最後は選手の質で殴り勝った試合が多く、上位との対戦ではそれが効かなかったとも言える。

 

しかぁーし、10月といえばアルビの季節。過去3年の結果をドン!

2019 3勝1敗 平均勝点2.25 得点10 失点3
2018 3勝1分 平均勝点2.5   得点6 失点1
2017 2勝1分 平均勝点2.33 得点4 失点2

今季は10月に6試合(!)。というわけで、今季も皮算用しながら期待してまいりましょう。

 

1.マッチレビュー

メンバーはこちら。

ホームの琉球は5人変更。夏に加入し6戦連続先発の市丸はベンチスタートで、怪我から復帰していた風間宏希が第9節以来に先発。茂木も7節以来のスタメンに。先月からの4連敗のきっかけとなった新潟とのリターンマッチを制し、得点量産体制を取り戻したいところ。

一方の新潟は4人変更。シルビーニョは7試合ぶりのスタメン復帰となり、FWでロメロとの初コンビ。前節は前線が3-1の形だったが、今節は2-2の形。相手の守備に合わせ選手を替えながら5戦ぶりの勝利を狙う。

 

①ハイプレス再び

前回もボールの握り合い、主導権の奪い合いになったこの対戦。前回同様新潟が開始直後から圧力をかけ、立て続けに敵陣で奪ってシュート。一気に流れを掴む。

 

ここでポイントになったのはCHの積極的なプレス。島田が琉球CH小泉に対して前に出張して強烈にプレス。琉球のボールの収めどころとなる彼に自由を与えず、ミスを誘発させた。

そして5分にCKから先制。ロメロの体にチーム全体の勢いが乗り移り、体ごとゴールへ押し込んだ。

「前半、スタートから激しく前からプレスに行く意図がわれわれにあった」(アルベルト監督)と話す通り、プレッシングによってボールを持たずとも流れを引き寄せた。FWにロメロを起用した点も琉球のビルドアップに対して圧力を強くかけたかったからと考えられる。

先制後に少しプレスを弱めるも、なおも勢いを継続する新潟。敵陣~ピッチ中央でボールを奪えたため、ビルドアップの手間が省けてシュート数を稼ぎ続ける。しかし、この時間で追加点を奪えなかったことが後々響いてくることに。

 

②ストロングをウィークにぶつける琉球

序盤で新潟の勢いをまともに食らってしまった琉球。プレスに慣れてきたあたりから落ち着いて繋げるように。そして狙うは左サイド。

 

琉球はボールを持った際にSBが高い位置を取り、攻撃に人数をかけて厚みを出す。CB、CHからのパスの受け手を増やせば誰かが空くからそこに出す!という形。これに対して新潟はSHが大外の琉球SBへのコースを消すのが基本。浮き球で通されてもSHが下がって対応orSBが前に出れば問題なし。

 

しかし、この日右SHで出た高木はそれを徹底できず。琉球SBへのコースを空けながらCBに寄せてしまったので、パスを通される&SBとの距離が離れて寄せられない状態に。更には琉球左SH河合が新潟の右SB新井を牽制するように下りる動きや背後へ抜けだす動きを繰り返しつつ効果的にボールに絡んだため、新井も対応で手一杯。というわけで琉球左SB沼田がフリーに。

沼田はチーム内アシストランクトップの4アシスト。背番号14は左足の鋭いクロスをゴール前に送り込むことができる。そんな彼がフリーとなれば… こうして新潟ゴールへと迫った。

 

飲水タイムを挟んで琉球はさらに微調整。CHが縦関係になり、風間宏希が下がる場面が増加。こうして後ろでの繋ぎを安定させつつ、右サイド→左サイドと回すことで高木を内に絞らせやすくし、左サイドを突く狙いを強化。

更にはCH小泉がより前に出たことで、新潟FWにもCHにも届きにくい位置を確保。彼が中央で持ちあがり、スルーパスを次々狙う。新潟はFWのロメロを下げて対応させようとするも、完全な縦関係にはしなかったため対応不十分。またしてもこの男に躍動させてしまった。

飲水タイム前は新潟のシュートのみだったが、飲水後は琉球のシュートのみと完全に琉球ペースの試合にすげ替わる展開。琉球のストロングポイントと新潟のウィークポイントががっちりとはまり、それを活かして攻めた琉球だったが、ネットを揺らすことはできず前半終了となった。

 

③流れを取り戻す4枚替え

後半開始から新潟のアルベルト監督はまさかの4枚替え。

本職SB3枚を投入し、合わせてSB5人という布陣になった。右SBだったか新井がCBに回り、右SBには早川が入る。大本、ファビオは前節同様それぞれ右SH、FWに。そして驚きは堀米のOH起用。

博打のようにも見える布陣だが、これは明確な狙いを持った布陣。試合後コメントから。

この過密スケジュールの中、疲れも見えていましたが、後半最初から4人を入れ替え、引き続き前から激しいプレスを掛ける意図を持って後半に臨みましたそして良い形で守備をオーガナイズすることができ、決定的なチャンスを複数作れました。

―アルベルト監督―

監督の意図を体現した選手たちは、前半に見えたウィークポイントを解消していく。

 

まずは堀米。彼が完全に「トップ下」になり、琉球CHを徹底監視。FWからのプレスをある程度諦める代わりにサイド→中央へのパスコースを制限した。これにより琉球のパス回しは滞り始める。

中央のスペースを堀米がカバーしてくれることで、SHはよりサイドを広く守れるようになった。

これに加えてSBも務められる大本が右SHに入ったことで沼田のケアを強化。彼がスピードを活かしてCBに寄せてパスを出させない、沼田に渡っても簡単に自由を与えないことでサイドにフタをした。

 

琉球はこの変更に対して四苦八苦。新潟が中央でボールを奪う場面が増え、そこからファビオ、大本、本間の3人で素早く攻める狙いにシフト。OH堀米がゴール前に入らない代わりにCHの福田が前に飛び出すなど厚みが出るように。

 

琉球は主導権を取り戻すべく3枚替え。CHに上里を入れて中盤の支配率を高めつつ、スーパーサブ上原がゴール前の脅威となる。新潟の前線からのプレスが弱まったこと、2CHで堀米をかわせるようになったことで琉球は徐々に押し込んでいくも、シュートを枠に飛ばせず。

 

そうこうしているうちに新潟は右SH大本をSBのようにして5バック気味に。これにより琉球は敵陣まで持ち込めてもゴール前にスペースを見つけられなくなりタイムアップ。新潟が割り切った戦いで沖縄土産の3ポイントをゲットした。

 

 

2.試合結果

琉球 0-1 新潟

得点者 琉球
得点者 新潟 5′ ロメロ フランク

詳細なデータはJリーグ公式サイトFootball Labへ。

 

 

3.雑感

交代枠を駆使した割り切った戦いでの勝利。前半だけ見れば前回対戦同様だったが、前回のように押し込まれ続けなかったのは大胆策のおかげ。

とはいえ後半の新潟は決定機が少なく、追いつかれていたらまた評価が違ったのだろうとぼんやり思う。琉球は次々と効果的に修正を施し、厄介極まりなかった。勝負の世界は際どく厳しい。

一つ気になるのは、以前に増してサイドを使って攻めている印象があること。大本の復帰と新太の離脱が重なったことが大きいのかもしれないが、今後も注視していきたい。

 

  • 勝者のメンタリティー

アルベルト監督が常々口にする「勝者のメンタリティー」。勝利へのこだわりはここ最近強まっている感がある。

磐田戦以降点を取るために導入し始めた中盤菱形4-4-2。甲府戦後半のファイヤー布陣&パワープレー。そしてこの試合序盤のプレスにHT4枚替え。以前よりも様々な手を尽くして勝利への執念を見せている。選手もそれに呼応し、ピッチ内での調整も行っている模様。この試合終盤に5バック気味にしたのは選手の判断のようで、守り切るという意志統一ができていたことが伺える。

自分たちのスタイルを安定して出せるようになった中での上位対戦の連続。そして得点力減。更にエースの新太が負傷離脱。そんな中で割り切りながらしっかり勝利を手にできたことで一つ落ち着けるはず。改めて勝者のメンタリティーを根付かせるべく、チームとして意思統一を更に図っていきたい。

 

10月に突入。まだまだ試合数が多く残る中、大混戦のカオス状態となった中位陣を尻目に上位はさらに勝ち点を積む。アルビは止まっていられない。さらなる高みへ向かう一ヶ月としたい。

 

 

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